昨日「省力化投資補助金の基準年度が変わったらしいが、一次で裏が取れていないので試算は保留する」と書きました。今日、裏が取れました。
やったことは単純で、第7回と第8回の公募要領PDFを両方ダウンロードして、同じ言葉の定義を並べただけです。10分で終わりました。そして、その10分で見えたことは、解説記事を10本読んでも出てこないものでした。
補助率も、上限額も、達成すべき成長率も、第7回から変わっていません。変わったのは何と比べるかでした。
昨日の宿題の答え合わせ
✅ ① 補助金の締切 ── 「第6次の締切」という探し方そのものが間違っていた
3日間追いかけていた食い違いに、今日ようやく決着がつきました。結論から書くと、自分の読み違いです。
事務局のスケジュールページを開き直して、表の見出しを読み直しました。
- 通常枠・インボイス枠(電子取引類型/インボイス対応類型)・セキュリティ対策推進枠:「1次〜5次締切分」の締切が2026年9月29日(火)17:00。交付決定は11月9日(月)予定、事業実施期間は交付決定〜2027年4月30日(金)17:00(予定)
- 6次・7次締切分は「未定」
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠:「1次〜3次締切分」の締切が10月30日(金)17:00。交付決定は12月10日(木)予定
つまり事務局は、締切回次を1回ずつ並べていません。複数の回次をまとめて1つの日付に束ねている。9月29日は「6回目の締切」ではなく「1次から5次までをまとめた締切」でした。
昨日「第6次(通常枠等)の締切日は依然未公表」と書きましたが、正確には「6次・7次締切分の日付が未定」であって、9月29日は第6次の締切ではありません。訂正します。
自分がずっと「第N次の締切はいつか」という形で探していたから見つからなかった、という話でした。探し方の形が間違っていると、正しい場所を見ていても答えは出てきません。
✅ ② 省力化投資補助金の基準年度 ── 公募要領の原本で確定
こちらが今日の本題です。次の章に書きます。
🔮 ③ Claude Codeの利用上限(9月14日施行)── 5日連続で公式ドキュメントに記載なし
昨日「最終更新が6月2日で止まっているページ」と書いたドキュメントですが、今日開いたらURLが移転していました。docs.claude.com から code.claude.com へ転送されるようになっています。
移転先の本文も最後まで読みました。利用上限そのものの説明(プランの席ごとの利用枠が「5時間ごとのリセット」と「週ごとのリセット」の2本で管理されている、等)はあります。ただし、9月14日という日付にも、増減の数字にも一切触れていません。
一方で報道側は「9月13日まで一時的な上乗せが続き、9月14日から恒久的な上限に切り替わる。基準が違うので、いま上乗せを受けている人にとっては実質的な減少になる」という説明で一致しています。
施行まであと10日。ドキュメントの引っ越しは済んでいるのに、変更の記載は載っていない。この記録は残しておきます。
🔮 ④ Gemini 3.8 Flashを触った結果 ── 今日も触れていません
3日書いて3日とも触っていません。正直に書きます。今日は公募要領のPDFを2本突き合わせる作業に時間を使い切りました。
今日の本題:数字は同じで、起点だけが動いていた
省力化投資補助金は、機械やシステムを入れて業務の省力化をする中小企業向けの補助金です。従業員規模によって上限額が変わり、10〜50人規模なら1,500万〜3,000万円の枠になります。
第8回の公募要領(2026年8月)と、第7回(2026年6月)。同じ「基準年度」という言葉の定義を並べます。
第7回:
事業計画を策定するにあたって基準となる決算期を指し、応募申請時の直近の決算期とします。
第8回:
事業計画を策定するにあたって基準となる決算期を指し、補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期とします。
これだけです。ここが今日いちばん伝えたいところなので、もう少し丁寧に書きます。
数値要件は1つも変わっていない
