米国株の主要3指数が揃って下げた日でした。ただ中身を見ると、下げのおよそ3分の2はアルファベット1社の事情で説明がついてしまいます。
S&P500は-0.32%、ナスダックは-0.60%、ダウは-0.34%。ところが小型株の集まりであるラッセル2000だけは+0.32%と上げています。「今日は売られた日」と一言で片付けると、この構造が丸ごと消えます。
そしてもう一つ。この日は決算を出した3社が、実績の良し悪しとは逆の方向に動きました。
前回の仮説チェック
前回(8月7日)の記事で3つ仮説を立てていました。間に8月10日の取引日を挟んでいますが、その日は自分がデイリーを回せていないので、8月7日から直接の答え合わせになります。
仮説①: 8/7の株高の根拠は「利上げが避けられそう」の一点だけで、景気の強さではない トリガー: 8/12のCPIが予想を上回って利上げ観測が戻ったとき、主要3指数が揃って下げる 結果: ⏳ 未確定 学び: CPIは8月12日の発表なので、まだ試験そのものが行われていません。ただ一点だけ気づいたことがあって、8月11日は「3指数が揃って下げた」のにラッセル2000は上げています。自分は仮説を「主要3指数が揃って下げる」と書きましたが、この書き方だと大型株だけを見て市場全体を判定してしまう。次に同じ仮説を立てるときは「4指数が揃って」にします。
仮説②: 雇用のニュースに反応するのは短期金利(2年債)であって、長期金利(10年債)ではない トリガー: 次の雇用系の指標で予想から大きくズレたとき、2年債の変動幅が10年債を上回る 結果: ⏳ 未確定 学び: 8月11日に発表された経済指標はNFIB中小企業楽観指数(99.8)と中古住宅販売件数(前月比-1.7%)で、雇用系の指標がありませんでした。検証の機会自体が来ていません。加えて今日は2年債の利回りそのものが取得できませんでした(後述します)。仮説を検証するには材料と測定器の両方が要る、という当たり前のことを記録しておきます。
仮説③: 決算での明暗は、実績のBeat/Missではなく通期ガイダンスの上下で決まっている トリガー: 「実績はBeatなのにガイダンス据え置き・下方修正で下落」または「実績はMissでもガイダンス上方修正で上昇」がもう1件出る 結果: ✅ 確認された(1件どころか3件) 学び: Upworkは売上もEPSも予想を上回ったのに、通期見通しを下げて-20%超。Onは売上未達に加えて成長率見通しを下げて-20〜22%。逆にSupermicroは売上が未達だったのに、次の四半期の売上見通しを市場予想より3割以上高く出したことで時間外は大幅高。3社とも、実績の良し悪しと株価の方向が一致していません。 8月6日・7日から続く構図が、少なくとも3回連続で観測できました。(Upworkの決算発表は米国時間では前日8月10日の引け後で、8月11日は株価が反応した日、というのが厳密な整理です)
主要指数
・S&P500 7,728.20(-24.91 / -0.32%) ・Nasdaq 26,445.45(-159.91 / -0.60%) ・NYダウ 53,791.85(-184.13 / -0.34%) ・ラッセル2000 3,027.12(+9.72 / +0.32%) ・VIX(恐怖指数) 15.28(-0.18 / -1.16%)
VIX(市場がこの先どれくらい荒れると思っているかを示す指数。数字が低いほど落ち着いている)は15.28で、15台前半の低い水準が続いています。指数が下げた日なのにVIXも下がったということは、この下げを市場は「怖い下げ」だと受け取っていないということです。
ラッセル2000は、S&P500に入らないような規模の小さい会社2000社を集めた指数です。ここが上がっているのに大型3指数が下げている、というのが今日の一番の特徴でした。
相場を動かした3つのポイント
① 指数を下げたのは「市場」ではなくアルファベット1社だった
アルファベット(グーグルの親会社)が**-3.84%**と大きく下げました。理由は相場つきではなく、完全にこの会社だけの話です。
