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『AIに丸投げ』では落ちる総合型選抜──志望理由書をAIで磨く子と書かせる子の決定差

「AIに書いてもらいました。これでいいですか?」

総合型選抜の志望理由書ファイルを差し出してくる高3生が、ここ1年で一気に増えた。

文章はきれいに整っている。段落の繋ぎも自然。誤字脱字もない。読みやすい志望理由書だ。けれど、読み終わった瞬間に何ひとつ残らない。何を志望していて、その学部で何を学び、卒業後にどんな形で社会と関わりたいのか。文字としては書かれているのに、書いた本人の輪郭が一切見えない。

これが、最近のAIで書かれた志望理由書に共通する読後感だ。

指導3年以上で総合型選抜の志望理由書を見てきて、はっきり言えることがある。

合格する子と落ちる子の差は、AIを使うかどうかではない。AIに何をやらせて、何を自分の手元に残しているか、その境界線をどこに引いたかで決まる。

なぜ「AIに丸投げの志望理由書」は刺さらないのか

最初に、構造的な話を書く。

総合型選抜の志望理由書を読む大学側が、何を見ているか。出願者の経歴ではない。文章力でもない。

見ているのは、**「この受験生は、自分の言葉で考えられる人間か」**だ。

総合型選抜は、学力試験では測れない受験生の質を見る制度として設計されている。大学側の読み手は、入学後の探究学習・ゼミでの対話・卒業論文の指導場面で「この受験生は自分で問いを立てられるか」を予測したい。だから志望理由書では、受験生の問いの解像度が読まれる。

ここでAIが書いた文章を出すと、何が起きるか。

文体は整っている。論理展開も筋が通っている。けれど、問いが受験生のものになっていない。AIは過去の合格者の文章パターンを学習して、もっとも合格しやすそうな型を組み立てる。その結果、どの大学・どの学部にも当てはまる、最大公約数の志望理由書が出来上がる。

読み手は、それを一目で見抜く。

「整っているけれど、誰の言葉でもない」志望理由書を読んだあと、面接でその受験生が同じ言葉を口にできない。書類と面接のあいだに、本人だけが気づかないギャップが生まれる。

合格しないのは、AIが悪いからではない。問いを自分のものとして手元に残さなかったからだ。

AIで磨く受験生と、書かせて終わる受験生の決定差

3年以上の指導で見てきて、志望理由書をAIで仕上げた受験生は、合格層と不合格層にきれいに分かれる。

差が出るのは、5つの境界線だ。順番に書く。

境界線1:「何を志望するか」を、AIに考えさせるか自分で出すか

落ちる受験生は、AIに「志望理由書を書いて」と頼む段階で、すでに志望が固まっていない。

「教育学に興味があって、子どもの教育格差にも関心があって……」のような曖昧な状態でAIに依頼すると、AIは合格しそうな志望理由を逆算で組み立ててくる。受験生は、それを読んで「自分もそう思っていた気がする」と納得する。

これが最も多い失敗パターンだ。

合格する受験生は、AIに頼む前の段階で、自分の興味の輪郭を自分の言葉で出している。

  • 「人と関わるのが好きで、特に高校2年の◯◯のときに学習支援のボランティアをやって、子どもが分かった瞬間の顔を見たい」
  • 「祖父が認知症になって、地域の高齢者支援に興味を持った。けれど高齢者支援だけでは狭い。地域コミュニティ全体の設計をやりたい」

このレベルで、自分の言葉で書ける状態を作ってからAIに渡す。

AIは志望を考える道具ではない。志望を整理する道具だ。考える側に回らせると、書類は通らない。

境界線2:「経験の選び方」を、AIに任せるか自分で選ぶか

志望理由書では、必ず自分の経験を1〜2個書く。高校時代の活動、ボランティア、部活動、家族との出来事、印象に残った本など。

落ちる受験生は、ここをAIに「私の経験のうち、志望理由書に使えるものを選んで」と頼む。

すると、AIは合格しやすそうなパターンに当てはめて経験を選ぶ。「リーダーシップを発揮した経験」「困難を乗り越えた経験」「他者と協働した経験」のような、定型の枠に経験を押し込む。

