日経平均は+405.73円(+0.62%)で続伸しました。ただ、この405.73円のうち301.70円はアドバンテスト1社が押し上げた分です。全体の74%です。
もうひとつ気になる数字があります。東証プライムの売買代金は6兆7,057億円で、5営業日前の8兆6,034億円から22%減りました。5日続けて減り続けた、その最終日に、1社が上げ幅の4分の3を作った。この2つは別々の話に見えて、たぶん同じことの表と裏です。
前回の仮説チェック
前回は8月25日(火)です。3つ立てた仮説の答え合わせをします。
① 非鉄金属の首位はテーマか、1社の材料か → ❌ ハズレ
仮説は「8月26日も非鉄金属が上位5業種に残る」でした。今日の非鉄金属は**+0.81%**。上昇率5位の医薬品が+1.04%なので、上位5には届いていません。仮説は外れです。
ただ中身が予想と逆でした。無効条件として「古河電工だけが上げて他が下げたら1社の材料だった」と書いていたんですが、実際に起きたのはその鏡像です。
- 古河電気工業(5801):-2.38%
- 住友電気工業(5802):+0.55%
- フジクラ(5803):+0.25%
昨日+10.34%だった古河電工だけが下げて、残りの2社が支えて業種は+0.81%を保っている。つまり「1社が抜けても業種が残った」わけで、これは1社の材料ではなくテーマだったと読むほうが自然です。自分が用意した無効条件は上げ方向しか想定していませんでした。牽引役が抜けたあとに業種が残るかを見るほうが、判定としては正確だったと思います。
② エヌビディア決算前の薄商いは3日目も続くか → ✅ 当たり
仮説は「プライム売買代金も8兆円未満」、トリガーは「7兆円台以下で着地」でした。結果は6兆7,057億円で、7兆円台どころか6兆円台に落ちています。
| 日付 | 売買代金 | |---|---| | 8/20 | 8兆6,034億円 | | 8/21 | 7兆9,134億円 | | 8/24 | 7兆636億円 | | 8/25 | 7兆99億円 | | 8/26 | 6兆7,057億円 |
5営業日連続で減っています。減り方が止まっていないのがポイントで、これが今日の記事の主題につながります。
③ 輸送用機器の最下位は関税の織り込み1日で終わるか → ✅ 当たり(ただしトリガーは未達)
仮説は「輸送用機器が下位5業種から抜ける」でした。今日は**-0.32%**。下落率5位の陸運業が-0.63%なので、下位5からは抜けています。昨日は下落トップの-1.29%だったので、下げ幅としては大きく縮みました。
ただトリガーに置いた「トヨタ・ホンダがプラス転換」は満たしていません。トヨタ自動車(7203)は-0.39%、ホンダ(7267)は-1.27%で、両方まだマイナスです。
じゃあなぜ順位が上がったかというと、他がもっと下げたからです。海運業-2.37%、石油・石炭製品-1.84%。この2つが深く沈んだぶん、輸送用機器が相対的に浮上した。順位が上がったことと、中身が良くなったことは別物でした。ここは自分の判定条件が甘かったところです。
主要指数
・日経平均 66,262.16円(+405.73 / +0.62%) ・TOPIX 4,111.02(+17.35 / +0.42%) ・東証グロース250 781.15(-0.15 / -0.02%) ・東証プライム 値上がり978/値下がり518/変わらず60 ・売買代金 6兆7,057億円(前日比 -4.34%) ・ドル円 159円台前半
値上がり978・値下がり518・変わらず60で、合計1,556銘柄のうち上がったのが**63%**です。指数の上げが1社に偏っている一方で、市場の中身自体は広く買われていました。「指数が1社で動いた」と「市場が弱い」はイコールではない、というのが今日の前提です。
一方でグロース250だけが-0.02%と、3指数で唯一マイナスでした。わずかな下げですが、小型株には買いが回っていません。
相場を動かした3つのポイント
① 上げ幅405.73円のうち301.70円がアドバンテスト1社
