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ダウ-1,153ptの3割はキャタピラー1社、その理由は格下げ1本だった|7月29日 米国株分析

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ダウ-1,153ptの3割はキャタピラー1社、その理由は格下げ1本だった|7月29日 米国株分析

FOMC(アメリカの金融政策を決める会議)は、金利を動かさなかった。それなのにダウは-1,153.18ドル安、-2.19%。2025年4月以来の下落率です。

でも、この下げ幅の中身を開けたら、ぜんぜん違うものが入っていました。 ダウ30銘柄のうち、キャタピラー(建設機械の会社)1社が下げ幅の約3割を作っていて、ゴールドマン・サックスを足した2社で56〜57%。そしてキャタピラーが-6.91%も下げた理由は、FOMCでも中東でもなく、Baird証券が出した格下げレポート1本でした。

さらに一歩引くと、今日は「下げの理由」と「下げ幅の理由」がまったく別物だった日です。下げた理由は3つ(FOMC・イラン・半導体)ちゃんとある。でも-2.19%という大きさを作ったのは、ダウという指数の計算方法と、たまたま高株価の銘柄に格下げが当たった偶然のほう。ここを混ぜると、相場のサイズ感を読み間違えます。

前回の仮説チェック

昨日(7/28)の記事で立てた3つの仮説を、今日のデータで答え合わせします。今日は3つとも「外れた」というより「問いの立て方がズレていた」形でした。

① 仮説: 昨日のダウ+537ポイントは「AIから逃げた資金の一時的な受け皿」であって、景気の強さを買ったものではない トリガー: FOMC後にヘルスケア・生活必需品が下げてハイテクが戻る → 一時避難だったと確定 無効条件: FOMC後もディフェンシブが買われ続ける → 資金の配置そのものが変わった 結果: ⏳ ねじれ。ヘルスケア(XLV)は-0.61%で下げたのに、生活必需品(XLP)は+0.34%で上がった。そしてハイテク(XLK)は-2.64%で戻らなかった。トリガーも無効条件も、どちらも完全には成立していません 学び: 「一時避難だったのか、配置が変わったのか」という二択で問いを立てたけれど、実際の答えは二択の外にありました。昨日の+537ptそのものが、今日の-1,153ptで2倍以上打ち消された。上げの正体を議論する前に、上げが消えたわけです。二択の問いは、答えが二択の外にあるとき空振りする——これが今日いちばん大きい反省点です。

② 仮説: FOMCの争点が「利下げ」から「利上げ」に移っている以上、据え置きが出るだけでも株にはプラス材料になりうる トリガー: 据え置き決定でS&P500が+1%以上 → 市場は利上げを本気で警戒していた 無効条件: 据え置きでほぼ無反応 → 32〜38%という確率は形だけだった 結果: ❌ 否定。据え置きは出たのに、S&P500は**-1.52%。無反応どころか大きく下げました 学び: 僕は「結果」だけを見て「中身」を見ていませんでした。今日の採決は9対3**で、ハマック(クリーブランド連銀)・カシュカリ(ミネアポリス連銀)・ローガン(ダラス連銀)の3人が揃って「利上げすべき」と反対票を投じています。同じ方向に3票の反対が出たのは2016年9月以来。全員一致の据え置きと、3票反対の据え置きは、結論が同じでも別物でした。昨日の自分は「据え置きか利上げか」までは更新できていたけれど、「据え置きの中身」という一段下まで見る発想がなかった。