ここで自分は一度書き間違えています。最初、材料を4つ見つけて「今日いっぺんに出たのか」と書きかけたのですが、日付を並べたら全然そうではありませんでした。
| 日付 | 出た材料 | |---|---| | 7月22日 | 4-6月期の決算。2026年の設備投資見通しを1800億〜1900億ドルから1950億〜2050億ドルへ引き上げ(今年3回目の上方修正)。四半期の設備投資額は449億ドルで前年からほぼ倍増。そしてフリーキャッシュフロー(会社に実際に残る現金)が-59億ドルのマイナスに。2004年の上場から22年で初めて | | 8月5日 | AI開発部門DeepMindの組織再編。CEOが退任して会長兼チーフサイエンティストに回り、同時に27年在籍した中核の技術者も離職 | | 8月6日 | 最大250億ドルの社債発行を発表(償還2〜40年の10本) | | 8月11日 | フランスの日刊紙連盟(約300社が加盟)が、AI検索の要約機能について競争当局に申し立て |
つまり、この日に新しく出たのは最後の1件だけです。残りは3週間かけて積み上がっていました。
そう並べ直すと、見え方が変わります。「今日ニュースが4つ出たから-3.84%」ではなく、「7月下旬から積み上がっていた重さに、規制の一件が乗った日」。前者なら一過性の下げですが、後者なら理由はまだ会社に残っています。
内容として一番重いのは、やはり7月22日のセットだと思います。「設備投資を増やす」は普通なら成長への投資として歓迎されうる話なのに、「その結果、手元に現金が残らなくなった」と同じ日に出た瞬間、売り材料に変わっている。
(なお最後の1件は、正確には裁判所への「提訴」ではなく競争当局への「申し立て」です。自分は最初これを提訴と書いていました)
→ 僕のルール:株価が大きく動いた日に材料を並べるときは、必ず各材料の発表日を横に書く。日付を書かずに並べると、古い材料まで「今日出た」ように見えて、一過性の下げと読み違える
② 1社で指数の下げの3分の2が説明できてしまう
アルファベットには株が2種類あって、S&P500にはその両方が入っています。組入比率はGOOGLが3.15%、GOOGが**2.53%**で、合わせて約5.68%。これはS&P500の中で3番目の大きさです(この比率は運用会社の公式な保有銘柄一覧で確認しました)。
この日の終値ベースの下落率はGOOGLが**-3.84%**(357.52ドル→343.80ドル)。指数をどれだけ押し下げたかを計算すると、
・GOOGL:3.15% × -3.84% = -0.121ポイント ・GOOG:2.53% × 約-3.8% = 約-0.096ポイント ・合計 約-0.217ポイント
この日のS&P500の下げは-0.321%でした。つまり およそ3分の2が、アルファベット1社で説明できてしまう計算になります。
(GOOGのほうは終値の変動率を独立したソースで確認できなかったので、GOOGLと同程度と仮定しています。ここは目安です)
そして同じ日にラッセル2000は上がっています。「小さい会社2000社の株価は、平均するとむしろ上がった」。指数の-0.32%という数字だけを見て「今日は市場が売られた」と記録すると、この事実が丸ごと抜け落ちます。
→ 僕のルール:指数の変動率を「その日の地合い」として記録する前に、1銘柄で大きく説明がついてしまわないか確認する。ついてしまう日は、地合いの記録として使わずに銘柄別に分けて残す
③ 決算の明暗を分けたのは実績ではなく通期ガイダンスだった
3社が並んだので、そのまま比べます。
Upworkは、1株利益が0.41ドル(予想0.34ドル)、売上が1億9170万ドル(予想1億9000万ドル)と両方とも予想を上回りました。それなのに株価は-20%超。理由は通期の売上見通しを7億7500万ドルから7億4000万ドルへ、4.5%下げたことです。
On Holding(スイスのスポーツシューズの会社)は、売上が予想に届きませんでした。1株利益のほうは、スイスフラン建ての予想に対しては小幅に上回った一方、ドル建ての別の予想に対しては未達という報道もあり、どちらとも言い切れません。はっきりしているのは通期の成長率見通しを「23%以上」から「20%台前半」へ下げたことで、株価は-20〜22%下げました。
