AI面接で、AIが自分の判断で質問を足したら。あるいは面接のあとに「この人は採用すべきです」と書いたレポートを会社に渡したら。
それは人がやっても、AIがやっても「職業紹介」に当たる。厚生労働省が、職業紹介事業の業務運営要領(事業者向けの運用ルール)の中で、具体例としてそう書きました。9月14日から適用されています。
今朝(9月28日)、AI面接サービスのPeopleX社がこの改正への対応を発表し、改正の中身が表に出てきました。前回、採用AIは「書かせる」より「判定させる」と書きました。今回の改正は、その判定をどこまで外に任せていいかの線引きです。
週末で海外の公式発表はほとんど動いていません。今日は国内の採用と内製化の話を厚めにします。
前回予告の検証
🔮 加州の職場AI法案2本:9月28日時点でも、署名も拒否もされていない
カリフォルニア州の SB 947 と AB 1883 は、州議会の公式ページの最新記録がまだ「知事へ送付」(SB 947は9月9日、AB 1883は9月10日)のままです。知事府の発表にも出てきません。期限の9月30日まで、あと2日です。
改めて中身を書いておきます。SB 947 は、AIなどの自動で判断する仕組みだけで懲戒や解雇を決めることを認めず、人が裏付けることを求める法案です(施行は2027年7月1日の予定)。AB 1883 は、職場でAIを使って感情を読み取ったり、脳や神経のデータを集めたりする監視ツールを禁止します(違反1件あたり最大500ドル)。
✅ 補助金の6次締切:公式に載っていた(9月29日に訂正)
デジタル化・AI導入補助金2026の5次締切は、明日9月29日(火)17時です。
この記事の初版では「6次の日程は、事務局の公式サイトにまだ載っていない」と書きましたが、誤りでした。スケジュールのページは、枠ごとの表が折りたたまれていて、開かないと日付が見えません。9月29日にブラウザで開いて確かめたところ、通常枠、インボイス枠(2類型)、セキュリティ対策推進枠のどれも、6次の締切は10月30日(金)17時、7次の締切は12月1日(火)17時と載っていました。
✅ Copilotの従量課金:上限の決め方はわかった。単価はまだ
前回、パートナー向けの案内で「11月2日から販売代理店(CSP)経由の新規 Copilot Business は従量課金が既定オン」と紹介しました。その従量課金の仕組みが、Microsoftの管理者向け説明ページ(9月25日更新)で確認できました。
- 使った量は「Copilot Credits」という共通の単位で数える
- 今のところ対象は、Copilotに作業を任せる機能(Cowork)と、それで作ったアプリなど
- 管理画面の「Copilot > Cost management」で、使える人の指定、会社全体と1人ごとの上限、通知を設定できる
1つ気をつけたいのが「Auto-apply new services」という設定です。最初からオンになっていて、あとから追加される新しいエージェントやサービスにも、同じ上限のルールが自動で当てはまります。新しいものは一度確認してから使わせたい会社は、オフにしておくと安心です。
1クレジットいくらか、既定の上限はいくらか(「1人あたり月10ドル」という情報も出回っています)は、公式の本文で確かめられていません(🔮)。
注目ニュース TOP3
① AI面接で「質問を足す」「採用を勧める」は職業紹介に。厚労省が例で示した
✅ 何が起きたか
厚労省の「職業紹介事業の業務運営要領」が9月14日に改正されました。本文には、求職者や求人の情報を選んで渡したり、手を加えて渡したりする行為は、その判断がAIで自動的に行われているかどうかにかかわらず職業紹介の許可が要る、と書かれています。
面接については、次の3つの例が並んでいます。
- 企業に代わって面接するとき、企業があらかじめ決めていない質問をする(答えの意味を確かめる程度を超えるもの)→ 職業紹介に当たる
- 面接を録画・録音して、文字起こしや日付を付けて企業に渡す → 中身を変えていないので当たらない
- 面接の内容を評価して「貴社において採用すべき人材です」のような言葉と一緒に渡す、または渡すかどうかを決める → 当たる
あわせて、実態として企業の代わりに採用候補者を選んでいたり、企業の判断なしに選考のメールを返していたりする場合も、職業紹介に当たると書かれています。
9月28日、AI面接サービス「PeopleX AI面接」を提供するPeopleX社が対応を発表しました。質問は利用企業が事前に決める。深掘りの質問をするかどうかも企業が選ぶ。評価レポートには採用判断に踏み込む言葉を入れない。この2点で「職業紹介には当たらない」と整理しています。
なぜ重要か
これまで「AI面接はどこまでやっていいか」は、サービスごとの解釈でした。今回、国が例を出して線を引きました。