③ 仮説: SKハイニックスが過去最高益で売られたのは「期待値」の調整であって「需要」の否定ではない。なら、需要側にお金を出す企業の決算では逆の反応が出る トリガー: マイクロソフト/メタが設備投資を引き上げても株価がプラス → 需要は疑われていない 無効条件: 設備投資引き上げで下落 → 需要そのものが疑われ始めている 結果: ⏳ 分裂。マイクロソフトは時間外で**+8.13%、メタは-9.64%。同じ日の同じ引け後に、真逆に分かれました 学び: これは仮説の答えではなく、仮説の立て方が的を外していました。僕は「設備投資を引き上げても」を前提条件として固定して、その上で株価がどうなるかを見ようとした。でも市場が見ていたのは、まさにその前提部分——「引き上げると言うのか、言わないのか」そのもの**でした。メタは通期の設備投資計画の下限を引き上げて-9.64%、マイクロソフトは金額を示さず「据え置き」と受け取られて+8.13%。昨日の3語メモに「自分の仮説が外れる前に、仮説の前提のほうが古くなることがある」と書いたのですが、今日は2日連続で同じことが起きました。

主要指数

・S&P500 7,316.15(-112.63 / -1.52%) ・Nasdaq総合 24,442.94(-433.97 / -1.74%) ・NYダウ 51,594.14(-1,153.18 / -2.19%) ・ラッセル2000 2,906.44(-47.36 / -1.60%) ・VIX(恐怖指数) 20.66(+2.45 / +13.45%)

今日「調整局面入り」と報じられたのはナスダック100(ナスダックの大型100社を集めた指数)のほうです。6月の高値から10%を超えて下落しました。10%超の下落は一般に「調整局面」と呼ばれる区切りです。

一方でナスダック総合は、6月1日の史上最高値27,086.81から-9.76%。10%まであと0.24ポイント分のところで止まっています。同じ「ナスダック」でも、区切りを越えたのは100だけ。昨日も総合-0.22%とナスダック100-0.98%で下げ幅に4.45倍の差がついていたので、この2つを分けて見る意味が2日続けて出ました

VIX(相場の警戒度を数字にしたもの。高いほど不安が強い)は18.21から20.66へ+13.45%。20を超えたのは久しぶりですが、パニックと呼ばれる水準(30台)にはまだ距離があります。CNNのFear & Greed指数(市場の感情を0〜100で表す指標)は32で「Fear(恐怖)」寄り。

S&P500の中では下落した銘柄が上昇した銘柄を1.8対1で上回りました。出来高は約177億株で、過去20営業日平均の173億株からわずかに増えただけ。「みんなが投げ売りした」というより「全体的にじりじり売られた」形です。

※Fear & Greed指数はCNN公式サイトに直接アクセスできず(法的理由による応答拒否)、非公式の集計サイト経由の値です。参考値として扱ってください。

相場を動かした3つのポイント

① ダウ-1,153ptの56%は、たった2社が作っていた

まず、ダウという指数の作り方の話から。 ダウ平均は「株価をそのまま足して割る」計算方法(株価加重平均)です。S&P500のような「会社の大きさで重みを付ける」方法とは違います。だから株価が高い銘柄の値動きが、指数に不釣り合いなほど大きく効きます。会社の規模ではなく、株価の絶対額で影響力が決まる仕組みです。

今日の下げ幅を、この仕組みで分解してみました。

・キャタピラー(CAT) $840.85 → $782.71(-$58.14 / -6.91%) ・ゴールドマン・サックス(GS) $1,033.34 → $980.75(-$52.59 / -5.09%) ・JPモルガン(JPM) $357.31 → $344.71(-$12.60 / -3.53%) ・シャーウィン・ウィリアムズ(SHW) $354.27 → $343.88(-$10.39 / -2.93%)

30銘柄の株価の変化額を全部合計すると-$198.21。そのうちキャタピラー1社で-$58.14、つまり約29〜30%。ゴールドマンを足した2社で**56〜57%**です。ポイントに換算すると、キャタピラー1社だけで約-338pt。

そしてキャタピラーが下げた理由が、拍子抜けするほど単純でした。 Baird証券が投資判断を「Outperform(買い推奨)→ Neutral(中立)」に引き下げ、目標株価を$1,200から$900へ25%引き下げた。この格下げレポート1本です。FOMCとも中東とも半導体とも、何の関係もありません。