この補助金には、達成しないといけない数字が2つあります。
- 労働生産性の年平均成長率 +4.0%以上
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率 +3.5%以上
第7回も第8回も、この数字は同じです。並べて見ても違いがありません。だから数字だけ比較していたら「変更なし」と判断してしまいます。
でも本文をよく読むと、第7回は「申請時と比較して」、第8回は「基準年度と比較して」と書き分けられている。そして基準年度の中身が、上の引用のとおり動いていました。
何が起きるか
事業実施期間は交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内)と定められています。つまり補助事業が終わるのは、早くても申請から1年以上先です。
その「終わった後の決算」が、これからは比較の起点になります。
これまでなら、補助事業の期間中に上げた給与は成長率の分子側に乗っていました。これからは分母(起点)に織り込まれます。同じだけ賃上げをしても、計画上の年平均成長率は小さく出る。3.5%を積むための計画の作り方が変わります。
ひとつ断っておきます。「起点が後ろにずれた=要件が厳しくなった」は自分の読みです。公募要領に書いてあるのは定義の文言だけで、なぜ変えたのかの説明は見つけられませんでした。事実(定義が変わった)と、自分の解釈(だから計画の作り方が変わる)は分けて読んでください。
受付開始日は、まだどこにも書いていない
ついでに確認したのですが、申請受付の開始日は公募要領の本文にも書かれていません。「4−2.申請期間」にはこうあります。
申請受付時期及び終了時期は本事業のホームページにて公開します。
事務局のトップページにも、8月18日に公募要領を公開した告知はありますが、受付開始日の記載は見つかりませんでした。昨日「9月中旬のまま」と書いた表記も、今日は一次で確認できていません。受付開始日は未確定として扱います。支援先にも日付は伝えません。
ひとり人事・社長が今日やること
10〜50人規模で、この補助金を検討している会社に向けて具体的に書きます。
第7回の感覚で作った下書きがあるなら、賃上げ計画は作り直しです。 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%を、補助事業が完了した年度の決算を起点に積む形になっているか。ここだけ今日確認してください。
そして、申請前の駆け込み賃上げは設計に入れないほうがいいと思っています。この定義だと起点側に飲み込まれるので、効果が消えます。賃上げをいつやるかは、それ自体が計画の一部になりました。
AIニュースのほうも書きます
NVIDIAが、Hugging Faceを買収
9月3日、NVIDIAがHugging Faceの買収を発表しました。金額は公式ブログに 129億3,030万ドル($12,930,300,000)と記載されています。
Hugging Faceは、世界中の開発者が学習済みのAIモデルを公開して共有している場所です。ChatGPTのように、できあがったサービスを使わせてもらう形とは違います。ここで配られているのはAIのファイルそのものです。日本の中小企業が「社内の情報を外に出したくないから、自社のサーバーの中でAIを動かしたい」と考えるとき、たいていここが入口になります。
公式ブログは、買収後も🤗のブランドを維持すること、AI業界全体に開かれた場所であり続けること、NVIDIA以外の計算機でも動くようにする対応を続けることを明記しています。
わざわざ「NVIDIA以外でも動かせるようにする」と書いてあるのは、裏を返せばそこが真っ先に疑われると分かっているからでしょう。書いてあること自体は評価します。ただ、書いてある約束が2年後どうなっているかは別の話です。
→ 採用・中小企業への影響:明日の採用業務は何も変わりません。効いてくるのは中長期です。自社サーバーでAIを動かす構成を検討している会社は、モデルの入手先を1つに寄せない、という点だけ頭の隅に置いておけば十分です。
