失業率は改善、でも労働力が26万人減っただけ|雇用が10万人ズレても10年債は動かなかった|8月7日 米国株分析
今日のアメリカ株は、7月の雇用統計が「マイナス2.3万人」という予想外の悪い数字だったのに、S&P500が史上最高値(7,757.64、+0.62%)を更新して終わりました。ナスダックは+1.30%、ダウは+0.28%、小型株のラッセル2000も+1.10%。週間ではナスダックが+5.19%で4月以来いちばん強い週になっています。
雇用が減ったから株が上がった、という一日でした。 今のFRB(アメリカの中央銀行)は「利下げ」ではなく「利上げ」を検討している局面です。だから雇用が弱いと「9月の利上げは見送りになりそうだ」という読みにつながって、株にはプラスに働きます。実際、9月会合での据え置き確率は43〜45%から56〜60%へ跳ね上がりました。
ただ、数字の中身を開けると話が変わります。 失業率は6月の4.2%から4.1%へ下がりました。見出しだけ読むと改善です。でも下がった理由は、職に就いた人が増えたからではありません。働くことをやめた人が26.4万人いて、そのぶん分母が縮んだからです。今日はここがいちばん引っかかりました。
前回の仮説チェック
前回(8/6)の記事で立てた仮説を、今日のデータで答え合わせします。今日は②が判定日でした。
① 仮説: AIに「お金を使う側が売られ、受け取る側が買われる」選別は、8/5だけの一時的な動きだった トリガー: 8/7以降も同じ逆行(AI投資拡大を発表した銘柄が下げ、チップ側が上げる)が繰り返し観測される → 選別は継続的な構造だと確定 無効条件: 逆行がまったく観測されない → 8/5は個別ニュースが偶然重なっただけだった 結果: ⏳ 未確定(判定材料なし)。今日「チップ側が上げる」ほうは条件を満たしました(NVIDIA +2.27%、半導体ETFのSOXXも+2.02%でナスダック+1.30%を上回る)。でも肝心の「AI投資の拡大を発表して、その日に売られた銘柄」が今日は見当たりません。片側だけではトリガーの成立と言えないので、判定は持ち越します 学び: 逆行の観測には「上がる側」と「下がる側」の両方が同じ日に必要だと、あらためて分かりました。片方だけ揃った日を「半分当たった」と数えたくなるんですが、それをやると仮説がどんどん甘くなります。参考としては、The Trade Desk(後述、-21.90%)が「AI広告への長期投資」を掲げながら減収見通しで売られています。ただこれは設備投資の話ではないので、今回の仮説の材料には数えません
② 仮説: 10年国債利回りは雇用と金融政策の見通しで動いている トリガー: 8/7の雇用統計でNFP(非農業部門雇用者数)が予想から±3万人以上ズレたとき、10年債が0.08ポイント以上動く → 雇用が主因だと確定 無効条件: 同じズレ幅でも10年債の動きが0.08ポイント未満 → 金利は別の要因で動いている 結果: ❌ 否定されました。ズレ幅は条件を大きく超えました(予想+8.0万人に対して実績-2.3万人=10.3万人のズレ)。それなのに10年債は4.66%→**4.639%**で、動いたのは約0.02ポイント。ザラ場でいちばん下がった4.60%で計算しても0.06ポイントで、トリガーの0.08ポイントに届いていません 学び: これは今日いちばん大きな収穫でした。同じ日、2年国債は4.247%→4.193%で0.05ポイント前後下がっています(7月中旬以来の低い水準)。つまり雇用のニュースに反応したのは短期の金利であって、長期の金利ではなかった。2年債は「これから2年のFRBの動き」を、10年債は「もっと先の景気と物価」を映します。今日の市場は、FRBの目先の動きだけを書き換えて、その先の見通しは変えなかったということになります。前回「雇用に関するニュース全般に10年債が反応している」と考えを寄せたのは、行き過ぎでした
主要指数
・S&P500 7,757.64(+47.68 / +0.62%)史上最高値を更新 ・Nasdaq 26,690.62(+342.26 / +1.30%) ・NYダウ 54,036.93(+151.83 / +0.28%) ・ラッセル2000 3,034.49(+32.95 / +1.10%) ・VIX(恐怖指数) 14.90(-0.25 / -1.65%)
