日経平均が+1,363円上がりました。3営業日ぶりの大幅反発です。
でも数字の中身を見て、僕は今日もまた同じことを思いました。この+1,363円のうち、801円はたった2社が作ったものです。全体の59%。3社まで広げると1,028円で、**75%**になります。
先週の木曜(8/6)は「日経はマイナスなのに7割の銘柄が上がった日」でした。今日はその逆で、「日経が2%上がったのに、上げ幅の6割は2社だけ」の日です。向きは正反対ですが、指数の数字と中身がズレているという点では、まったく同じ現象を見ています。
前回の仮説チェック
前回(8/6)の記事で立てた3つの仮説を、8/7と今日8/10の結果で答え合わせします。
仮説①: 8/6の半導体売りは1日限りの調整で、値がさ半導体株が戻す トリガー: キオクシアホールディングス(285A)の騰落率が日経平均を上回る 結果: ❌ 否定された 学び: 8/10のキオクシアは+0.59%、日経平均は+2.08%。半導体全体は買われたのに、キオクシアだけは指数に負けました。しかもキオクシアは売買代金1兆5,700億円で断トツの1位です。一番お金が動いた銘柄が、ほとんど動いていない。買いと売りが同じくらいぶつかっていた、ということだと理解しました。
仮説②: 「通期の見通しが良くても、直近3ヶ月の実績が市場の予想に届かないと売られる」型は続く トリガー: 該当する銘柄が発表当日にマイナスで引ける 結果: ✅ 確認された(2件) 学び: エムスリー(2413)は8/6発表で通期見通しを据え置いたものの、4-6月の営業利益が-8.6%と市場予想を下回り、翌8/7に-16.9%。三井金属(5706)は今日8/10、通期の純利益予想を750億円→800億円に上方修正したのに、上期の営業利益予想を490億円→450億円に下方修正したことで-13.55%。この型が崩れたのを、僕はまだ一度も見ていません。
仮説③: 日経平均とTOPIXの方向のズレは、半導体株次第で続く トリガー: 両者の騰落率の符号(プラス・マイナス)が一致する 結果: ⏳ 部分的に確認 学び: 8/7は日経-0.12%・TOPIX+0.47%で符号が不一致(4日目)。今日8/10はどちらもプラスで符号は一致しました。ただし**+2.08%対+0.63%で、大きさは3.3倍の差**があります。符号は揃ったのに差は開いた。「ズレ」の形が変わっただけで、ズレ自体は消えていません。
主要指数
・日経平均 66,970.22円(+1,363.51 / +2.08%) ・TOPIX 4,100.61(+25.68 / +0.63%) ・グロース250 737.17(+13.08 / +1.81%) ・東証プライム 値上がり916 / 値下がり603 / 変わらず37 ・売買代金 9兆1,904億円(出来高25億4,848万株) ・ドル円 158円33銭〜35銭(前日比+7銭、円安方向)
値上がりが916、値下がりが603。全体の約60%の銘柄が上がっているので、「一部だけが上がった相場」ではありません。裾野はちゃんと広い。
それでも指数の上げ幅の6割が2社に集中している、というのが今日の面白いところです。
もうひとつ気になったのが売買代金です。8/3から並べると、11兆7,886億円 → 10兆2,837億円 → 10兆9,236億円(8/5) → 9兆6,880億円(8/6) → 10兆8,960億円(8/7) → そして今日が9兆1,904億円。直近6営業日で一番少ない日でした。株価は2%上がったのに、動いたお金は先週金曜より1.7兆円も少ない。お盆休みで市場参加者が減っているのが主な理由だと思いますが、上げ幅の大きさとお金の量が噛み合っていない点は頭に置いておきます。
相場を動かした3つのポイント
① 起点は日本じゃなくて、アメリカの雇用統計だった
8/7に発表された7月のアメリカの雇用統計(働いている人がどれだけ増えたかの統計)が、予想外に弱い内容でした。農業以外で働く人の数が前月比で-2.3万人。市場は+8.0万人増を予想していたので、方向が真逆です。しかも5月・6月分もあとから合計-10.3万人下方修正されました。給料の伸びも前年比+3.2%と、予想の+3.5%に届いていません。