→ 個人の実務・副業への影響:AIツールを組んでいる人は、自分が使っているモデルのファイルが手元にあるか確認しておくといいです。今すぐ何かが止まる話ではありません。ただ「無料で当たり前に使えていたものが有料化される」のは、この業界で何度も見た流れです。確認は10分で終わります。
なお、買収完了の予定時期は公式ブログに書かれていません。報道では2027年上半期とされていますが、一次で確認できていないので未確認扱いにします。
対話型のAI面接が、全国3万人規模の会社に入った
今日の朝9時に出たばかりのリリースです。PeopleXの「PeopleX AI面接」を、BPO大手のトランスコスモスが導入しました。
注目したのは、これが対話型である点です。リリースにはこうあります。
事前に設定した質問だけでなく、回答内容に応じて深掘り質問を行うことが可能
これまでのAI面接は、多くが録画型でした。応募者が一方的に話して、あとでAIが採点する。応募者の体験としては、正直よくない形式です。
対話型で深掘りが入るということは、面接の設計そのものをAIに渡し始めているということです。何を深掘るかは、その会社が何を見たいかそのものですから。
対応範囲は新卒・中途・パート/アルバイト採用と社内面談。トランスコスモス側は全国の採用活動とコンタクトセンター業務のスタッフ採用に使うとしています。同社は全国約3万人が働く規模です。価格の記載はありません。
→ 採用・中小企業への影響:10〜50人の会社が明日これを入れるかというと、違うと思います。全国3万人規模の採用と、年に数人採る会社では前提が違いすぎます。
ただ、パート・アルバイト採用が対象に入っているのは見逃せません。応募者が多くて一次面接の日程調整だけで一日が潰れる——これは会社の規模を問わず起きます。ひとり人事の方にとって、最初の接触をAIが持つ意味は小さくない。
導入を考えるなら、ツールを比べる前にやることがあります。「一次面接で確認していることを3つ書き出す」。それぞれに深掘り質問を1つ用意する。これが書けないなら、どのAI面接ツールを入れても出てくる結果は同じです。AIは、何を深掘るか決まっていなければ無難な質問しかしません。
紙とペンで30分。自分の支援先とも、まずここから話すつもりです。
→ 個人の実務・副業への影響:求職する側の話です。対話型が広がると、用意した回答を読み上げる対策は効かなくなります。深掘りが来るので。
逆に言えば、練習相手としてのAIの価値が上がります。職務経歴書をClaudeやChatGPTに貼って「面接官として、この経歴のいちばん弱いところを3回連続で深掘りして」と投げる。2回目で答えに詰まる箇所が、AI面接でも人間の面接でも刺さります。無料の範囲でできて、15分で終わります。副業で案件面談を受ける人にも、そのまま使えます。
AIツール・アップデート情報
- Gemini 3.8 Flash / 3.8 Flash Cyber(9月2日):3.8 Flashの導入価格は100万トークン(AIが読み書きする文字数の単位。日本語だと1トークンがだいたい1文字弱)あたり入力$0.75/出力$3.75。この価格は2026年12月31日までで、その後は倍額($1.50/$7.50)になります。月額の試算を客先に出すなら、期限は必ず添えてください。Flash Cyberのほうはセキュリティ特化で、政府・重要インフラ向けのプログラム経由でのみ提供されます。
- Cursor Self-Hosted Machines(9月2日):コーディングを手伝うAIの実行場所を、自社ネットワーク内のマシンにできる機能。「ソースコードを外に出せないのでCursorは無理です」で終わっていた話に、選択肢ができました。価格の記載はありません。
- Meta Muse Spark 1.3(9月2日):Metaの新モデル。コーディング用途での改善を強調しています。InstagramやFacebookへの展開は今後とされていますが、これは報道ベースで、公式ブログには記載がありません。
- GitHub Copilot Code Reviewがプルリクエストを承認可能に(9月1日):AIがコードレビューの承認まで出せるようになりました。デフォルトはオフで、組織単位で有効化する設計です。公式ページが開けず本文を確認できていないので未確認扱いにします。