つまり「ダウが2025年4月以来の下落率」というニュースの見出しの3割は、証券会社1社が出したレポートが作っていたことになります。

なお、僕が最初に見つけた海外記事は「CATとGSの2社で下げ幅の72%」と書いていましたが、その記事の下げ幅が851.54ptで確定値の-1,153.18ptと合っていなかったので使いませんでした。別の記事の「55%」という数字は、自分で計算した55.9%とほぼ一致したので、こちらは信頼できると判断しています。

僕のルール:ダウが大きく動いた日は、指数の%を見る前に、株価の高い数銘柄の「ドルでの変化額」を見る。指数は「平均」の顔をして「一部」を見せてくることがあります。

② 金利は+6bp上がった。でもその中身は、1bpも残さず「期待インフレ」だった

FOMCがタカ派(金利を上げたがる姿勢)に見えた日なので、普通なら金利上昇は「利上げを警戒したから」と読みます。でも債券市場の中身を開けたら、その形をしていませんでした。

・2年債利回り 4.26% → 4.22%(-4bp) ・10年債利回り 4.61% → 4.67%(+6bp) ・30年債利回り 5.09% → 5.20%(+11bp)

bp(ベーシスポイント)は0.01%のこと。ここで変なのは、短い方(2年)が下がって、長い方(30年)が上がっている点です。利上げを本気で心配するなら、真っ先に上がるのは政策金利に近い2年債のはず。逆になっています。

さらに10年債の+6bpを分解しました。10年債の利回りは、ざっくり「実質金利(お金の本当の値段)」+「期待インフレ率(これから物価がどれだけ上がると見ているか)」に分けられます。期待インフレ率はBEIという指標で毎日見られます。

・10年債(名目) 4.61% → 4.67%(+6bp) ・10年BEI(期待インフレ率) 2.20% → 2.26%(+6bp) ・差し引きの実質金利 2.41% → 2.41%(±0bp)

金利が上がった分は、1bpも残さず期待インフレの上昇で説明できてしまいました。 実質金利は0.01%も動いていない。これは「景気が強いから金利が上がった」でも「利上げを警戒して金利が上がった」でもなく、「物価が上がりそうだから金利が上がった」という形です。

では何が物価警戒を作ったのか。原油です。WTI原油が+6.6%($84.46)、Brent原油が+7.9%($90.74)。イラン革命防衛隊が中東駐留の米軍に弾道ミサイルを撃ち(アメリカ側は全弾迎撃したと発表)、トランプ大統領が報復を表明、米国とサウジアラビアがイラク国内のイラン系民兵を攻撃した——この流れです。

つまり**「FOMCの日」と呼ばれた日の金利を動かしていたのは、FOMCではなく中東**でした。

ただし正直に書くと、ここに1つ噛み合わない数字が残っています。CME FedWatch(市場が次の金融政策をどう見ているかの指標)では、9月16日の会合での利上げ確率が57%超に跳ね上がったと報じられています。前日は「9月利下げ」の確率が54.4%だったので、大転換です。でもそれが本当なら、2年債は-4bpも下がらないはず。どちらかの数字が実勢を映していないと思っていますが、今日の時点では判定できませんでした。

僕のルール:金利が上がった日は、名目から期待インフレを引いて実質金利を確認する。実質が動いていなければ、震源は金融政策ではなく物価側。

③ 引け後の決算3社は、全部「売上は予想超え」。分かれたのは利益だった

昨日の記事で「決算は良かったかではなく、予想とどれだけズレたかで動く」と書きました。今日はそこから一段進んで、**「予想とのズレを、売上で見るか利益で見るか」**が問われました。

引け後に発表した3社を並べます。

| 会社 | 売上 vs 予想 | EPS(1株利益)vs 予想 | 時間外の反応 | |---|---|---|---| | マイクロソフト | +2.7%($90.01B) | +11.8%($4.74 vs $4.24) | +8.13% | | メタ | +1.0%($60.8B) | -13.0%($6.18 vs $7.10) | -9.64% | | クアルコム | +2.8%($9.947B) | -0.9%($2.21 vs $2.23) | -7.10% |