ナスダック(+1.30%)がダウ(+0.28%)より強く、小型株のラッセル2000も+1.10%。この並び方は「金利が下がると得をする順」とほぼ一致します。将来の利益が大きいハイテク企業と、借入コストが重い小型企業は、どちらも金利が下がるとプラスになりやすいからです。
VIX(この先の値動きの荒さへの警戒度)は14.90まで下がって、警戒は緩んでいます。値上がり銘柄と値下がり銘柄の比率はニューヨーク証券取引所で2.49対1、ナスダックで2.07対1。一部の銘柄だけでなく、幅広く買われた一日でした。
CNNのFear & Greed指数(市場の感情を0〜100で表す指標)は、公式サイトに到達できず確定値が取れませんでした。別ソースでは63〜64(Greed=強気圏)ですが、数字が揺れているので参考値として扱います。
相場を動かした3つのポイント
① 雇用は「-2.3万人」。しかも5月・6月が合計10.3万人も下方修正された
今日の主役はこれ一つです。
7月のNFP(非農業部門雇用者数=アメリカで農業以外の仕事に就いている人の増減)は**-23,000人**。市場予想は+80,000人だったので、10.3万人も外れました。
さらに厳しいのが過去分の修正です。
- 5月: 129,000人 → 63,000人(-66,000人の下方修正)
- 6月: 57,000人 → 20,000人(-37,000人の下方修正)
- 合計 -103,000人
雇用統計は毎月、過去2ヶ月分をあとから直します。今回はその修正だけで10万人分が消えました。つまり「7月が悪かった」だけでなく、「5月も6月も、思っていたほど良くなかった」ことが同時に判明した形です。
中身を業種で割ると、政府部門が**-53,000人**と大きく減り、民間部門は+30,000人でかろうじてプラス。民間の中では小売業-19,400人、金融-14,000人が減り、ヘルスケア+22,000人と製造業+5,000人が支えました。
→ 僕のルール:雇用統計を見るときは、当月の数字と同じ大きさで「過去2ヶ月の修正幅」を見る。今回のように修正だけで10万人動くなら、当月の1つの数字を信じすぎない。
② 失業率4.1%は改善に見えて、分母が26.4万人減っただけ
ここが今日いちばん考えさせられました。
失業率は6月の4.2%から**4.1%**へ下がりました。数字だけ見れば改善です。ところが、同じ発表の中にこういう数字が入っています。
- 労働力人口が-264,000人(=働く意思のある人が26.4万人減った)
- 労働参加率61.4%(5月は61.8%。今年1月からは0.7ポイント低下)
- この61.4%がどれくらい低いかは、報じ方が割れています。「コロナ禍を除けば1976年半ば以来の低さ」とするメディアと、「2021年2月以来の低さ」とするメディアがあり、基準が食い違っている。労働省の公式データに直接あたれなかったので、ここは「近年で明確に低い水準」とだけ受け取っておきます
失業率は「仕事を探している人のうち、見つかっていない人の割合」です。分子は失業者、分母は働く意思のある人。分母が減れば、失業者が減らなくても割合は下がります。 今回はまさにそれで、就職できた人が増えたのではなく、探すのをやめた人が増えた結果として4.1%になっています。
平均時給も前年比+3.2%(予想3.5%)と鈍く、6月分も3.5%→3.4%へ下方修正されました。給料の伸びも弱まっています。
同じ発表の中に「良く見える数字」と「悪い中身」が同居していて、見出しになるのは前者のほうです。学校じゃ教えてくれないけど、率で発表される指標は、上がった下がったの前にまず分母に何が起きたかを見ないと逆の意味に読めてしまいます。
→ 僕のルール:「率」で発表される指標(失業率、利益率、シェア)は、分子と分母のどちらが動いたかを必ず分けて確認する。分母が縮んだ改善は改善として数えない。
③ 決算は雇用統計と関係なく、ガイダンスだけで真っ二つに割れた
