今日いちばん引っかかったのは、支出の予測でも、新モデルの発表でもありませんでした。
Microsoftが、自社の一部門でClaude Codeのライセンスを解約していたという話です。
AIを最もうまく使えるはずの会社の、実際に開発をしている部門が、使い続けないと判断した。ここから話を始めます。
前回の宿題の答え合わせ
4日ぶりの更新なので、9月4日に「次に見る」と書いた4つから片付けます。
✅ ① 省力化投資補助金 第8回の受付開始日 ── 「9月中旬」が公式本文で取れた
前回は「公募要領本文にも事務局トップにも日付がない。『9月中旬』も一次では確認できなかった」と書きました。今日、事務局サイトを開き直したら、本文に載っていました。
申請ポータルでの受付開始は9月中旬を予定しております
前回取れなかったものが今日は取れています。ここは前進です。
公募期間についても、公式サイトに「第8回公募中 2026年8月18日(火)〜10月中旬(予定)」と明記されています。ただし受付開始・締切とも「中旬」までで、具体的な日付(9月◯日/10月◯日)は今日も本文に書かれていません。支援先に伝えるのは「9月中旬に受付開始予定、10月中旬まで(いずれも公式表記)」までにとどめます。
🔮 ② Claude Codeの週次上限(9月14日施行)── 施行まで6日、公式記載は今日もなし
5日連続で追いかけている件です。今日も同じでした。
code.claude.com/docs/en/rate-limits→ 404- サポートページ「Pro/Maxプランで Claude Code を使う」→ 9月14日の変更に関する記述なし
報道側(ITmedia、窓の杜ほか、いずれも8月29日前後)は「9月13日まで一時的な上乗せが続き、9月14日から恒久的な上限に切り替わる。基準が違うので、いま上乗せを受けている人にとっては実質的な減少になる」で揃っています。でも、その裏付けとなる公式ページには今日も到達できていません。
施行予定日まであと6日。載らないまま迎えるのかどうか、最後まで見ます。
🔮 ③ デジタル化・AI導入補助金の6次・7次締切 ── 未公表のまま
公式スケジュールページに「※確定している募集回のスケジュールのみ公表しております」の注記があるだけで、6次・7次の日付は本文に記載なし。二次情報サイトに「6次=9/30、7次=11/30」という記述がありましたが、公式本体では確認できないので採用しません。
9月29日の締切に間に合わない会社にとっては、ここが本番です。毎日見ます。
❌ ④ Gemini 3.8 Flashを触った結果 ── 4回目の持ち越し
触れていません。4日連続で「次回書く」と言って書けていないので、言い訳せずに持ち越しと記録します。今週中に求人票の下書きを3.7 Flashと投げ比べます。差が分からなければ「分からなかった」と書きます。
今日の本題:使った量は測れるのに、効いたかは測れない
VentureBeatが9月7日、企業のAIエージェント導入とROI(投資対効果)の実態を取材した記事を出しました。数字が具体的なので、まず並べます。
✅ 確定(記事本文に記載の数字)
- Gartner予測で、AIエージェントソフトへの支出は2026年に 2,070億ドル。前年の864億ドルから 139%増
- Uberは2026年のAIコーディング予算を 4月時点で使い切り、いまは エージェント型のコーディングツール1つにつき、従業員1人あたり月1,500ドル の上限を設定
- Microsoftは自社のExperiences and Devices部門で Claude Codeのライセンスを見直し・解約
- Duolingoは従業員の反発で、AI利用を人事評価の指標にする方針を 撤回
- 一方で好例も。Everlawは 3,500ドル分のトークン投入(1ドル155円換算で約54万円)で、Javaインフラの移行を 9.5カ月→2.5カ月 に短縮
記事が使っている「tokenmaxxing(トークン最大化)」は、要するに「使えば使うほど成果が出るはずだと信じて、AIの利用量課金を積み増していく状態」のことです。
なぜこうなるのか
エージェント(人間が指示を出すと、複数の手順を自分で判断しながら進めていくAI)は、チャットと違って裏で何十回もAPIを叩きます。だから従量課金が読めない。
でも、コストが読めないこと自体は本質ではないと思っています。本質は次です。
多くの会社は、導入前を測っていない。
使用量やAPI課金額は、導入した瞬間から自動で記録が残ります。誰でも測れる。でも比較対象になる「導入前、その作業に何分かかっていたか」は、意識して測らない限りどこにも残らない。そして後から遡って復元できない。