3社とも売上は予想を上回っています。 それでも反応は+8%から-9.6%まで散らばりました。

**マイクロソフト(+8.13%)**は、Azure(クラウドサービス)の売上が前年比+43%。自社が示していた見通しは39〜40%だったので、自分の宣言を超えてきた形です。設備投資は当四半期$35.8B(前年同期$17.1Bから約2倍)と激増しているのに、それでも株価は上がりました。報道が上昇の理由として挙げていたのは「今後の設備投資の金額を示さず、据え置いたと受け取られたこと」。

**メタ(-9.64%)**は逆でした。2026年の設備投資計画の下限を$125Bから$130Bへ引き上げ(レンジは$130〜145B)。そしてEPSが予想を13%下回りました。売上は+1%上回っているのに利益が落ちた理由を分解すると、こうなります。

・総費用 $42.026B(前年比+55%) ・Reality Labs(VR/メタバース部門)の営業損失 -$4.619B(この部門の売上はわずか$431M) ・減価償却費 上半期で$12.355B(前年同期$8.242B、+50%) ・法務関連費用 $2.4B ・リストラ費用 $1.18B ・実効税率 11% → 16%

売上が+1%増えるあいだに、費用が+55%増えている。純利益は$15.85Bで前年比-14%です。特にReality Labsは、$431Mしか売上がない部門で$4.619Bの営業損失を出しています。売上の10倍以上を失っている計算です。

**クアルコム(-7.10%)**も同じ構図でした。次の四半期の売上見通しは市場予想を上回ったのに、EPS見通しの中央値$2.15が予想$2.35を大きく下回った。スマホ向け事業の売上が前年比-20%で、CEOが「次のiPhoneでの自社部品のシェアが、従来想定の20%を大きく下回る」と明言しています。

3社に共通していたのは、売上を見た人は全員満足できたのに、利益を見た人が売ったということ。そしてマイクロソフトとメタの差を最後に決めたのは、「これから使う金額を増やすと言ったかどうか」でした。

僕のルール:決算を「良い/悪い」で分類しない。「売上」「利益」「今後の支出計画」の3列に分けてから株価の反応を見る。今日は3列目が方向を決めました。

セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」

11あるセクターのうち、プラスは2つだけでした。

・エネルギー(XLE) +1.88% ・生活必需品(XLP) +0.34% ・不動産(XLRE) -0.11% ・通信サービス(XLC) -0.15% ・ヘルスケア(XLV) -0.61% ・一般消費財(XLY) -0.77% ・素材(XLB) -1.15% ・公益(XLU) -1.34% ・金融(XLF) -1.60% ・テクノロジー(XLK) -2.64% ・資本財(XLI) -3.19%

エネルギーが唯一しっかり上がったのは原油+6.6%と素直に噛み合います。一番売られた資本財(建設機械や航空機など、設備投資に関わる業種)は、まさにキャタピラーが属するセクター。ボーイング(-3.41%)、ハネウェル(-2.40%)も下げていて、この日はダウの下げも資本財が中心でした。

ここで昨日との比較が効きます。 昨日はナスダック総合が-0.22%、ナスダック100が-0.98%で、下げ幅の差が4.45倍もありました。「大型ハイテクだけが売られている」という局所的な形です。今日は総合が-1.74%、QQQ(ナスダック100連動)が-2.04%で、差は1.17倍まで縮みました。

売りが「大型ハイテク限定」から「全体」に広がった一日、というのがセクターと指数の両方から確認できます。

半導体はさらに厳しく、SOX(フィラデルフィア半導体指数)が-5.33%(11,035.7 → 10,447.5)。震源は昨日と同じSKハイニックスで、営業利益が前年比+557%という記録的な数字を出しながら市場予想(64兆ウォン)に届かなかった件です。韓国のKOSPI指数は取引時間中に-8.17%まで下げてサーキットブレーカー(相場が急落したときに取引を一時停止する仕組み。韓国では-8%・-15%・-20%の3段階で発動する)が作動し、終値は-5.98%でした。