指数を動かしたのは雇用統計ですが、値動きの大きい銘柄はぜんぶ決算由来でした。しかも上げた側も下げた側も、材料は「今期の実績」ではなく**「来期以降の見通し(ガイダンス)」**です。
上げた側
- Atlassian(TEAM/業務管理ソフト)+35.31%($149.07):EPS $1.87(予想$1.50)、売上17.7億ドル(予想16.6億ドル)と両方Beat。継続課金の年間売上(ARR)は実績で+23%。ちなみに来期(FY2027)の見通しはARR+18%・売上成長率13%へ減速する内容で、見通し自体は減速なのに株価は+35%上げています(買収効果の一巡と慎重な前提を織り込んだ数字だと説明されている)
- Twilio(TWLO/企業向けメッセージ配信)+24.89%($241.28):EPS $1.47(予想$1.32)、売上15.0億ドル(予想14.3億ドル)。通期の成長率見通しを14〜15%から18〜18.5%へ引き上げ
- Airbnb(ABNB/民泊)+17.43%($178.07):売上36.1億ドル(前年比+17%)。通期の成長率見通しを「10%台前半」から「10%台半ば以上」へ引き上げ
- Cloudflare(NET/ネット配信インフラ)+5.57%($300.27):EPS $0.29(予想$0.27)、通期売上見通しを28.05〜28.13億ドル→28.6〜28.7億ドルへ上方修正
下げた側
- The Trade Desk(TTD/ネット広告の買付プラットフォーム)-21.90%($13.80):EPS $0.34(予想$0.40)、売上7.151億ドル(予想7.526億ドル)とどちらもMiss。決定打はQ3の売上見通し6.50億ドルで、市場予想を19.4%下回り、前年比でも-12.1%。同社として初めての「減収」見通しです。株価は52週安値をつけ、2019年初め以来の水準まで落ちました
TTDにはアナリストの格下げが一日で8社集中しました。MoffettNathansonは目標株価を$23→$6、Bairdは$27→$9、Citiは$21→$11。目標株価が3分の1や4分の1になる下方修正が並んでいます。
昨日(8/6)の記事で「同じ-19%でも理由は正反対」という話を書きましたが、今日は逆に理由が同じで方向だけが逆でした。上げた4社はガイダンスを引き上げ、下げた1社はガイダンスが減収。実績のBeat/Missより見通しのほうが効く、という構図が2日続けて確認できたことになります。
→ 僕のルール:決算の速報を見たら、EPSと売上のBeat/Missより先に「次の四半期・通期の見通しが上がったか下がったか」を探す。実績が良くても見通しが下がっていれば買われない前提で見る。
セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」
今日は11業種の完全な内訳が取れませんでした。 いつも使っているソースが取得できず、代わりに出てきたデータは日付が1日ズレた8月6日のものでした(SPYの終値が768.56となっていて、これは前日の値です)。日付が合わないデータでセクターを語るのは危険なので、今日は使いません。
代わりに、確実に分かっている数字だけで判断します。
- ナスダック+1.30% > ラッセル2000 +1.10% > ダウ+0.28%
- 半導体ETF(SOXX)+2.02%
金利が下がると得をする順(ハイテク・小型 → 大型の伝統企業)に並んでいるので、「金利低下でグロース優位」という構図とは矛盾しません。ただし業種別の裏付けがないので、そう見える、以上のことは言わないでおきます。
Mag7(超大型テック7社)の動き
・テスラ +2.83%($328.58)7社で最も強い ・エヌビディア +2.27%($223.96)半導体全体の上げとほぼ同じ ・アマゾン +0.82%($274.48) ・メタ +0.37%($592.10) ・アップル +0.29%($313.33) ・マイクロソフト +0.03%($499.99)ほぼ動かず ・アルファベット(グーグル) -0.96%($354.30)7社で唯一の下落
指数は最高値でも、7社の中身はバラバラです。テスラとエヌビディアが2%台で引っ張った一方、マイクロソフトはほぼ動かず、アルファベットは下げています。「ナスダックが+1.30%だからハイテクが全面高」ではありません。