Uberがツールごとに月1,500ドルの上限を敷いたのは、効果測定の結果ではありません。出血を止めるための処置です。効果が分からないから、額で止めるしかなかった。
Microsoftの解約も同じ構造だと読んでいます。使えないから解約したのではなく、続ける根拠を出せなかったのだと思います。
10〜50人の会社にとっては、むしろ朗報として読める
ここからがTSUMUGUの現場の話です。
大企業がこれだけ燃やしている理由は、エージェントに広い裁量を渡しているからです。「このリポジトリを移行しておいて」と投げれば、AIは何百ファイルも読んで何十回も試行錯誤する。当然、量が膨らむ。
一方、10〜50人規模の会社の採用業務でやることは何かというと、
- 求人票の下書き
- 応募者への一次返信文
- 面接質問のたたき台
- 応募者情報の転記
入力も出力も短い作業です。ここはエージェントの出番ではなく、普通のチャット利用で足ります。月額20ドル前後の定額プランの範囲で終わる領域なんです。
最近、採用の内製化を相談される会社さんの共通点として、「AIを入れたら人を減らせますか」より先に「何にいくらかかるか分からないのが怖い」と言われることが増えました。この不安は、正しい不安だと思います。そして作業を絞れば怖くない、という答えが今日の記事から出せます。
今日から試せること1:導入の前に、1回だけ時間を測る
5分で終わります。
求人票1本、応募者への返信1件、面接質問の作成1回。ストップウォッチで1回測って、日付と一緒に紙かスプレッドシートに書く。それだけです。
求人票1本45分、返信文1件8分。この2行があるだけで、3カ月後に「効いたのか」を自分の言葉で言えるようになります。
逆に、これを飛ばすと二度と取り返せません。Uberでもできていないことが、10人の会社なら今日できる。測定コストがほぼゼロなのに、測り忘れると回復不能。この非対称性が大きいので、キックオフの最初の作業に格上げしました。
今日から試せること2:AIに自社を聞いて、答えではなく出典を見る
もう一本、9月8日にプレスリリースが出ていた話とつなげます。
Fhillという会社が、生成AI検索時代の採用広報課題に対応する『採用AIO』(AI検索最適化)の本格展開を発表しました。ChatGPT・Gemini・Claudeなどが企業の採用情報を正しく参照しない結果、応募取りやめや選考辞退につながっている、という問題提起です。診断レポートは期間限定で無料、料金は非公表となっています。
リリース本文には数字が2つ出てきます。扱いが違うので分けます。
✅ 「求職者の75.8%が就活で生成AIを活用」 ── これは脚注に出典が明記されていました。i-plug『27卒学生と企業を対象としたChatGPT等の活用に関する調査』(2026年2月9日発表、有効回答512件)。調査主体・時期・サンプル数が揃っているので、そのまま使えます。
🔮 「AI検索で企業情報を調べた人の約9割が応募取りやめ・選考辞退を経験」 ── こちらは「ある調査では」とあるだけで、リリース本文に出典が書かれていません。数字のインパクトはこちらのほうが大きいのに、根拠が示されていない。自社サービスの必要性を説明する文脈の数字でもあるので、確定としては扱いません。原典が取れたら追記します。
数字は保留にしても、問題設定そのものは無視できないと思っています。
求職者が会社名を生成AIに聞いたとき、AIが答えの材料にするのは、その会社の採用サイトそのものとは限りません。ネット上に散らばった二次情報——口コミサイト、古い求人媒体の残骸、数年前のプレスリリース——を拾って組み立てます。自社サイトの情報が更新されていない会社ほど、AIは古い材料を使う。
しかも厄介なのは、辞退した人は理由を言わずに消えることです。「AIに聞いたら残業が多いって出てきたので」とわざわざ連絡してくる応募者はいません。だから会社側は、この経路での取りこぼしを検知できない。
やり方はこうです。
- ChatGPTかGeminiに「【自社名】の働き方・残業・離職率について教えて」と聞く
- 返ってきた答えではなく、出典リンクを開く
- 自社の採用ページが出典に1つも入っていなければ、自社の情報は二次情報で語られている状態です
対策の第一歩は、サービス導入ではありません。採用ページに「数字+時点」をテキストで置くことです。「平均残業時間◯時間(2026年◯月時点)」「直近1年の中途入社◯名、うち在籍◯名」。画像やPDFに埋め込むと、AIは読みません。これはお金をかけずに今日できます。
自分の会社でもまだ試していないので、明日やって結果を書きます。出典に自社ページが入らなかったら、それはそれで正直に載せます。
参考までに:一番進んだ会社の目盛り