Mag7(超大型テック7社)の動き

・GOOGL(アルファベット) $336.71(+0.90%) ・AAPL(アップル) $338.19(-0.56%) ・MSFT(マイクロソフト) $390.54(-0.71%) ・META(メタ) $585.61(-1.3%) ・AMZN(アマゾン) $226.65(-1.8%) ・TSLA(テスラ) $298.32(-2.97%) ・NVDA(エヌビディア) $190.01(-3.55%)

プラスはアルファベット1社だけ。マイクロソフトとメタのこの終値は決算発表前の数字なので、決算の中身はまだ入っていません(時間外の動きはポイント③参照)。

アップルが-0.56%で下げ幅最小でした。この銘柄は7月24日から3営業日連続で上げてきていて(+3.53% → +1.17% → +0.94%)、市場全体が-1.5%以上下げた今日も-0.56%で踏みとどまっています。上げ続けた後に全面安が来ても崩れない、という別の相場を歩いている状態です。

個別株で目立った動き

上がった銘柄

・マンハッタン・アソシエイツ(MANH) +21.32%($168.17 → $204.02)— 決算が予想を上回り、通期見通しも引き上げ。受注残高が3四半期連続で最高 ・ガーミン(GRMN) +16〜19% — 決算が予想超え(EPS $2.81 vs 予想$2.29〜2.30)。フィットネス事業が+25% ・セールスフォース(CRM) +3.79% — 全面安の中でダウ構成銘柄の上昇率首位 ・シェブロン(CVX) +2.28% — 原油高の直接の受け皿

下がった銘柄

・マイクロン(MU) -9.94%($820.53 → $739.00)— メモリ半導体売りの中心 ・サンディスク(SNDK) -7.32%($1,096.10 → $1,015.89)— 前日7/28にも-14%下げていて、2日で約-20% ・キャタピラー(CAT) -6.91% — 格下げ ・AMD -5.51%TSM -4.50%ブロードコム(AVGO) -2.78%

面白いのはサンディスクです。7月28日に-14%下げた翌日に、さらに-7.32%。**2日で約-20%**です。

でも中身が違います。1日目の下げには決算という理由がありました(SKハイニックスの予想未達)。それに対して2日目の今日は、この会社について新しい悪材料が出ていません。売りが次の売りを呼ぶ形に入っている状態です。こうなると材料を探しても答えが出ないので、探すのをやめるしかない。「理由がある下げ」と「理由がなくなった後の下げ」を分ける練習になりました。

テクニカルで見る今の位置

指数は大きく下げましたが、テクニカル指標は「投げ売り」の形になっていません。

・S&P500(SPY) $729.46(-1.54%)/RSI 38.63/MACDはシグナル線を下回る(下向き) ・Nasdaq(QQQ) $661.73(-2.04%)/RSI 32.40/MACD下降が拡大 ・エヌビディア(NVDA) $190.01(-3.55%)/RSI 37.96 ・アップル(AAPL) $338.19(-0.56%)/RSI 66.78/MACDは上向き継続/短期移動平均から+28.82% ・マイクロソフト(MSFT) $390.54(-0.71%)/RSI 50.02/MACDが上抜けた直後 ・テスラ(TSLA) $298.32(-2.97%)/RSI 25.42/-2σに接近

RSIは「買われすぎ・売られすぎ」を0〜100で見る指標で、一般に30以下が売られすぎ、70以上が買われすぎの目安です。

注目したいのは、-2.19%も下げた日なのにRSIが30台後半で止まっていること。 SPYが38.63、QQQが32.40。「売られすぎ」の30を割っていません。つまり数字の大きさに比べて、投げ売りらしい形にはなっていない。