半導体も同じで、SOXXは+2.02%と強かったのに、AMDは-1.21%と逆行しています。インテル+1.84%、ブロードコム+1.71%。週間で見るとSOXXは+7%超という強さですが、これは週の前半に作られたもので、今日1日の話ではありません。
個別株で目立った動き
上の「ポイント③」で挙げた5社が、そのまま今日の主役です。数字だけ並べ直します。
| 銘柄 | 終値 | 変化率 | 材料 | |---|---|---|---| | Atlassian(TEAM) | $149.07 | +35.31% | 決算Beat+次期見通し上振れ | | Twilio(TWLO) | $241.28 | +24.89% | 通期成長率を14-15%→18-18.5%へ引き上げ | | Airbnb(ABNB) | $178.07 | +17.43% | 通期成長率を上方修正 | | Cloudflare(NET) | $300.27 | +5.57% | 通期売上を上方修正 | | The Trade Desk(TTD) | $13.80 | -21.90% | 初の減収見通し、52週安値 |
ここで一つ、自分向けの注意書きを残しておきます。 TTDについて、今日ネットで見かけた記事の多くは「-28%」「-27%」と書いていました。でも終値で計算すると**-21.90%**です。この差の正体は、ザラ場(取引時間中)につけた安値でした。TTDは一時$12.83まで下げていて、前日終値$17.67から計算すると-27.4%。記事はその瞬間の数字を見出しにしていたわけです。
同じことが上げた側でも起きていて、Atlassianは「+37.4%」「+26%」、Cloudflareは「+16%」「+18%」といった数字が混在していました。これらは寄り付き前・取引時間中・時間外の、それぞれ別の瞬間を切り取ったものです。上の表は全部、取引終了時点(現地16:00)の終値で取り直しています。
数字そのものが嘘なわけではなく、どの瞬間を切り取ったかが違うだけ。でも記録として残すなら、毎日同じ時点(終値)で揃えないと比較ができなくなります。
マクロ環境(大きな経済の流れ)
・米2年国債利回り 4.193%(-0.05ポイント前後)7月中旬以来の低い水準 ・米10年国債利回り 4.639%(-0.02〜0.03ポイント)ザラ場安値は4.60% ・10年-2年の差 約0.446ポイント(前日から+0.02〜0.03ポイント広がる) ・ドル円 157.78円(前日比 -0.67円の円高)ザラ場では一時156.68円まで円高が進んだ ・ドル指数(DXY) 99.48〜99.60(-0.4〜0.5%) ・金 約4,400ドル(+100ドル超) ・WTI原油 約77.5〜78.1ドル(小幅高)
※債券利回りは情報源によって末尾に0.01ポイント前後の差があります(10年債は4.639〜4.647%、2年債は4.193〜4.199%)。以下の議論に関わる「どちらが大きく動いたか」の結論は、どの情報源で計算しても変わりません。
今日いちばん面白かったのは、反応の大きさの順番です。 短期の金利と金は大きく動いたのに、10年債はほとんど動きませんでした。
- 2年債(これから2年のFRBの動きを映す)→ 0.05ポイント前後の低下
- 金 → 100ドル超の上昇
- ドル円 → 発表直後に158.39円から156.68円まで1.7円を超える円高。ただしそこから戻して、引けは157.78円(前日比-0.67円)
- 10年債(もっと先の景気と物価を映す)→ 0.02〜0.03ポイントだけ低下
ドル円の動き方が、この日の性格をよく表しています。発表の瞬間は1.7円を超える円高が走ったのに、引けまでに6割ほど戻してしまった。最初の反射的な反応は大きくても、それが最後まで残らなかったわけです。10年債が終わってみればほとんど動いていなかったのも、同じ現象の別の見え方だと思います。
つまり市場は「FRBが9月に利上げしないだろう」という部分だけを書き換えて、「この先の景気や物価がどうなるか」はほとんど変えなかった。前回の仮説②が否定されたのは、まさにこの構造のせいでした。