Supermicroは逆です。売上は111億ドルで、市場予想(ソースにより115億〜117億ドルと幅がある)に届きませんでした。それでも株価が上げたのは、次の四半期の売上見通しを145億〜155億ドルと、市場予想の約117億ドルを2〜3割上回る数字で出したからです。時間外の上昇率は報道により+8%から+20%まで幅があります。
3社を並べると、実績の良し悪しと株価の方向がまったく一致していません。決まっているのは通期ガイダンスの上下のほうです。
→ 僕のルール:決算銘柄は発表直後の実績の数字に反応しない。通期ガイダンスが前回からいくら動いたかを確認してから記録する
セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」
原油に近いところが買われ、金利に敏感なところが売られた1日でした。
買われた側:エネルギー**+1.25%** / 公益**+1.16%** / 資本財+0.60% / 素材+0.11% 売られた側:不動産-0.72% / 通信サービス-0.50% / 一般消費財-0.36% / 生活必需品-0.31% / ヘルスケア-0.26% / テクノロジー-0.12% / 金融-0.02%
エネルギーが一番上なのは原油高と素直に噛み合っています。
ただ、通信サービスだけは数字が2つあります。上の表で使ったETF(そのセクターの株をまとめて買える商品)ベースでは**-0.50%。ところが公式のS&P500通信サービス指数を見ると-2.12%**で、こちらでは文句なしの最下位です。同じ日の、同じ「通信サービス」で、4倍以上ちがう。
理由は、ETFのほうが1銘柄の組入比率に上限を設けているからです。アルファベットの比率が公式指数より低く抑えられているぶん、その日の-3.84%が薄まって出てくる。公式指数のほうは上限がないので、アルファベットの下落がほぼそのまま指数に出ます。
どちらかが間違っているのではなく、両方とも正しい。 ただ「何を測っているか」が違います。ETFのほうは「そのセクターに投資したときの実際のリターン」に近く、公式指数のほうは「そのセクターの時価総額全体がどれだけ減ったか」に近い。自分の記録ではETFベースで統一しますが、ニュースで「セクター最下位」と読んだときは、どちらの数字を指しているのか確認しないと話が噛み合わなくなります。
構図としては「原油の恩恵を受けるところが買われ、アルファベットを抱えるところが売られた」でまとまります。
Mag7(超大型テック7社)の動き
・GOOGL -3.84%(今日の主役。上に書いた積み上がりの材料) ・AMZN -2.1% ・AAPL -1.09% ・MSFT -0.44% ・NVDA -0.02%(ほぼ横ばい) ・META +0.7% ・TSLA +0.58%
7社のうち下げたのは4社で、うち1社が突出しています。「ハイテクが売られた日」というよりは「アルファベットが売られて、他は小動きだった日」でした。
なおAMZNとMETAの数字は、自分が確認できたソースが1つだけです。方向は他の情報と矛盾しませんが、小数点の精度は保証できないので、そのつもりで見てください。
個別株で目立った動き
上昇:CoreWeave 時間外+8〜14%(売上25.8億ドルで前年比+112%、受注残1040億ドル)/Supermicro 時間外で大幅高(上に書いた通り、報道により+8〜20%と幅)/Riot Platforms +4.33%(AI企業と20年・91億ドルのデータセンター賃貸契約。ただし発表は前日の8月10日で、この日は前日夜の急伸から失速して引けています)
下落:Upwork -20%超/On Holding -20〜22%/Beyond Meat -19.7%(8月13日に30株を1株にまとめる併合を控えて)/Rocket Lab(新型ロケット初打ち上げの延期観測。-9.3%という数字を見かけましたが、これは取引開始前の時点で、通常取引では-7%台という報道もあります)