例外が2つあります。テスラはRSI 25.42で明確に売られすぎ圏、ボリンジャーバンド(値動きの幅を統計的に示す線)の-2σにも接近していて、Mag7の中で1社だけ違うフェーズにいます。逆にアップルはRSI 66.78・MACD上向き継続・短期移動平均から+28.82%上に乖離という、この相場でひとりだけ強い位置。

チャートを見て思ったのは、「相場全体が壊れた形」と「一部の銘柄が壊れた形」が同じ画面に同居しているということ。指数だけ見ていると全部が同じ方向に見えるけど、中身は全然揃っていません。

※テクニカル分析はTradingViewのリアルタイムデータに基づく。投資判断は自己責任で。

マクロ環境(大きな経済の流れ)

・米10年債利回り 4.67%(+6bp)/2年債 4.22%(-4bp)/30年債 5.20%(+11bp) ・10年BEI(期待インフレ率) 2.26%(+6bp)→ 実質金利は2.41%で不変 ・ドル円 163.67円(-0.10%) ・DXY(ドル指数) 101.30(-0.12%) ・WTI原油 $84.46(+6.6%) ・Brent原油 $90.74(+7.9%) ・金(ゴールド) $4,082.05(+1.07%) ・銀 $58.438(+1.58%)

ここで注目したいのは、金利が+6bp上がったのに、ドルがほとんど動いていないことです。DXY(ドルの総合的な強さを表す指数)は-0.12%、ドル円も-0.10%。どちらも「動かなかった」と言っていい水準です。

普通は金利が上がる国の通貨は買われます。それが起きなかった理由は、ポイント②とつながっています。為替が反応するのは実質金利のほうで、名目金利が上がっても中身が期待インフレなら、実質は動かない=通貨を動かす力にならない。今日はまさにそれでした。実質金利は2.41%から1bpも動いていないので、ドルも動かなかった。

一方で金(+1.07%)と銀(+1.58%)は上がっています。物価が心配なときに買われるのがこの2つなので、こちらは期待インフレの上昇と素直に噛み合っています。「金利上昇」「ドル横ばい」「金・銀高」の3つが、全部同じ1つの原因(物価警戒)から説明できる。バラバラに見えた数字が1本につながった感じがして、今日いちばん納得した部分でした。

経済指標(7/29発表)

・貿易収支(財・6月分) -1,015億ドル(予想-980億ドル / 前回-1,065億ドル) ・MBA住宅ローン申請指数(週次) 前週比-6.4%(前回+1.9%)

FOMCの声明では、景気を「堅調なペースで拡大」、設備投資と生産性の伸びを「力強い」と評価しつつ、インフレは「2%目標に対して依然として高水準」で、その要因にエネルギーなどの供給ショックを挙げています。そして中東紛争が経済の不確実性を高めていると明記されました。

CME FedWatchでは9月16日会合の利上げ確率が57%超。前日時点では「9月に利下げ」の確率が54.4%だったので、市場の見方が1日でひっくり返った形です。ただしポイント②で書いたとおり、この数字は2年債の動きと噛み合っていません。

全体像:震源が3つ別々にあった日

今日は「FOMCの日」として語られる日でしたが、相場を動かした震源は3つ別々にありました。

第一にイラン。 米軍への弾道ミサイル攻撃と報復で原油が+6.6%(Brentは+7.9%で$90台へ)。これがエネルギーを11セクター唯一の明確なプラスにし、同時に10年債利回りを+6bp押し上げました。ただし押し上げた分は期待インフレの+6bpとぴったり同額で、実質金利は動いていない。金利上昇を作ったのはFOMCではなく中東でした。

第二に半導体。 SKハイニックスが+557%の利益を出して予想未達だった件が2日目に入り、SOXが-5.33%、マイクロンが-9.94%、サンディスクが-7.32%。アジア発の売りがそのまま連鎖しました。

第三に、指数の見た目に一番効いたダウの構造。 -1,153ptのうち56〜57%はキャタピラーとゴールドマンの2社が作り、キャタピラーの理由は格下げレポート1本でした。