対象になるのは、AI面接の提供会社や採用代行(RPO)のような「間に入る事業者」です。会社が自分の採用のために自分でAIを使う分には、職業紹介にはなりません。
それでも、サービスを選ぶ側の中小企業にとって、この線はそのまま「どこなら安心して任せられるか」の物差しになります。
→ 採用・中小企業への影響
10〜50人規模の会社で、ひとり人事の方がAI面接や採用代行を比べるとき、確認することは3つに絞れます。
- 面接の質問は、自社で決められるか。AIが勝手に質問を足さないか
- 面接後のレポートに「採用すべき」「おすすめ」のような言葉が出てこないか
- 書類選考や選考メールの返信を、自社の判断なしに外部がやっていないか
営業資料ではなく、契約書と実際の管理画面で確かめてください。
→ 個人の実務・副業への影響
採用のサポートを副業で受けている人には、直接かかわる話です。AIに候補者を選ばせて紹介する、合否のおすすめを付けて渡す。こうした動き方は、許可が要る側に入りえます。「記録と整理まではやる、判断は会社がやる」を、最初に契約とテンプレートに書いておくのが安全です。
前回、採用AIの出力は「A/B/C+理由の番号」に絞るのがいい、と書きました。自社の中で使う分にはそれで十分です。ただ、その判定を外部に渡して、外部が合否を決める形にすると話が変わる。今回の改正で、そこがはっきりしました。
② メールもPCもなかった町工場が、Claude Codeで基幹システムを作り直している
✅ 何が起きたか
ビジネス+ITの9月28日の記事によると、大阪の木村石鹸工業が、Claude Code(Anthropic社のAIでプログラムを作るツール)を使って、基幹システムの刷新を社内で進めています。
十数年前まで、社員全員にメールアドレスもPCもなかった会社です。外部に頼むと「約3年、数千万円では収まらない」と言われた刷新を、自分たちでやる道を選びました。
進め方はこうです。
- Google Workspaceにたまった部署間のチャットをAIで分析し、何度も繰り返している業務や、特定の人しかできない仕事を洗い出す
- それをもとに、システムにすべき業務を決めて設計する
- 今のシステムのマニュアルをAIに読ませて、新しいシステムを設計する
- 在庫や出荷の管理など、止まっても影響が小さいところから順に置き換える
木村祥一郎社長が自ら進めていて、マーケティングのチームでも使っているそうです。
なぜ重要か
注目したいのは、最初にやっているのがプログラムを書くことではない点です。チャットの記録から「何度も同じことをしている仕事」を掘り出すところから始めています。
内製化で一番つまずくのは、「何を作るか」が決まらないことです。そこをAIに手伝わせている。この順番は、エンジニアがいない会社ほど真似する価値があります。
→ 採用・中小企業への影響
人事でも、同じ順番がそのまま使えます。
いきなり採用AIを作るのではなく、人事担当のチャットやメール1か月分をAIに読ませて、「毎月同じことを聞かれている」「この人しかわからない」業務を出してもらう。そこから、面接日程の連絡や入社書類の案内のような、失敗しても影響の小さいものを1つ置き換える。
社長が自分でツールを触っている会社ほど、進みが速い。これは記事を読んでいて、いちばん納得したところです。
→ 個人の実務・副業への影響
自分のSlackやメールをAIに読ませて、「繰り返しやっている作業を5つ出して」と頼んでみてください。自動化の候補は、頭で思い浮かべるより、記録から出したほうが外れにくいです。
僕はこれを自分の1週間分のメールでまだ試していません。やってみて、思っていた候補と実際のログのずれを次回以降に報告します。
③ AIが質問を変えるアンケートで、病院の離職率が16.2%から6.7%に
✅ 何が起きたか
ITmedia キーマンズネットの9月28日の記事によると、茨城県の筑波記念病院が、筑波大学発のベンチャー World Life Mapping 社のツールを使い、離職率を2021年度の16.2%から2025年度の6.7%まで下げました。
使ったのは、答えに応じてAIが次の質問を変えるアンケートです。部署ごとの職場の状態を数字にして、改善策を「誰が」「どう動くか」まで出します。実際の施策は、若手職員に上司がふだんから声をかける回数を増やす、といった部署ごとのものでした。「安定した人間関係」のスコアは、2024年度の70点から2025年度は78点に上がっています。
なぜ重要か
採用の相談を受けていても、実は一番効くのは「辞めないこと」です。
この事例で、AIがやったのは聞き方と見える化でした。効いた施策は「上司の声かけ」という、人の行動です。AIは原因を見つける係で、直すのは人。この分担がはっきりしています。