このリストからは、最初に書いていた3銘柄(Apollo +5.95%、KKR +5.55%、NIQ +42%)を落としました。裏を取ろうとしたら、Apolloは決算翌日にむしろ下げたという報道が出てきて数字が確認できず、KKRは別の数字(+6.1%)が出てきて一致せず、NIQは実際には時間外+15.58%で、+42%という数字がどこから来たのか分かりませんでした。確認できなかった数字は、面白そうでも載せないことにします。
ここで一つ、記録に残しておきたい落とし穴があります。Monster Beverageが変動率の集計サイトで「-49.76%」と表示されていました。 ほぼ半値です。でもこれは下落ではなく、8月11日付で1株を2株に分割したことによる機械的な価格の半減でした。株数が倍になっているので、持っている人の資産は変わっていません。
スクリーナー(条件で銘柄を絞り込むツール)の数字をそのまま拾うと、こういうものが「本日の急落銘柄1位」として上がってきます。
マクロ環境(大きな経済の流れ)
今日はここが書けません。正直に理由を書きます。
金利・為替・コモディティの数字を確認しようとして、公的な一次ソース(米財務省、FRB、セントルイス連銀のデータベース、CMEの金利先物ツール)にすべてアクセスできませんでした。403や451といった拒否応答とタイムアウトです。二次的なニュースサイトの数字は取れたのですが、同じページを時間を置いて取り直すと毎回違う数字が返ってくるという現象を、10年債・原油・金の3つで確認しました。
具体的には、米10年債利回りが「4.73%(前日比上昇)」という情報と「4.688%(前日比低下)」という情報が併存していて、上がったのか下がったのかすら決着しませんでした。2年債にいたっては値そのものが取れていません。
なので今日は、金利・ドル円・原油・金の数字は書きません。「だいたいこのへん」で書くこともできますが、自分の記録は後から検証するためのものなので、確度の低い数字を確定値のように残すほうが害が大きいと判断しました。
書ける範囲だけ書きます。
経済指標(8月11日発表) ・NFIB中小企業楽観指数(7月分):99.8(前月97.4から+2.4ポイント、予想97.5を大きく上回る)。52年平均の98.0を超え、2025年8月以来の高さ ・中古住宅販売件数(7月分):前月比-1.7%(年率換算406万件、前年比では+0.7%)。6月の-2.4%からは減少幅が縮小
中小企業の景況感がこれだけ改善しているのは、この日ラッセル2000(小型株)だけが上げたことと、方向としては噛み合っています。ただNFIBは7月分の調査なので、8月11日の株価がこれに反応したと言うのは無理があります。同じ向きだったから因果がある、とは書かないでおきます。
金融政策の前提(ここは複数の公的資料で裏が取れました) 今の米国の政策金利は3.50〜3.75%です。直近の7月29日の会合では据え置きが決まりましたが、9対3の分裂票でした。しかも反対した3人(クリーブランド・ミネアポリス・ダラスの各連銀総裁)は全員「0.25%の利上げ」を主張しています。声明文にはこう書かれています——「インフレは委員会の2%目標に比べて高止まりしており、その一因は、エネルギーを含む一部の業種で価格を押し上げた供給ショックにある」。
(念のため補足すると、声明文そのものに「中東」という言葉は出てきません。書かれているのは「エネルギーを含む供給ショック」までです。その供給ショックの正体がイランとの紛争であることは複数の分析で確認できますが、それはFRBの言葉ではなく解釈です)
ここは自分でも認識を改めたところです。次の9月16日の会合について市場が見ているのは「利上げか据え置きか」であって、利下げはほぼ視野に入っていません。原油が上がる → 物価が上がる → 利下げどころか利上げの話になる、という順番です。
背景にあるのはイランとの紛争で、原油が通るホルムズ海峡(中東の原油タンカーが通る海の細い通り道)の通航が、平時の1日130隻に対して1日8〜15隻まで落ちています。イラン側の「要求が満たされるまで封鎖を続ける」という声明そのものは8月9〜10日に出たもので、8月11日はその膠着が続いていると報じられた日、というのが正確な整理です。新しい材料が出たわけではなく、解けない状態が続いていることが原油を支えている構図でした。