これは型として機能するが、本人の輪郭が見えない。

合格する受験生は、経験を選ぶ段階を完全に自分でやる

5〜10個の経験を書き出して、それぞれを3行で言語化する。そのうえで、「この経験を志望と繋げたときに、自分の言葉で語れるか」を本人が判断する。AIには、選んだあとの整理と表現の磨きだけを任せる。

経験の選定は、受験生が考える行為そのものだ。ここをAIに渡すと、どんなに整った文章を作っても、面接で1秒で剥がれる。

境界線3:「学部と志望のつなぎ方」を、AIに調べさせるか自分で読むか

志望学部の特徴を踏まえた志望理由を書く。これが志望理由書の中盤の山場だ。

落ちる受験生は、AIに「◯◯大学◯◯学部の特徴と、私の志望をつなげて」と頼む。

AIは大学のホームページや公開情報からそれっぽい接続点を探してくる。「貴学のフィールドワーク重視のカリキュラム」「3つのゼミ系統のうち◯◯ゼミ」のような、公式情報を引っ張ったつなぎ方になる。

これも、面接で剥がれる。

「貴学の◯◯ゼミに興味があると書きましたが、なぜそのゼミに惹かれましたか?」と聞かれて、答えられない。AIが引っ張った情報を、本人が読んでいないからだ。

合格する受験生は、志望学部の情報を自分で読む

  • 大学のホームページの該当ゼミ・コース・カリキュラム
  • 教員の研究テーマと最近の論文タイトル
  • 在学生・卒業生のインタビュー記事
  • できれば、オープンキャンパスや個別相談で得た一次情報

これを自分で読んで、「自分の興味とどう接続するか」を3〜5行で書き出す。その上で、AIに「この接続を志望理由書の段落として磨いて」と頼む。

AIに情報収集をさせない。情報は自分で読む。AIには表現の整理だけを任せる。

境界線4:「文体を、AIに揃えさせるか自分で整えるか」

落ちる受験生のAI志望理由書は、文体がAIのデフォルトのまま提出される。

「〜と考えております」「〜したいと存じます」のような、過剰に丁寧な定型文。あるいは「〜という観点から、〜という意義があると思います」のような、抽象度が高すぎる論理表現。これらは、受験生の年齢と話し方に明らかに合わない。

面接で、この文体で話す18歳はいない。書類と本人の落差が、面接官に違和感を残す。

合格する受験生は、文体を自分の話し言葉に近づける作業を、必ず最後にやる。

AIが整えた文章を読み上げて、自分が普段は使わない言葉・自分が言わない言い回しを書き換える。これを2〜3回繰り返すと、書類と本人の話し方が一致する。面接官に違和感を残さない志望理由書になる。

文体の最終整え作業を、自分の口に出して読むプロセスとセットで行うのが、合格層の共通点だ。

境界線5:「面接対応を想定するか、しないか」

ここが、落ちる受験生と合格する受験生のいちばん大きな差だ。

落ちる受験生は、志望理由書を「書類として出すもの」と捉える。提出した瞬間に、ファイルを閉じる。

合格する受験生は、志望理由書を「面接で本人が話す台本の原稿」と捉える。

書いた志望理由書の段落ごとに、面接官が突っ込みそうな質問を3つずつ想定する。

  • 「ここで書いている経験について、もう少し具体的に話してください」
  • 「この志望と、別の学部・別の大学を比較したことはありますか?」
  • 「この問題意識を持ったきっかけを、もう一段詳しく教えてください」