この「弱さ」が株にはプラスに働きました。景気が弱いならFRB(アメリカの中央銀行)は金利を上げにくくなるからです。実際、9月に利上げがあると見る市場の見方は、発表前の約58%から約40%に下がりました。金利が下がるとハイテク株が買われやすく、8/7のS&P500は7,757.64で最高値を更新、NASDAQは+1.30%。週明けの東京は、この流れをそのまま引き継いで始まりました。
→ 僕のルール:日本株が大きく動いた日は、まず「日本発の材料か、海外発か」を先に分ける。海外発なら、その材料は日本の個別企業の中身を何も変えていないので、企業の実力が変わったと勘違いしないようにする。
② 上げ幅の59%を作ったのは、たった2社
リクルートホールディングス(6098)が+3,000円のストップ高(1日で動ける値段の上限まで買われること)。+22.79%で16,165円です。今期の営業利益の見通しを7,870億円から9,450億円へ約20%引き上げ、最終的に残る利益も6,230億円から7,550億円へ21%引き上げたのが材料でした。求人検索サイト「Indeed」を中心とした人材事業が好調とのことです。アドバンテスト(6857)も+6.43%で34,260円。
この2銘柄だけで、日経平均を約801円押し上げました(アドバンテスト499.61円+リクルートHD301.70円)。今日の上げ幅は1,363.51円なので、58.8%です。3番目の東京エレクトロン226.27円まで足すと1,028円になり、上げ幅の75%を3社が作った計算になります。業種別の上昇率トップが「サービス業+9.38%」で、2位の精密機器+4.37%を倍以上引き離しているのも、時価総額23.8兆円のリクルート1社がストップ高したせいだと考えると腑に落ちます。
ここで大事なのは、リクルートが上がった理由はアメリカの雇用統計とは何の関係もない、ということです。自社の決算という完全に別の材料で動いている。今日の日経平均の上げは、「海外要因で買われた半導体」と「自社材料で買われたリクルート」という、性質のまったく違う2つが偶然同じ日に重なった結果でした。
→ 僕のルール:指数が大きく動いた日は、上位2〜3社が何円分作ったかを必ず確認する。半分以上を数社が作っていたら、その日の指数は「相場全体の温度」としては読まない。
③ 同じ金利の話が、銀行と保険にはマイナスに効いた
下落率の上位は、石油・石炭製品-4.78%、保険業-2.48%、不動産業-1.99%、銀行業-1.89%、建設業-1.15%でした。指数が2%上がった日に、きれいに下を向いたセクターがあります。
理由は①と同じ「金利が下がりそう」です。銀行や保険は、お金を貸したり運用したりして利ざや(調達した金利と貸した金利の差)で稼ぐので、金利が下がると儲けが減ります。ハイテク株にプラスの材料が、そのまま金融株にはマイナスになる。日経新聞の記事でも、下げた銘柄としてKDDI・セコム・東京海上が名指しされていました。
ちなみに日本側は逆方向を向いています。今日8/10、日銀が7月末の会合の「主な意見」を公表しました。政策金利は1.0%で据え置きですが、高田審議委員が1.25%への利上げを提案して否決されており、「緩和の調整をペースアップする必要がある」という意見も出ています。アメリカは利上げしにくくなり、日本は利上げしたがっている。
→ 僕のルール:同じニュースでも、業種によってプラスとマイナスが逆になることがある。「株が上がった日」で終わらせず、下がった業種を先に見て、そこに共通の理由があるかを確認する。
セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」
買われたのはサービス業(+9.38%)、精密機器(+4.37%)、非鉄金属(+3.27%)、鉱業(+3.07%)、その他製品(+2.18%)。売られたのは石油・石炭製品(-4.78%)、保険業(-2.48%)、不動産業(-1.99%)、銀行業(-1.89%)、建設業(-1.15%)です。
上位は「AI・半導体まわり+リクルート」、下位は「金利が下がると困る業種+原油関連」。きれいに2つに割れています。
売買代金上位・注目銘柄
・キオクシアHD(285A) 1兆5,700億円 +0.59% ・フジクラ(5803) 6,597億円 +7.62% ・アドバンテスト(6857) 2,404億円 +6.43% ・太陽誘電(6976) 2,297億円 -1.56% ・イビデン(4062) 2,029億円 +4.03% ・東京エレクトロン(8035) 1,438億円 +4.13%