テクニカルで見る今の位置
指数は下げましたが、チャート上のトレンドは崩れていません。
・S&P500(SPY):RSI 63.34。MACDはゴールデンクロス(短期の線が長期の線を上抜けた強気のサイン)を維持。短期・中期・長期すべての移動平均線を上回ったまま ・Nasdaq(QQQ):RSI 55.06で中立。こちらもゴールデンクロス状態 ・マイクロソフト(MSFT):RSI 77.71。一般に70を超えると「買われ過ぎ」とされる水準 ・エヌビディア(NVDA):RSI 58.01で中立だが、中期・長期の移動平均線をわずかに下回っている ・テスラ(TSLA):RSI 43.49。デッドクロス状態だが、その勢いは弱まりつつある
RSIは「買われ過ぎ・売られ過ぎ」を0〜100で表す指標です。
見ていて思ったのは、今日の下げは価格の下げであってトレンドの転換ではないということ。SPYが移動平均線3本すべての上にいて、MACDも強気の形を保ったままです。逆に気になったのはMSFTのRSI 77.71で、株価がこの日-0.44%と下げているのに指標は買われ過ぎ圏にいます。
※テクニカル分析はTradingViewのリアルタイムデータに基づく。投資判断は自己責任で。
全体像:指数の下げ幅と、市場の中身が一致していない日
今日を一言でまとめると、**「指数の数字と、その中で起きていたことが噛み合っていない日」**でした。
大型3指数は揃って下げましたが、下げのおよそ3分の2はアルファベット1社の会社固有の材料です。同じ日に小型株のラッセル2000は上げていて、VIXも下がっている。決算では、実績が良かった会社が2割下げ、実績が悪かった会社が上げました。どれも「指数が-0.32%だった」という1行からは絶対に出てこない話です。
もう一つ引っかかっていることがあります。公益(電気・ガスなどの会社。安定していて金利に敏感)と小型株が同時に買われている点です。この組み合わせは、一般には金利が下がったときに起きやすいとされています。もし本当に金利が下がっていたなら、「原油高でインフレ懸念 → 利上げ観測」という表向きの説明とは逆方向のことが、市場の内側で起きていたことになります。ただ、今日は10年債の方向すら確認できていないので、これは確認できていない仮説として置いておきます。
こういう相場で僕が意識しているのは、「指数が動いた理由」と「指数を構成する銘柄が動いた理由」を分けて記録することです。今日みたいに1社で3分の2も説明がついてしまう日に、指数の変動率をそのまま市場心理として解釈すると、確実に読み違えます。
今日の迷い・判断メモ
今日は自分の失敗を2つ記録します。1つ目はかなり大きい失敗です。
迷ったポイント: 実は自分は、この日のデータを最初に引けの28分前に取っていました。夜中に起きていたので、「あと28分ならほぼ確定やろ」と判断してそのまま記録に残しています。
結局どう考えたか: その時は「変動率はもうほとんど動かないはずだから、確定値として扱っていい」と考えました。理屈としては、残り28分で指数が大きく動く確率は低い、というものです。
後から振り返って: 完全に間違っていました。しかも間違い方が想像と違いました。
引け後に取り直して並べたところ、最初に記録した4指数の数字は「28分前の暫定値」ではなく、前営業日(8月10日)の確定終値そのものでした。データの提供元が返す「終値」という項目は、その日の引けが終わるまで前日の値を返し続けるんです。自分が心配していた「残り28分の値動き」はまったく関係がなく、そもそも当日の数字を見ていなかった。
一番こわかったのはラッセル2000です。最初の記録では「-0.56%」と書いていました。正しくは**+0.32%**。符号が逆です。今日の記事で自分が一番大事だと思っている「大型は下げたが小型は上げた」という発見が、最初の記録では完全に消えていました。