これらの想定質問に、口頭で2分以上答えられる状態を作ってから、書類を提出する。

AIが書いた志望理由書を、書類のまま出して、面接で本人が答えられない。これは1〜2分の口頭試問で必ず破綻する。

合格する受験生は、AIに志望理由書を作ってもらった段階で、口頭で再現できないと提出しないというルールを自分に課している。

AIで磨く具体的な3ステップ

ここまでで「やってはいけないAIの使い方」を書いたが、では合格する受験生は、AIをどう使っているか。3つのステップで書く。

Step1:自分で2,000字の素材を書く

最初に、AIに何も渡さずに、自分で2,000字を書く。

  • 志望のきっかけ:500字
  • 高校で取り組んだこと(2〜3個):800字
  • 志望学部で学びたいこと:500字
  • 卒業後に関わりたいテーマ:200字

文章は荒くていい。むしろ、整っていないほうがいい。考えながら書いたことが分かる粗さが、あとの素材になる。

この2,000字を書き上げる段階で、自分の頭の中の整理が一段進む。ここまでをAIに代わらせると、後ろが全部崩れる。

Step2:AIに「壁打ち」させる

書いた2,000字をAIに渡して、こう頼む。

これは私が書いた志望理由書の素材です。
以下を質問形式でフィードバックしてください。

1. 志望のきっかけと、後半の「学びたいこと」のあいだに飛躍がないか
2. 経験の記述で、もっと具体性を出せそうな箇所はどこか
3. 志望学部とのつなぎ方で、抽象的すぎる表現はどこか

直接の書き換えはせず、質問と指摘だけ返してください。
私が考えて、自分で書き直します。

AIに直接の書き換えをさせないことが、ここでの最大の境界線だ。

AIから返ってきた質問・指摘を読みながら、自分で2,000字を書き直す。これを2〜3回繰り返す。AIは、自分が見えていない論理の穴を見つけてくれる質問相手として使う。

Step3:AIに「磨き」だけを任せる

3回目の書き直しが終わったら、最後にAIに整文だけ依頼する。

以下は私が書いた志望理由書の最終稿です。
内容は変えずに、文章の流れと表現だけ整えてください。
私が書いていない情報・主張は絶対に足さないでください。

ここでAIが手を入れていいのは、表現の整え・段落の流れ・冗長な表現の削除のみ。内容・主張・経験の選び方には一切触れさせない

最後に、自分の口で読み上げて、自分が言わない言い回しを書き換える。これで完成だ。

合格層と不合格層の決定差は、ここに集約される

書類選考で落ちる受験生のAI使用パターンは、Step1を飛ばす。

AIに「私の志望理由書を書いて」と頼んで、出てきたものを提出する。本人の思考が一度も介在しない志望理由書になる。

書類で残った受験生も、面接で落ちるパターンの大半は、Step3だけをやってStep1・2を飛ばしている。AIに丸投げで作って、表面だけ整えて提出している。

合格層は、Step1で2,000字を自分で書き、Step2でAIと壁打ちし、Step3でAIに磨かせる。AIを「考える代わり」ではなく「自分の思考を見える化する相手」として使っている

ここに、決定的な差がある。

家庭で今日から試せる一手

総合型選抜を考えている高2・高3生がいる家庭で、明日から1つだけ試せることがある。

お子さんが「AIに志望理由書を書いてもらった」と見せてきたら、こう聞いてみてほしい。

「これ、面接でそのまま話してみて」

ここで詰まったら、Step1を飛ばしている合図だ。

詰まったことを叱る必要はない。「じゃあ一回、AIに見せる前のメモを2,000字書いてみよう」と一緒に座って、書き始める時間を作る。

ここからが、本当の総合型選抜対策の始まりになる。

総合型選抜は、AI時代になっても自分の言葉で考えられる受験生を見つける制度だ。AIの登場で、この制度の本質はむしろくっきり浮き上がってきている。

AIを禁じる必要はない。むしろ、Step2の壁打ち相手として使えるなら、強力な武器になる。

ただし、Step1の自分で書く時間を、絶対に飛ばさない。ここに、合格と不合格を分ける一本の線が引かれている。

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