一番お金が動いたキオクシアが+0.59%しか上がっていないのが、今日の隠れた事実です。売買代金が2位のフジクラの2.4倍もあるのに、値段はほとんど動いていない。買いたい人と売りたい人が同じくらいの力でぶつかっていた、と読んでいます。
「半導体が全面高」という言葉でまとめてしまうと、この事実は消えてしまいます。
個別株で目立った動き(ストップ高/安含む)
ストップ高は大引け時点で25銘柄(前場は17銘柄)。リクルートHD、UT、レスター、内外テック、Waqoo、サンコールなど、決算や上方修正が材料の銘柄が並びました。
一方の急落は三井金属(5706)で**-13.55%(27,855円)。前回の仮説②で追いかけている型そのものです。通期の純利益予想を750億円→800億円に引き上げた**のに、上期の営業利益予想を490億円→450億円に引き下げ、市場予想にも届かなかった。看板は良くなったのに、手前の数字が悪いと売られる。
同じ日に、上方修正で+22.79%のリクルートと、上方修正で-13.55%の三井金属が並んだのは示唆的でした。上方修正という言葉自体には何の意味もなくて、市場が見ているのは「予想に対してどうか」なんだと、改めて確認しました。
為替と外部環境
・ドル円 158円33銭〜35銭(14時時点、前日比+7銭) ・ユーロ円 182円91銭〜95銭(-39銭) ・米国8/7 S&P500 7,757.64(+0.62%・最高値更新)、NASDAQ 26,690.62(+1.30%)、NYダウ 54,036.93(+0.28%) ・上海総合 3,966.59(+0.67%)/香港ハンセン 25,937.49(+1.05%) ・日本の10年国債利回り 2.805%(+1.0bp) ・WTI原油 77.08ドル(8/7時点)/金 4,300ドル台
アメリカの金利が下がる見通しなのに、日本の10年国債利回りは逆に少し上がっています。日銀の「主な意見」にタカ派(利上げに前向き)な発言が並んだのが理由だと思います。それでもドル円が158円台で円安のままなのは、正直まだうまく飲み込めていません。
テクニカルで見る今の位置
・日経225 ETF(1321):終値69,320円(+2.00%)。RSI 53.75で中立(買われすぎでも売られすぎでもない位置)。MACDは-623でシグナル-980を上回り、棒グラフ部分は+357のプラス。上向きの流れが続いています。ボリンジャーバンド(値動きの幅を示す帯)の中では-0.12%とほぼ真ん中。 ・TOPIX ETF(1306):終値427.6円(+0.59%)。RSI 56.74で中立。MACDは0.5でシグナル-0.7を上回り、こちらも上向き。
2%上がった日なのに、RSIはどちらも50台の中立圏でした。「まだ過熱していない」と読むこともできますが、僕が気になったのは移動平均線との距離です。1321は短期の平均から+10.02%、長期からも+10.46%上に離れています。上向きなのは間違いないけど、平均から1割離れた場所にいる、というのが今の位置。ここから飛び乗るのは僕には怖い距離です。
※テクニカル分析はTradingViewのリアルタイムデータに基づく。投資判断は自己責任で。
全体像:性質の違う2つの上げが、たまたま同じ日に重なった
今日の起点はアメリカの雇用統計でした。労働市場が弱い → 利上げしにくい → 金利が下がる → ハイテク株が買われる、という流れが週明けの東京にそのまま流れ込み、半導体関連に資金が向かいました。ここまでは素直な話です。
ただ、日経平均の上げ幅1,363円のうち801円を作ったアドバンテストとリクルートのうち、リクルートが上がった理由は雇用統計とはまったく無関係の自社決算です。海外要因で動いた銘柄と、自社材料で動いた銘柄が、偶然同じ日に重なった。だから日経平均だけが+2.08%と大きく見えて、TOPIXは+0.63%にとどまった。3.3倍の差はここから来ています。
そして同じ「金利が下がる」という材料が、銀行・保険・不動産にはマイナスに働いて、そこだけ逆を向きました。
こういう相場で僕が意識しているのは、「今日は上がった日だった」で記憶しないことです。上がった理由が3種類くらい混ざっている日は、来週同じ材料が出ても同じようには動きません。分けて覚えておかないと、次に似た局面が来たときに使えない記憶になってしまう。