しかも厄介なことに、同じファイルの中でVIXの数字だけは正しかったんです。VIXはライブの値が返り、指数は前日の終値が返る。1つのファイルの中に、正しい数字と1日ズレた数字が混ざる。 目で見ても、日付を確認しても気づけません。
気づけた理由はひとつだけで、「前営業日の終値+前日比=当日の終値」という足し算をやったからです。この計算が合わなかったので、初めておかしいと分かりました。
そして情けないことに、同じ罠を同じ日にもう一度踏んでいます。 この記事の主役であるアルファベットの下落率を、自分は最初 -3.61% と書いていました。公開前の確認で調べ直したら、それは東部時間14時47分時点のザラ場の数字で、終値は -3.84% でした。終値のデータを扱う2つのソースが、どちらも「前日357.52ドル→当日343.80ドル」で一致しています。
しかもこれ、8月7日の記事で自分が書いたばかりのことです。あの日は「The Trade Deskの-28%はザラ場安値で、終値は-21.90%だ」と指摘して、直後に自分が為替で同じ間違いをしていました。今日はそれを記事に書いた4日後に、また同じことをやっています。
3回並べて見えてきたのは、自分が引っかかっているのは「ザラ場か終値か」という知識の問題ではないということです。知識としては知っていて、記事にも書いている。それでも間違えるのは、目に入った数字をそのまま書き写す瞬間に、その数字の時点を確認する手順が入っていないからです。知識ではなく手順の問題なので、気をつけるでは直りません。だから今日は「気をつける」ではなく、下の確認リストに手順として書きます。
迷ったポイント(2つ目): 公益と小型株が同時に買われたことを、「金利が下がったからだ」と書くかどうか。
結局どう考えたか: 書きませんでした。金利が下がったという直接の確認が取れていないので、結論として書けば「話は綺麗だが根拠がない」記述になります。仮説として明記する形に留めました。
後から振り返って: 現時点では判断は維持します。ただ正直に言うと、書きたい気持ちはありました。そのほうが記事として綺麗にまとまるからです。話が綺麗にまとまる方向の推論ほど疑う、というのを前回のドル円のときにも書いたばかりなので、続けて同じ罠に足をかけていたことになります。
自分なら何を確認してから動くか
-
市場が閉まる前に取ったデータは、何分前だろうと確定値として扱わない。 「あと28分ならほぼ確定」は、変動率の話としては正しくても、データの提供元が返す終値の項目は前日のままです。時間の近さと値の正しさは関係ありません
-
数字を記録したら、必ず「前日の終値+前日比=今日の終値」を計算する。 今日はこの足し算だけが誤りを見つけました。日付を確認しても、目で見ても分かりません。1分で終わる計算なので毎回やります
-
指数の変動率を記録する前に、1銘柄でどれだけ説明がつくか見る。 今日はアルファベット1社で3分の2でした。そこまで1社に寄っているなら、その数字は「市場の気分」ではなく「1社のニュース」です
-
株価を書き写すときは、必ず「前日終値→当日終値」の2つを並べて書く。 変動率だけを書き写すから、それがザラ場か終値か分からなくなります。2つの価格を並べれば、割り算した瞬間に率が合うかどうかで自分で検算できる。今日のアルファベットは、357.52ドル→343.80ドルと並べていれば-3.61%という数字は最初から書けませんでした
-
材料を並べるときは、必ず発表日を横に書く。 日付のない材料リストは、古い材料まで「今日出た」ように見えます
明日の観測ポイント
次の取引日は8月12日(水)。日本時間の21時30分に**7月のCPI(消費者物価指数)**が出ます。市場の予想は、全体が前年比+3.4%(6月は+3.5%)、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアが前年比+2.5%(6月は2.6%)です。