こういう相場で僕が意識しているのは、「下げの理由」と「下げ幅の理由」を分けることです。今日の下げの理由は、上の3つでちゃんと説明できます。でも-2.19%という「大きさ」を作ったのは、株価をそのまま足すというダウの計算方法と、その中でたまたま高株価の銘柄に格下げが当たった偶然のほう。ここを混ぜると「2025年4月以来の危機が来た」という間違ったサイズ感を持ってしまいます。

テクニカルもそれを裏づけていて、RSIは30〜40台で売られすぎに届いていない。11セクター中9つがマイナスで下落銘柄が1.8対1という「広さ」は本物だけど、「深さ」はまだそこまでではない。広さと深さは別の話だと、今日ようやく分けて考えられるようになりました。

今日の迷い・判断メモ

迷ったポイント:キャタピラーの寄与を計算しようとしたとき、Dow Divisor(ダウの計算に使う割り算の数字)の公式な値がどうしても確定できませんでした。Wikipediaの0.168248を使うと計算結果が実際の下げ幅と2.16%ずれる。別の値も見つかったけれど出典が怪しいサイトでした。ここで「まあ2%の誤差なら書いてしまおう」と一瞬思いました。

結局どう考えたか:割り算の数字が分からなくても答えが出る形に、問いを変えることにしました。「何ポイント押し下げたか」を出すにはDivisorが必要ですが、「下げ全体の何%を占めたか」なら、Divisorが分子と分母の両方に出てくるので約分されて消える。実際に2通りの分母で計算したら、キャタピラーは29.3%と30.0%、2社合計は55.9%と57.1%。Divisorの2.16%の不確かさでは、結論はまったく動かないと確認できました。

後から振り返って:これは今日いちばん役に立った考え方かもしれません。確定できない数字があるとき、その数字を使わずに済む問いの立て方はないかを先に探す。「分からないから諦める」と「分からないけど適当に埋める」の間に、第三の道があった。しかも自分の55.9%が、別の海外記事が独立に出していた「55%」と噛み合ったので、答え合わせもできました。この手順は今後も使います。

もう1つ、ヒヤッとした話:この記事の「個別株で目立った動き」に、僕は最初バイオラッド(-15.7%)とコースター・グループ(-14.7%)を「今日の急落銘柄」として書いていました。「Stock Market Today July 29」というタイトルの記事から拾った数字です。

でも日付付きの履歴表で1銘柄ずつ突き合わせたら、両方とも今日の話じゃなかった。コースター・グループの-14%は7月28日の決算反応で、7/29単日は-1.65%。バイオラッドは7月29日時点でまだ決算を発表していません(7/29の値動きは-1.13%)。サンディスクの「-14%」も7/28の下げで、7/29は-7.32%でした。しかもこの記事を書く前に、セクター別の騰落率でも同じことが起きていて、7/29の日付が付いた記事に7/28のデータが載っていたのを見つけて弾いていました。同じ罠を1日に2回踏みかけたわけです。

さらに厄介だったのが、「良い数字なのに売られる例が2日続けて出た」という分析を、このコースター・グループを根拠に組み立てていたこと。数字が1つ間違っていただけじゃなく、その数字に乗せた解釈まで丸ごと間違っていた。数字を直せば済む話ではありませんでした。

学んだのは、記事のタイトルに書かれた日付を信じないこと。 「今日の相場」と題した記事が、前日の値動きを載せていることがあります。特に引け後に書かれた記事や、複数の媒体に配信される記事は要注意。手間はかかるけど、銘柄ごとに日付付きの終値を2日分並べて自分で変化率を計算するのが、いちばん早い確認方法でした。

自分なら何を確認してから動くか

具体的な保有銘柄は書きません。手順だけ残します。

  1. 原油が落ち着いたときの10年債の反応を見る。 今日の金利上昇は中身が全部期待インフレでした。なら原油が下がれば金利も戻るはず。もし原油が下がっても金利が4.67%以上に居座るなら、FOMCのタカ派化が遅れて効き始めたということ。ここは原油と金利をセットで見ます。