僕は今日、公募要領のPDFをテキストに変換して同じ言葉を検索する、という一番地味な作業でこの記事の骨格を作りました。新しいツールを増やすより、手元のものを1つ深く使うほうが成果は出ます。今日はそれがコマンドライン1行でした。
AIが中小企業の採用・現場をどう変えるか
今日のニュースから2点。
1. 制度の改定は「数字」ではなく「定義」に現れることがある
補助率も上限額も達成すべき成長率も変わっていないのに、計画の作り方は変わりました。数字だけ見比べていたら見落とします。
補助金やガイドラインの改定を追うときは、新旧の原本を2つ手元に並べて、同じ言葉を検索してください。解説記事の孫引きだと、この差分はまず落ちます。「変更されたらしい」を「原文でこう変わった」に格上げできるかどうかは、原本を2つ開いたかどうかで決まります。
2. AI導入は「入れた」と「定着した」が別物
参考になる数字があります。テックタッチ社の調査(従業員1,000名以上の企業のAI推進担当者319名、2026年7月28〜29日実施)では、最も定着している業務でも71.5%が業務システムとは別画面でAIを使っており、うち30.4%は手作業のコピペという結果でした。
1,000人規模の会社でもこの状態です。中小企業がAI導入で焦る必要はない、という話でもあり、同時に「導入した=定着した」ではない、という話でもあります。導入を検討している会社には、この数字をそのまま見せています。
ひとり人事の方が今日から試せること:省力化投資補助金を検討中なら、賃上げ計画の起点が「補助事業完了年度の決算」になっているかを確認する。検討していないなら、一次面接で確認している3つを紙に書き出す。どちらも30分あれば終わります。
個人の副業・実務への影響
職務経歴書の「深掘り耐性」を今日テストする:上に書いたとおりです。AIに面接官役をさせて、3回連続で深掘らせる。2回目で詰まる箇所が弱点です。15分。
制度文書は原本を2つ並べる:今日やった作業がそのまま手順です。AIに要約させるのは、原本を2つ手元に置いた後にしてください。順番が逆だと、AIは「変わっていません」と答えます。要約元の記事に差分が書かれていないので。
今日のまとめ:見落としは、数字ではなく言葉に隠れる
今日いちばん気になったのは、自分が3日間ずっと「第6次の締切はいつか」という間違った形の質問を握りしめていたことでした。答えが出なかった理由は、情報が足りなかったことではありません。探し方の形が、現実の並び方とずれていました。
補助金の基準年度も同じでした。数字を比べていたら「変更なし」で終わっていた。定義の文章を並べて初めて、計画の作り方が変わっていたと分かりました。
AIに調べさせるほど、この種の見落としは増えると思っています。AIは聞かれた形で答えるのが上手いので、間違った形の質問には、間違った形のまま正確に答えてくれるからです。原本を2つ開くという地味な作業は、しばらく手放せそうにありません。
来週の注目ポイント
① 省力化投資補助金 第8回の申請受付開始日 → 公募要領本文にも事務局トップにも日付がありません。受付が始まればスケジュールが出ます。それまで支援先には日付を伝えません。
② Claude Codeの利用上限変更(9月14日施行まであと10日) → ドキュメントは引っ越したのに、変更の記載は載っていない。移転を機に載るのか、このまま施行日を迎えるのか。載らないまま施行されたなら、その事実を記録として残します。
③ デジタル化・AI導入補助金の「6次・7次締切分」 → 今日ようやく表の読み方が分かりました。9月29日は1〜5次をまとめた締切で、6次・7次は未定です。この未定がいつ埋まるかで、9月29日に間に合わない会社の次の打ち手が決まります。間に合わない会社にとっては、ここからが本番です。
④ Gemini 3.8 Flashを実際に触った結果(3回目の持ち越し) → 3日書いて3日とも触っていません。次回は求人票の下書きを前のモデルと投げ比べた結果を書きます。差が分からなければ「分からなかった」と書きます。
数字が変わっていないから何も変わっていない、とは限りません。今日の教訓はそこです。