① 仮説: 8月11日の下落は市場全体が売られたのではなく、アルファベット1社の材料による見かけ上の下げだった トリガー: CPIが波乱なく通過した日に、アルファベットが下げ止まる一方で他の大型テックが揃って戻す → 8月11日の下げが1社の事情だったと確定 無効条件: CPI通過後もラッセル2000を含めて全面安になる → 8月11日の時点ですでに市場全体が売りに傾いていて、アルファベットは目立っただけだった → 僕のルール:1銘柄で指数の下げの大半(今日なら3分の2)が説明できる日は、その指数の変動率を「地合い」の記録として使わない。銘柄別に分けて残す
② 仮説: 決算の株価反応を決めているのは実績の良し悪しではなく、通期ガイダンスの上下である トリガー: CPI後の決算で「実績が予想超えなのにガイダンス引き下げで下落」または「実績が未達でもガイダンス強気で上昇」がもう1件出る → 8月6日・7日・11日と続く構図が定着していると確定 無効条件: 実績の良し悪しと株価の方向が一致する日が続く → 8月前半のこの構図は決算シーズン特有の一時的なものだった → 僕のルール:決算銘柄は発表直後の実績の数字に反応せず、通期ガイダンスが前回からいくら動いたかを確認してから記録する
③ 仮説: 公益と小型株が同時に買われたのは、表向きの「原油高→利上げ観測」とは逆に、金利が下がっていたためである トリガー: 10年債利回りの確定値が取れた時点で、8月11日が前日比マイナス(低下)だったと確認できる → 仮説が成立 無効条件: 10年債が8月11日に上昇していた → 公益と小型株の上昇は金利以外の理由(原油高の恩恵、CPI前の持ち高調整など)で説明し直す必要がある → 僕のルール:一次ソースに到達できなかった日の金利は、方向すら書かない。翌日以降に確定値が取れてから遡って埋める
明日この仮説がどうなったか、また振り返ります。気になることがあればコメントで教えてください。
今日の3語メモ
-
「28分前でも前日の値」:市場が閉まる28分前に取ったデータの終値項目は、暫定値ではなく前営業日の確定終値だった。時間の近さは値の正しさと関係ない。検算(前日終値+前日比=当日終値)だけが誤りを見つける
-
「-0.32%の3分の2は1社」:S&P500の下げ幅のおよそ3分の2がアルファベット1社(GOOGL+GOOGで組入比率5.68%)で説明できた。同じ日に小型株のラッセル2000は+0.32%と上昇。指数の変動率は「市場の気分」とは限らない
-
「両方Beatで-20%」:Upworkは売上もEPSも予想超えなのに通期見通しを4.5%下げて-20%超。逆にSupermicroは売上未達でも次期見通しが予想比3割超で大幅高。決めているのは実績ではなくガイダンス
📩 AI内製化の実装ノウハウは別ブランドで発信中
Jiyonは「AIで相場をどう読むか」の試行錯誤の記録です。 事業や個人資産にAIをどう取り込むかを体系で学びたい方は、TSUMUGU(Hiro)のメルマガをどうぞ。 → https://be-sunao.com/tsumugu/
この記事はjiyon(@jiyon_kizuku)の相場振り返りシリーズです。 投資判断は自己責任でお願いします。データは2026年8月11日時点のものです。
本日は米財務省・FRB・セントルイス連銀・CMEの各一次ソースにアクセスできず(403・451・タイムアウト)、10年債利回り・2年債利回り・ドル円・原油・金・期待インフレ率の数値は記載していません。10年債は上昇説と低下説が併存し、方向すら確定できていません。CNN Fear & Greed指数の確定値と騰落銘柄数も取得できませんでした。
主要指数(5系列)は「前営業日終値±前日比=当日終値」の検算を通過し、Mag7・決算・セクター・経済指標は複数系統の独立照合で裏取りしています。FOMCの投票結果と声明文はFRB公式の原文、組入比率は運用会社の公式保有銘柄一覧、経済指標はNFIB・NARの公式リリースで確認しました。
公開前の検証で修正した箇所:GOOGLの下落率は当初ザラ場値(-3.61%)を採用していたため終値(-3.84%)に、FOMC声明文の引用は実際の文言に、フランスの件は「提訴」から「申し立て」に、Supermicroの売上予想は出典間の幅を明示する形に、それぞれ改めました。裏付けの取れなかった個別株3銘柄は記載から外しています。