アドバンテスト(6857)は35,700円で+1,250円、率にすると**+3.63%**です。上昇率だけ見れば、今日ストップ高をつけた銘柄と比べてぜんぜん派手じゃありません。それでも日経平均を単独で301.70円動かしました。
理由は株価の水準です。日経平均は「株価を足して割る」計算方法(株価加重平均)なので、株価の高い銘柄ほど1%の値動きが指数に効きます。アドバンテストの35,700円に対して、トヨタは3,070円。11.6倍の差があります。同じ+3.63%でも、指数に与える影響は11倍以上違うわけです。
昨日の記事でも同じことを書いたので、2日連続で同じ構造を見たことになります。
→ 僕のルール:日経が大きく動いた日は、率ではなく「円」で寄与を見る。上昇率ランキングの上位に指数を動かした犯人はいないことが多い。株価の高い銘柄から順に確認する。
② 証券・保険・銀行が上位を独占——日銀の利上げ観測が数字になった
今日の上昇率トップ5はこうです。
| 順位 | 業種 | 騰落率 | |---|---|---| | 1 | 証券・商品先物取引 | +2.05% | | 2 | サービス業 | +1.85% | | 3 | 保険業 | +1.68% | | 4 | 銀行業 | +1.41% | | 5 | 医薬品 | +1.04% |
上位4つのうち3つが金融です。きっかけは今日の朝8時50分に発表された7月の企業向けサービス価格指数(企業どうしがサービスを売り買いするときの値段の動き)で、前年比**+3.6%**と事前予想の+3.2%程度を上回りました。企業が値上げをちゃんと通せている、というデータです。
物価が上がっているなら日銀は金利を上げやすくなります。市場が織り込む9月利上げの確率は8割超と言われていて、金利が上がると利ざや(お金を貸す金利と預かる金利の差)が広がる銀行、運用利回りが改善する保険が買われる、という順番です。
10年国債の利回りは2.885%。前日の2.890%からはわずかに下がりましたが、高い水準は保っています。
→ 僕のルール:金融が上位3業種に固まった日は、まず当日の物価・金利データを探す。個別の材料より、業種がまとまって動いた理由のほうが先にある。
③ 海運・石油・鉱業が下位を独占——原油が下げた側
下落率のトップ5も見ておきます。
| 順位 | 業種 | 騰落率 | |---|---|---| | 1 | 海運業 | -2.37% | | 2 | 石油・石炭製品 | -1.84% | | 3 | 金属製品 | -0.88% | | 4 | 鉱業 | -0.84% | | 5 | 陸運業 | -0.63% |
海運・石油・鉱業と、資源に関わる業種が並んでいます。前日の米国市場で、米国務省が中東から退避させていた外交官を大使館に戻す準備を進めていると報じられました。中東の緊張が緩むという受け止めで、WTI原油は85.01ドル(-2.35%)まで下げています。
原油が下がると、輸送する海運、掘る鉱業、精製する石油・石炭が同時に売られる。上位に金融が並んで下位に資源が並んだ今日の並びは、「金利が上がって嬉しい側」と「原油が下がって困る側」がそのまま出た形です。
→ 僕のルール:上位と下位が別々のテーマで揃った日は、材料が2本あると考える。1本の材料で全部を説明しようとすると、必ずどこかで無理が出る。
セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」
33業種のうち18業種が上昇、15業種が下落でした。ほぼ半々です。
ただ前引けの時点では24業種が上昇していました。後場のあいだに6業種が下落に転じた計算になります。日経平均も13時33分に66,442円の高値をつけたあと、大引けは66,262円まで180円ほど押し戻されています。
前場の勢いが後場に続かなかった、という形です。
売買代金上位・注目銘柄
・アドバンテスト(6857) +3.63% 日経を単独で+301.70円押し上げ ・ソフトバンクグループ(9984) 日経寄与+61.14円 ・リクルート(6098) 日経寄与+55.31円 ・東京海上(8766) 日経寄与+11.11円 ・中外製薬(4519) 日経寄与+10.16円