そしてもう一つのねじれが金です。株は「利上げが避けられそう」という理由で買われました。金は普通、景気が悪くなるときや金利が下がるときに買われます。同じ雇用統計を見て、株は「助かった」、金は「経済が弱っている」と、別々の受け取り方をしていることになります。どちらが正しいかは今日の時点では分かりません。
経済指標の結果(7月雇用統計、8月7日発表)
| 項目 | 実績 | 予想 | 備考 | |---|---|---|---| | 非農業部門雇用者数 | -23,000人 | +80,000人 | 予想外の減少 | | 5月・6月の改定 | 合計-103,000人 | — | 下方修正 | | 失業率 | 4.1% | 4.2% | 6月4.2%から低下(労働力人口減が主因) | | 労働参加率 | 61.4% | — | 5月61.8%から低下(歴史的位置づけは報道間で不一致) | | 労働力人口 | -264,000人 | — | 失業率低下の主因 | | 平均時給(前年比) | +3.2% | +3.5% | 6月分は3.5%→3.4%へ下方修正 |
この結果を受けて、CME FedWatch(金融政策の織り込みを見るツール)での9月16日会合の見方はこう変わりました。
- 据え置き: 43〜45% → 56〜60%
- 利上げ: 55〜57% → 42〜44%
一日で逆転しています。ただし全員が同じ見方ではありません。バンク・オブ・アメリカは6月時点から「9月・10月・12月の3回で0.25%ずつ、合計0.75%の利上げ」という強気の予想を出していて、CEOは8月5日にもこの見方を維持すると発言しています。市場の織り込みと真っ向から食い違っている状態です。
原油は中東情勢が下支えしています。イランがホルムズ海峡近くのケシュム島付近で攻撃を実施したと発表していて、これは雇用統計とは無関係の別要因です。
なお今日は、雇用統計の一次ソース(アメリカ労働省労働統計局=BLSの公式ページ)に直接アクセスできませんでした。 上の数字はFox Business、NBC News、Washington Times、CBS News など独立した6系統のメディアが同じ値を報じているのを突き合わせて採用したものです。公式PDFで確認できていない点は、記録として残しておきます。
テクニカルで見る今の位置
TradingViewの日足データで、主要な指標の位置を確認します。
・S&P500(SPY):$773.26(+0.61%)。RSI 65.96 → 中立からやや強め(70を超えると買われすぎの目安なので、その手前)。MACD 6.19 がシグナル 2.85 の上にあり、上昇の流れが続いている形 ・ナスダック100(QQQ):$723.03(+1.17%)。RSI 57.15 で中立。MACDもシグナルを上回る ・エヌビディア(NVDA):RSI 64.41、MACD 3.05 > シグナル 0.55 で上昇基調 ・マイクロソフト(MSFT):RSI 78.13 → 買われすぎの水準。株価は今日ほぼ動いていない(+0.03%)のに、指標だけが過熱圏にある ・アップル(AAPL):RSI 47.58 で中立。MACD 0.878 がシグナル 4.06 の下にあり、流れとしてはまだ下向き。今日は+0.29%とほぼ動かず ・テスラ(TSLA):RSI 41.41。MACD -19.76 がシグナル -20.78 に近づいていて、上向きに転換する手前
指数(SPY・QQQ)のテクニカルは、今日のマクロの方向(金利低下=株にプラス)と同じ向きを指していて、矛盾はありません。
ただ、中身は揃っていません。マイクロソフトはRSIが78まで来ているのに株価はほとんど動かず、アップルはMACDが下向きのまま。指数が最高値でも、全部の銘柄が同じ場所にいるわけではない、というのがチャートからも見て取れます。
※テクニカル分析はTradingViewのリアルタイムデータに基づく。投資判断は自己責任で。
全体像:悪い雇用が良いニュースになった日と、その理由の細さ