同じ週、OpenAIが社内のコーディングエージェント活用の実測データを公開していました(9月6日)。自社の内部数字をここまで出すのは珍しいです。
✅ 確定(公式ブログ記載)
- 2026年8月中旬時点で、人間の稼働1日あたりエージェント3.1稼働日分に到達
- 8月中旬時点で、中央値の研究者はAPI推論に1日600ドル超を使用。上位10%は1日7,000ドル超
- 「自動化された研究インターン」(数日かかる明確なタスクを、人間の指示のもとで遂行できるシステム)という目標を、9月までに達成
この「1日600ドル」は、経営者に説明するときの上限の目盛りとして使えると思っています。
「AIで人手を減らせるらしい」と言われたとき、「世界で一番進んだ会社でも、1人1日9万円台(1ドル155円換算)を燃やしています。うちがやるのは、その1/100の範囲の作業です」と規模感を先に共有できる。過大な期待も、過小な拒否反応も、目盛りがないから起きます。
それともう1つ。「自動化された研究インターン=数日かかる明確なタスクを、人間の指示のもとで遂行できるシステム」という定義は、そのまま業務の切り出し基準に使えます。
採用業務で「明確なタスク」に当たるのは、応募者情報の転記、求人票の初稿、日程調整の文面。「明確でない」のは、この人を採るかどうかの判断です。前者から渡す。後者は渡さない。線はここです。
個人・副業でAIを使っている人へ
Everlawの数字——3,500ドル(1ドル155円換算で約54万円)で9.5カ月→2.5カ月——は、成功事例として紹介されていますが、裏を返せば「7カ月分の人件費を54万円で買った」という交換です。無料枠や定額プランの中でやっているなら、そもそも土俵が違うと理解しておいたほうがいい。
自分の実感で言うと、コード生成でAIに丸投げしたときと、自分で設計を決めてから部分的に書かせたときとで、消費量が体感で数倍違います。「全部任せる」が一番高くつくのは、規模を問わず同じでした。
もう1つ、OpenAIの「人間1日 ≒ エージェント3.1日」という比率をそのまま個人に当てはめないほうがいいです。あれは並列で走らせる前提の数字です。1つのタスクを順番に片付けている人が同じ倍率を期待すると、必ず外します。
自分の場合、記事の構成案づくりと別案件の調査を同時に走らせられる日は体感で1.5〜2倍。1本の作業を深く詰める日はほぼ等倍です。「並列にできる作業を持っているか」で決まります。
今日のツール更新(2つ)
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LayerX「バクラク人事労務」正式提供開始(9月7日)── 入社手続き〜労務処理〜給与計算を一元管理。マイナンバーカード・源泉徴収票・保険料控除証明書のAI自動読取、住宅ローン控除額の自動計算、2026年税制改正対応の年末調整を搭載。バクラクシリーズ全体で20,000社超が導入。個別料金はリリースに記載なし。年末調整の税制改正への追随は自前で作ると毎年の保守が重いので、ここは買う判断が現実的です。
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PeopleX「PeopleX AI面接」に新機能2つ(9月8日)── 「AI採用コンシェルジュ」(チャットで機能・設定の質問に答え、根拠のヘルプ記事リンクを提示)と「Voice Brain」(AI面接を受けた候補者の声を月次レポートで自動分析し、魅力・不安点・重視点を集約)。対象企業規模・料金は記載なし。
なお、下書き時点で「Google Workspace Studio に Drive/Gmail/Chat の自動化ステップ追加(9月8日)」も入れていましたが、公式ブログを読み直したら発表は9月2日で、9月8日はGmail管理者向け機能のロールアウト開始日でした。今日のニュースではないので落とします(Workspaceを使っている会社にとっては、外部の自動化ツールを入れる前に標準機能で足りないか確認する価値はあります)。
明日の宿題
- Claude Codeの週次上限、施行まであと6日 ── 公式に載るのか、載らないまま変わるのか
- 省力化投資補助金の「9月中旬」が何日に確定するか ── 今週中に出る可能性が高い時期に入りました
- Fhillのリリースにある「約9割」の原典 ── 75.8%のほうはi-plugの調査だと分かりました。残るはこちら。取れなければ「傾向として理解し、数字は使わない」と決めます
- 自社名を生成AIに聞いて、出典を確認した結果 ── 明日やります
- Gemini 3.8 Flashを触った結果 ── 4回目の持ち越し。今週中に決着をつけます