プラス寄与の2位以下は61円、55円、11円、10円と一気に落ちます。1位の301.70円が突出していて、2位から5位を全部足しても137.72円。アドバンテスト1社の半分にも届きません。
個別株で目立った動き(ストップ高/安含む)
・稀元素(4082) +23.91%(ストップ高) ハフニウムの国内製造技術を確立し、2028年の量産化を目指すと発表。
・弁護士ドットコム(6027) +16.23%(ストップ高) 大和証券が調査対象に加え、目標株価5,700円を設定。
・シリコンスタジオ(3907) +16.81%(ストップ高) ジーデップ・アドバンストとの協業開始を発表。
・エーバランス(3856) -20.05%(ストップ安) 東証から9月26日付で上場廃止となる通知を受領。発端は不適切な会計処理でしたが、上場廃止が決まった直接の理由は「改善計画を出しても内部管理体制の改善が見込めない」と判断されたことです。
ストップ高の理由がバラバラなのが今日の特徴でした。新素材、証券会社の評価開始、業務提携と、共通するテーマがありません。テーマ株がまとまって動く日ではなく、個別の材料に個別に反応した日です。
為替と外部環境
・ドル円 159円台前半 ・10年国債利回り 2.885%(前日2.890%) ・米国前日(8/25) ダウ+0.30%/ナスダック+0.65%/S&P500 +0.32% ・WTI原油 85.01ドル(-2.35%) ・金 4,694.50ドル(NY金先物12月限・8月25日終値)
米国3指数が揃って上昇したことが、今日の東京市場の地合いを支えています。ただ米国の上げ幅自体は0.3〜0.65%と控えめで、日本の+0.62%と同じくらいです。米国株高をきっかけにして、そこから先は日本独自の材料(サービス価格の上振れ)で金融が買われた、という順番だと見ています。
なお日本時間の明日27日朝には、米国でエヌビディアの決算発表があります。今日アドバンテストが買われた背景はこれです。
テクニカルで見る今の位置
数字だけ見ると変な結果が出ています。
・日経225 ETF(1321):RSI 49.5、移動平均線との乖離は短期 -1.64%/中期 -1.90% ・TOPIX ETF(1306):RSI 53.7、移動平均線との乖離は短期 +1.36%/中期 +1.08%
RSIは「買われすぎ・売られすぎ」を0〜100で表す指標で、50が中立です。両方とも50前後なので、どちらも過熱していません。ここは普通です。
気になるのは移動平均線(過去の株価の平均をつないだ線)との位置関係です。今日大きく上げたのは日経のほうなのに、日経はまだ平均線の下にいて、上げ幅の小さかったTOPIXは平均線の上にいます。
日経は下げた分を戻している途中で、TOPIXはもう平均より高いところまで来ている。同じ日に同じ方向へ動いても、それぞれが立っている場所は違うということです。上げた率だけ見ていたら気づけませんでした。
※テクニカル分析はTradingViewのリアルタイムデータに基づく。投資判断は自己責任で。
全体像:板が薄くなるほど、指数は1社で動く
今日の2つの数字を並べます。売買代金は5営業日で8兆6,034億円から6兆7,057億円へ、22%減りました。そしてその最終日に、上げ幅405.73円のうち301.70円(74%)を1社が作りました。
これは偶然2つのことが起きたというより、同じ構造の表と裏だと思っています。市場に流れるお金が減ると、1つの銘柄を動かすのに必要な売買の量も減ります。値がさ株(株価の高い銘柄)が少し動くだけで、株価を足して割る日経平均は大きく振れる。板が薄いほど、指数は1社の都合で動くようになります。
ただし今日は、東証プライムの63%にあたる978銘柄が上がっていました。指数の上げが1社集中だったことと、市場全体が弱かったことは、今日に関しては別問題です。ここを混ぜると「1社で上げた見せかけの相場」という間違った結論になります。