流れは一本道でした。雇用統計が大幅に下振れ → 9月の利上げ観測が後退 → 短期金利が下がりドルが売られる → 金利が下がると得をするハイテクと小型株が買われる → S&P500が史上最高値。ナスダック+1.30%がダウ+0.28%を上回った並び方も、この筋書きと合っています。
でも、この上昇の根拠は「経済が強いから」ではありません。「経済が弱いおかげで利上げが避けられそうだから」です。しかも中身を見れば、失業率の改善は26.4万人が労働市場から降りた結果で、賃金の伸びも鈍化している。買われている理由と、その理由を作っている現実の方向が、逆を向いています。
こういう相場で僕が意識しているのは、「上がった理由が一本しかないときは、その一本が折れる日を先に確認しておく」ことです。 今日の株高を支えているのはほぼ金利観だけで、業績が良くなったわけでも景気が良くなったわけでもありません。だとすれば、来週水曜(8/12)の消費者物価指数(CPI)が高く出て「やっぱり利上げが要る」となった瞬間に、今日の理由はそのまま消えます。折れる条件がここまではっきりしている日は、逆に判断しやすいとも言えます。
今日の迷い・判断メモ
迷ったポイント: 前回の仮説②(10年債は雇用で動く)を「否定」と書いていいのか迷いました。10年債はザラ場でいったん4.60%まで下がっていて、そこで計算すれば0.06ポイントの低下です。トリガーの0.08ポイントには届かないものの、「まったく動かなかった」わけではありません。しかも同じ日に2年債はしっかり反応している。「雇用に金利は反応した。ただ10年債だけが鈍かった」と書けば、仮説を半分生かせます。
結局どう考えたか: 否定でいい、と判断しました。トリガーは事前に「10年債が0.08ポイント以上」と自分で決めたもので、終値ベースでも安値ベースでも届いていません。後から「ザラ場で見れば惜しかった」と条件をゆるめ始めると、仮説を立てる意味がなくなります。それに今回は、否定されたおかげで「反応したのは2年債だった」という、当初より具体的な発見が出てきました。仮説を守るより、否定してその先を見たほうが得るものが大きいと思いました。
後から振り返って: 現時点では判断は維持します。ただ反省点が一つあって、前回トリガーを作ったとき「10年債」としか書いていませんでした。最初から「2年債と10年債の両方を見て、どちらがより動くか」という形にしていれば、今日の発見はもっと早く、もっとはっきり取れたはずです。次からは金利の仮説は年限を分けて立てます。
もう一つ、恥ずかしい間違いを記録に残します。
迷ったポイント: ドル円の終値をいくらで記録するか。参照した記事に「158円39銭から156円68銭まで下落し、157円78銭で引けた」と書いてあったのですが、自分は最初、156.68円を終値として書いていました。前日が158.45円なので「1.77円の円高、しかも安値引け」という、かなり派手な話として記事に入れかけています。
結局どう考えたか: 数字を確認し直して間違いに気づきました。156.68円はその日いちばん円高になった瞬間の値で、終値は157.78円。前日比では-0.67円です。1.77円と0.67円では、意味がまるで違います。
後から振り返って: この記事の中で、僕はThe Trade Deskについて「メディアの-28%はザラ場安値で、終値は-21.90%だ」と書いています。その同じ間違いを、自分は為替でやっていました。 他人の数字の切り取り方には気づけたのに、自分が読んだ一文の中で高値・安値・終値が並んでいると、目立つ数字のほうを拾ってしまう。しかも今回は、間違えたほうが記事としては派手になる方向でした。そこが一番こわいところで、「話が面白くなる数字が出てきたときほど、どの時点の値か確認する」を今日のルールに追加します。
自分なら何を確認してから動くか
- 数字を見たら、まず「どの瞬間の数字か」を確認する。 今日のTTDのように、記事の「-28%」と終値の「-21.90%」が7ポイントも違うことがあります。自分の記録は終値で統一しているので、拾った数字が終値かザラ場か時間外かを必ず確かめてから書き写します