今日の迷い・判断メモ
迷ったポイント: 前場で日経が一時+1,400円を超えたのを見て、「先週の下げは終わって上昇に転換したのでは」と考えかけました。3営業日ぶりの反発で、しかも上げ幅が大きかったので、流れが変わったように見えたからです。
結局どう考えたか: 業種別のデータを見て考えを止めました。上昇率トップのサービス業が+9.38%で、2位が+4.37%。この差が異常だと感じて、中身を調べたらリクルート1社のストップ高が原因でした。「相場全体が強くなった」のではなく「1社が強かった」だけかもしれないと気づいて、転換と判断するのをやめました。
後から振り返って: 判断は維持します。ただ、自分がなぜ「転換だ」と思いかけたのかは記録しておきたい。上げ幅の絶対値(+1,363円という数字の大きさ)に引っ張られていました。大きい数字を見ると、中身を確認する前に結論が出てしまうのが自分の癖だと分かったのが、今日一番の収穫かもしれません。8/6は「マイナスなのに7割上昇」で同じことに気づいたはずなのに、プラス側では同じ罠にまた引っかかりかけました。
自分なら何を確認してから動くか
- 売買代金が9兆円台を割るかどうかを見る。先週金曜の10.9兆円から1.7兆円減っているので、お盆で薄くなった中の値動きなのか、本当に買いが入っているのかを区別する材料にする
- 日経とTOPIXの騰落率の差が2倍以内に縮まるかを見る。今日の3.3倍のような差が続く間は、指数の数字を相場全体の温度として読まない
- 銀行・保険が下げ止まるかを見る。アメリカの金利観測が変わったのが本当なら、金融株の弱さは一日では終わらないはず。ここが翌週も弱いなら、今日の「金利で説明できる下げ」は本物だったことになる
次の取引日(8/12)の観測ポイント
明日8/11は山の日で東証はお休みです。次に開くのは8/12(水)。中1日空くので、その間のアメリカ市場を挟んだ形になります。
① 仮説:リクルートのストップ高は買い注文を消化しきっていないので、次の取引日も買いが残る トリガー:8/12にリクルート(6098)が前日比プラスで寄り付く 無効条件:マイナスで寄り付く → 僕のルール:ストップ高の翌営業日は「買いが残っていたか」の確認材料としてだけ見る。自分が飛び乗る場面ではないと決めている。
② 仮説:「通期の見通しが良くても、直近の実績が市場予想に届かないと売られる」型は続く トリガー:8/12以降に決算を出す銘柄で、この型に当てはまるものが発表当日マイナスで引ける 無効条件:プラスで引ける → 僕のルール:8/3のファナックから数えて今日の三井金属で7例目。1回でも崩れたらそこで型は終わりとみなす、という数え方を続ける。
③ 仮説:日経平均とTOPIXの騰落率の差(今日は3.3倍)は、値がさ2社次第で続く トリガー:8/12に日経平均の騰落率がTOPIXの2倍以上になる 無効条件:2倍未満に縮まる → 僕のルール:この差が開いている間は、日経平均の数字だけを見て相場を判断しない。TOPIXと並べて初めて意味が出る。
次の取引日にこの仮説がどうなったか、また振り返ります。気になることがあればコメントで。
今日の3語メモ
「+1,363円の59%は2社」「リクルート+22.79%ストップ高」「上がった日に銀行と保険は売られた」 — この3つを覚えておけば、8月10日の日本株は思い出せます。指数の数字と中身が今日もズレていた日、そのズレを作ったのが自社決算で急騰した1社だった日、そして同じ金利の材料が業種によって逆向きに効いた日、と。
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この記事はjiyon(@jiyon_kizuku)の相場振り返りシリーズです。 投資判断は自己責任でお願いします。データは2026年8月10日時点のものです。 ドル円・ユーロ円は14時時点の水準です(大引け時点の確定値は取得できませんでした)。WTI原油は8月7日時点の数値です。ストップ高25銘柄の完全な内訳、および信用取引残高の当日分は取得できていません。日経平均を押し上げた金額は大引け時点の集計値です(前引け時点では2銘柄で約699円と報じられていました)。