こういう相場で僕が意識しているのは、指数の数字と、値上がり銘柄数を必ずセットで見ることです。今日みたいに「指数は1社頼み、でも中身は広く上がっている」という組み合わせもあれば、8月24日みたいに「指数は下げたのに中身は上がっている」という組み合わせもある。指数だけ、中身だけ、どちらか一方では毎回同じ話にしかなりません。
今日の迷い・判断メモ
迷ったポイント:前回の仮説①(非鉄金属)を「外れ」と書くかどうかで迷いました。非鉄金属は+0.81%で上昇側の7位。仮説に書いた「上位5業種に残る」は満たしていないので外れなんですが、自分が用意した無効条件(古河電工だけが上げて他が下げる)も成立していない。判定が宙に浮きました。
結局どう考えたか:仮説の文言どおり「外れ」と記録することにしました。そのうえで、無効条件のほうが的外れだったと別に書きました。都合よく解釈して「実質当たり」にすると、次に同じ判定をするときに基準がゆるくなると思ったからです。
後から振り返って:無効条件の作り方に問題がありました。「1社だけが上げて他が下げる=1社の材料」と書きましたが、実際に起きたのは「1社だけが下げて他が上げる」。方向を上げ側に固定して条件を書いていたので、鏡像のパターンを拾えませんでした。次からは「牽引役の銘柄を除いて業種が成立するか」という向きに依存しない書き方にします。
自分なら何を確認してから動くか
- 明日朝のエヌビディア決算の結果と、アドバンテストの寄り付き。今日の日経の上げは74%がこの1社なので、決算次第で今日の上げ幅の大半がそのまま巻き戻る可能性があります。指数の水準より、この1社を先に見ます。
- 売買代金が6兆円台のままか、7兆円台に戻るか。5日続けて減っているので、増えたときは「何が入ってきたのか」を先に確認します。方向より中身です。
- 金融3業種が2日連続で上位に残るか。1日だけなら今日のサービス価格の反応、2日続くなら9月利上げを本気で織り込みにいっているサインとして扱いを変えます。
明日の観測ポイント
① エヌビディア決算後、日経の上げは1社頼みのまま反転するか
- 仮説:8月27日の日経平均の変動幅は、アドバンテスト1社の寄与が50%以上を占める
- トリガー:アドバンテストの寄与が変動幅の過半に達する(プラス・マイナスどちらの方向でも)
- 無効条件:寄与上位5銘柄が10〜80円程度に分散し、突出した1社が出ない → 決算通過で買いの対象が広がった合図 → 僕のルール:1社集中で動いた指数は、その1社のイベントが終わるまで水準を信用しない。今日の66,262円は、アドバンテストを抜けば65,960円程度の相場だったと考えておく。
② 売買代金の5日連続減はどこで止まるか
- 仮説:8月27日の売買代金は前日の6兆7,057億円を上回る
- トリガー:7兆円台を回復する
- 無効条件:6兆円台のまま6日連続の減少 → エヌビディア決算という大きなイベントを通過しても資金が戻らなかったことになり、薄商いの理由がイベント待ちではなく別にあることになる → 僕のルール:イベント通過で商いが戻らなかったときは、「待っていた」のではなく「降りている」と読み替える。理由の仮説を入れ替える。
③ 金融3業種の上昇は日銀観測の織り込みか、1日の反応か
- 仮説:8月27日も証券・保険・銀行のうち2業種以上が上昇率トップ10に残る
- トリガー:2業種以上がトップ10入り
- 無効条件:3業種とも下位半分に沈む → 今日の上げは企業向けサービス価格への一日限りの反応だった → 僕のルール:指標1本への反応は、翌日残るかどうかで「反射」と「織り込み」を分ける。1日で消えるものは相場観に組み込まない。
明日この仮説がどうなったか、また振り返ります。
今日の3語メモ
74%:上げ幅405.73円のうち301.70円がアドバンテスト1社。上昇率は+3.63%と平凡でも、株価35,700円という水準の高さが指数への影響力になる
22%:売買代金は5営業日で8兆6,034億円→6兆7,057億円へ22%減。板が薄くなるほど、値がさ株1社で指数が振れるようになる
63%:東証プライムの978銘柄(63%)が上昇。指数の上げが1社集中だったことと、市場全体が弱いことは別問題