ただし、改善は4年がかりです。ツールだけの効果かどうかは、記事からは切り分けられません(🔮)。
→ 採用・中小企業への影響
10〜50人の会社でも、Googleフォームで集めた声をAIに「部署別・入社年次別」にまとめさせるところまでは、すぐにできます。
大事なのは、結果を「誰が・何を・いつまでに」の行動に落とすところまで決めておくことです。募集を増やす前に、定着の数字を1つ持つ。採用の費用を下げたい会社には、ここから話したほうが早いと思います。
→ 個人の実務・副業への影響
答えに応じて質問を変える聞き取りは、手元のChatGPTやClaudeでも再現できます。「前の答えを踏まえて、次の質問を1つだけ出して」と指示するだけです。お客さんへのヒアリングや、チームの振り返りに使えます。
AIツール・アップデート情報
・OpenAI DevDay 2026:9月29日(火)サンフランシスコで開催。基調講演は日本時間9月30日(水)午前2時から、無料でライブ配信 → 開発者向けの発表の場ですが、ここで出た料金や機能は、あとから中小企業が使うツールの値段に効いてきます。内容は公式の本文を読んでから書きます。
・Microsoft 365 Copilot:従量課金の管理画面の説明が更新(9月25日) → 上の検証で書いたとおりです。Copilotを入れる会社は「Auto-apply new services」を確認してください。
・Hugging Face:6GBのノートPC用GPUで、11億パラメータの言語モデルを学習させた個人の検証記事 → 最大メモリ使用量は4.51GB。ただ、本格的な学習を最後までやると約375日かかる試算です。「手元のPCでもAIの中身を作れる」は夢がありますが、仕事で使う段階ではまだありません。
ツール選びで僕が大事にしているのは、新しいものを入れる前に、任せる範囲を決めることです。今日の①は、その「範囲」を国が決めた話でした。
AIが中小企業の採用・現場をどう変えるか
AIに任せていいのは「記録と整理」、会社に残すのは「何を聞くか」と「採るかどうか」
今日いちばん伝えたいのはここです。AI面接の線引きは、AIを使うかどうかではなく、判断を誰が持つかで決まっていました。これは法律の話である前に、採用の設計の基本でもあります。
木村石鹸の事例も、筑波記念病院の事例も、AIが担当しているのは「洗い出す」「見える化する」までです。決めて動くのは人でした。
ひとり人事の方が今日から試せること
今使っているAI面接や採用代行があれば、上の3つの確認項目を、契約書と管理画面で1つずつ見てください。使っていない場合は、人事のメールやチャット1か月分から「毎月同じこと」を10個出してもらうところから始めてみてください。
そして、デジタル化・AI導入補助金の5次締切は明日9月29日(火)17時です。検討中の会社は、事務局のスケジュールページで最新の状況を確認してください。
個人の副業・実務への影響
「判断は相手に残す」を先に決める
採用に限らず、人の代わりにAIで何かを選ぶ仕事を受けるときは、自分がどこまで判断するかを最初に決めておくと、トラブルになりにくいです。
今日から試せること
自分のメールかSlackの1週間分をAIに読ませて、「繰り返している作業」を5つ出してもらう。そのうち1つだけ、来週までに自動化してみてください。
今日のまとめ:AIに任せるのは「判断の手前」まで
今日の3本は、どれも「AIに何をさせて、何を人が持つか」の話でした。
厚労省は、AI面接でAIが質問を足したり採用を勧めたりすれば職業紹介になる、と線を引きました。木村石鹸はAIに業務を洗い出させ、何を作るかは自分たちで決めています。筑波記念病院は、AIで職場の状態を数字にし、声をかけるのは上司でした。
僕が一番気になったのは①です。前回「採用AIは判定だけ返すほうがいい」と書いたばかりでした。その判定を外に渡した瞬間に、ルールが変わる。ここまで具体的に国が例を出したのは、中小企業にとっては助かる話だと思います。
来週の注目ポイント
① 9月30日、加州の SB 947/AB 1883 は拒否されるか、そのまま成立するか → 今度こそ結論が出ます。10月1日以降に、州の公式ページで最終的な記録を確認します。
② 9月29日の OpenAI DevDay で何が出るか → 開発者向けの新機能や料金は、あとから中小企業の使うツールに効いてきます。公式の本文で確認します。
③ PeopleX以外のAI面接・採用代行は、業務運営要領にどう対応するか → 質問の決め方と評価の出し方を各社が公表すれば、中小企業がサービスを比べる材料になります。
AIは使ってみないとわからない。気になるものがあったら、まず1つだけ触ってみてください。
この記事はHIRO(@hiro_tsumugu)のAIニュースまとめシリーズです。 情報は2026年9月28日時点のものです。