- 率で出る指標は、分母を確認してから受け取る。 失業率4.1%を「改善」として記録する前に、労働参加率と労働力人口の増減を見る。今回はこれをやったおかげで、見出しと中身が逆だと気づけました
- 「一本足の上昇」は、折れる条件を先に書き出しておく。 今日の上昇の理由は金利観のみ。だとすれば8/12のCPIが唯一の試験になるので、その日までは新しい判断材料が出ない前提で見ます
明日の観測ポイント
「予測」ではなく「仮説+トリガー(こうなれば正しい)+無効条件(こうなれば間違い)」で書きます。次の取引日は週明け8/10(月)です。
① 仮説: 今日の株高の根拠は「利上げが避けられそう」の一点だけで、景気の強さではない トリガー: 8/12(水)の7月CPIが予想を上回って利上げ観測が戻ったとき、主要3指数が揃って下げる → 根拠が金利観の一本だったと確定 無効条件: CPIが上振れしても株が下げない → 金利以外の支え(業績や資金の流入)が効いている → 僕のルール:CPI発表までの数日は、上げても下げても「材料待ちの動き」として扱い、新しい判断は加えない
② 仮説: 雇用のニュースに反応するのは短期金利(2年債)であって、長期金利(10年債)ではない トリガー: 次の雇用系の指標で予想から大きくズレたとき、2年債の変動幅が10年債を上回る状態がもう一度観測される → 今日の構造が偶然ではないと確定 無効条件: 次回、10年債の変動幅が2年債を上回る → 今日はたまたま長期金利が鈍かっただけ → 僕のルール:金利の仮説は今後、必ず「2年債と10年債のどちらが動いたか」の形で立てる。「金利が動いた/動かない」の一括りでは何も分からないと今日わかったので
③ 仮説: 決算での明暗は、実績のBeat/Missではなく通期ガイダンスの上下で決まっている トリガー: 来週の決算で「実績はBeatなのにガイダンス据え置き・下方修正で下落」または「実績はMissでもガイダンス上方修正で上昇」がもう1件出る → 8/6・8/7で見た構図が続いていると確定 無効条件: 実績のBeat/Missと株価の方向が一致する日が続く → 8月前半のこの構図は決算シーズン特有の一時的なもの → 僕のルール:決算銘柄は発表直後の株価に反応せず、ガイダンスの数字を確認してから記録する
週明けこの仮説がどうなったか、また振り返ります。気になることがあればコメントで教えてください。
今日の3語メモ
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「分母が26.4万人減っただけ」:失業率は4.2%→4.1%に下がったが、就職が増えたのではなく働く意思のある人が26.4万人減った結果。率で発表される指標は、分子と分母のどちらが動いたかを分けて見る
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「10.3万人ズレても10年債は0.02ポイント」:雇用が予想から10.3万人外れたのに、動いたのは2年債(0.05ポイント以上)で10年債はほぼ動かず。雇用のニュースが効くのは短期金利のほうだった
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「-28%は終値じゃない」:The Trade Deskの下落率は、記事の「-28%」がザラ場安値、終値では-21.90%。記録に残す数字は毎日同じ時点(終値)で揃える
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Jiyonは「AIで相場をどう読むか」の試行錯誤の記録です。 事業や個人資産にAIをどう取り込むかを体系で学びたい方は、TSUMUGU(Hiro)のメルマガをどうぞ。 → https://be-sunao.com/tsumugu/
この記事はjiyon(@jiyon_kizuku)の相場振り返りシリーズです。 投資判断は自己責任でお願いします。データは2026年8月7日時点のものです。11業種別の騰落、CNN Fear & Greed指数の確定値、10年期待インフレ率は取得できなかったため記載していません。雇用統計の数値はBLS公式ページに到達できず、独立した複数メディアの一致をもって採用しています。