  2. 2年債とFedWatchのどちらが正しいかを、コアPCE(7/30発表)で確かめる。 9月利上げ確率57%超と2年債-4bpは両立しません。どちらかが実勢を映していない。物価指標が出れば片方が壊れるので、それまで「FOMCがタカ派化した」と決めつけません。

  3. ダウの%を見る前に、株価$500超の銘柄のドル変化額を見る癖をつける。 今日みたいに1社で3割を作る日がある指数だと分かったので、%だけで相場の強弱を判断するのをやめます。

明日の観測ポイント

「予測」ではなく「仮説+トリガー(こうなれば正しい)+無効条件(こうなれば間違い)」で書きます。

① 仮説: 今日の金利上昇は原油由来なので、原油が落ち着けば10年債も戻る(=FOMCのタカ派化は金利に効いていない) トリガー: WTIが$80を割り、10年債が4.60%台に戻る → 震源は原油だったと確定 無効条件: 原油が下がっても10年債が4.67%以上に定着 → FOMC由来の金利上昇が遅れて効き始めている → 僕のルール:原因が2つ考えられるときは、片方だけが消える場面を待つ。両方動いているうちは因果を決めません。

② 仮説: 2年債-4bpとFedWatchの利上げ確率57%超は両立しない。どちらかが実勢を映していない トリガー: コアPCE(6月・予想+0.2%)が予想を上回り、2年債が4.30%超へ跳ねる → FedWatch側が正しく、今日の-4bpは一時的な避難買いだった 無効条件: コアPCEが予想通りで2年債が4.20%台に留まる → 57%という確率が実勢より前のめり → 僕のルール:噛み合わない数字を見つけたら、どちらかを選ばずに「どちらが壊れるか」を待つ。今日の時点で選ぶ必要はありません。

③ 仮説: 「設備投資を増やすと言った企業が売られる」構図は、メタ固有ではなく今の市場のルールになっている トリガー: 以降の決算で、設備投資を引き上げた企業が下落し、据え置いた企業が上昇する → ルールとして成立 無効条件: 設備投資を引き上げても上昇する企業が出る → メタのEPSミス(-13%)固有の話だった → 僕のルール:1社の反応でルールを作らない。同じ構図が3社目で再現するかを確認してから、判断の型に入れます。

この先の経済指標:7/30(木) コアPCE(6月・予想+0.2%)・個人所得支出・新規失業保険申請/8/3(月) ISM製造業PMI/8/7(金) 雇用統計/8/12(水) CPI

明日この仮説がどうなったか、また振り返ります。気になることがあればコメントで教えてください。

今日の3語メモ

  • 「-1,153ptの3割は1社」:キャタピラー1社でダウの下げ幅の約3割、ゴールドマンを足した2社で56〜57%。しかもキャタピラーの理由は格下げレポート1本。ダウは株価をそのまま足す指数だから、株価の高い銘柄が不釣り合いに効く。指数は「平均」の顔をして「一部」を見せることがある

  • 「金利+6bp、実質金利±0bp」:10年債は+6bp上がったけど、期待インフレ率も同じ+6bp。差し引きの実質金利は2.41%から1bpも動いていない。金利が上がった理由は景気でも金融政策でもなく物価(原油+6.6%)だった。同じ原因でドルは動かず(実質が動いていないから)、金・銀は上がった。金利が動いた日は、名目を期待インフレと実質に割って中身を見る

  • 「売上は3社とも予想超え」:マイクロソフト+8.13%、メタ-9.64%、クアルコム-7.10%。全社が売上で予想を上回っていて、分かれたのは利益と「これから使う金額」。決算は「良い/悪い」の1列じゃなく、売上・利益・今後の支出計画の3列に分けて見る


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この記事はjiyon(@jiyon_kizuku)の相場振り返りシリーズです。 投資判断は自己責任でお願いします。データは2026年7月29日時点のものです。

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