xAIが9月21日に新しいモデル「Grok 4.7」を発表し、同じ日にGitHub CopilotとCursorの両方で使えるようになりました。
価格は入力$2/出力$6(100万トークンあたり)で、前世代のGrok 4.6と同額です。値上げなしで性能が上がった、と読めます。
ところが第三者が測った数字を見ると、1つのタスクを終えるまでに吐き出す出力トークンが2.25倍になっていました。単価が同じでも、同じ仕事の請求額は倍以上になります。
そしてGitHub Copilotでは、新しいモデルはデフォルトで有効になります。管理者が何もしなければ、入ってきます。
先に1つ訂正させてください。前回この連載で、カリフォルニアの法案について事実と違うことを書きました。本文の最初で訂正します。
前回の訂正と、予告の検証
❌ 訂正:AB 1883は署名されていませんでした
前回、「Newsom知事は9月16日にAB 1883(職場でのAI監視・感情認識の禁止)に署名済み」と書きました。これは誤りです。AB 1883は今も署名されていません。
州議会の公式ステータスページを今日開いたところ、AB 1883の状態は「Active Bill - Enrolled(登録済みの活動中法案)」で、履歴の最新は9月10日に知事へ提出。「知事の承認」「成文化」に相当する記録はありません。
9月16日に知事が署名したのは、SB 1050/SB 813/AB 1405の3本でした。AB 1883はここに含まれていません。前回はこの知事府のリリースを根拠に挙げていたのですが、リリース本文にAB 1883という番号は登場しません。
原因ははっきりしています。リリースのタイトルが「労働者を保護する新法に署名」だったので、内容を確認する前に法案番号を結びつけてしまいました。州公式の法案ステータスページを開けば、「承認」の記録があるかどうかで30秒で判別できたことです。手順の問題として記録しておきます。
なお署名された3本の中身は、SB 1050がAI生成の出演者を使った広告の開示義務(虚偽広告の法律への追加で、職場のAI監視とは別分野)、SB 813が独立した検証組織による評価の要求、AB 1405がAIシステムの第三者監査の要求でした。検証と監査を要求する枠は、先に成立しています。
🔮 SB 947は、なお判断待ち(期限まで残り8日)
前回の予告どおり確認しました。SB 947(懲戒・解雇のAI判断を対象とする法案)は、9月22日時点でまだ署名も拒否もされていません。ステータスは前回と変わらず「9月9日午後2時に知事へ提出」のまま。期限は9月30日で、残り8日です。
つまり加州では、職場のAIを扱う法案が2本とも同じ期限で知事の手元にあることになります。詳しくは②で書きます。
✅ Gemini 3.8 Flashの発表日と料金が取れました
前回「Google側の正式な発表日が確認できなかった」と書いた宿題です。公式記事を特定できました。
- Gemini 3.8 Flash:発表は9月2日。料金は導入価格として入力$0.75/出力$3.75で、これは2026年12月31日まで。2027年1月1日から入力$1.50/出力$7.50に倍額になります
- Gemini 3.8 Live:発表は9月15日。97言語対応。ただし価格とコンテキスト長(一度に読み込める文章量)は公式記事に記載がなく、未確認です
どちらも48時間より前の発表なので、今日の注目ニュースには入れていません。ただし**「導入価格は年内まで」は予算を組むときに効く**ので、後半のツール情報に入れておきます。
🔮 Microsoft AI Code of Conductの続報は、見つかりませんでした
9月14日に始まった6週間の意見募集について、公式ブログとサイト内検索を確認しましたが該当記事が見当たりませんでした。未確認のまま継続監視します。
注目ニュース TOP3
① Grok 4.7:単価は据え置き、出力トークンは2.25倍
何が起きたか
xAIが9月21日にGrok 4.7を発表し、同日にGitHub CopilotとCursorで使えるようになりました。価格は入力$2/出力$6でGrok 4.6と同額。ただしCursorでは3段階になっていて、標準版は200Kトークンまでが$2/$6、200Kを超えると$4/$12、Fast版で256Kを超えると$6/$18(上限は500K)です。
xAI公式が並べたベンチマーク(性能を測るテスト)は、CursorBench 4.0で46.3%(Grok 4.6は40.4%)、DeepSWE v1.1で71.0%でした。
なぜ重要か
公式が出していない数字のほうが、実務では効きます。
VentureBeatの計測では、同じタスク1件を終えるまでの出力トークン量が、Grok 4.7が81,000、Grok 4.6が36,000、比較対象のGPT-6 Astraが27,000でした。Grok 4.6比で+125%、GPT-6 Astra比で+196%です。
単価が同じで消費が2.25倍なら、同じ仕事の請求額は倍以上になります。単価表を見比べる習慣が、ここで通用しなくなっています。
ベンチマークの見え方も割れています。公式が示したCursorBenchでは46.3%ですが、Terminal-Benchという別のテストではGrok 4.7は約26%。同じテストでGPT-6 Astraが59.6%、Claude Opus 5が約49%です。CursorBenchでもFable 5.1 Maxの51.8%が上にいます。つまりどのベンチマークを見せられているかで、同じモデルの評価が倍以上ずれます。
そしてGitHub Copilot側の条件です。対象はPro/Pro+/Max/Business/Enterprise。VS Code、Visual Studio、Copilot CLI、JetBrains、Xcode、Eclipseなどで使えます。課金は従量制(使った分だけ払う方式)でプロバイダの表示価格。そして新しいモデルはデフォルトで自動的に有効化され、管理者が全体設定をオフにするか、そのモデルを明示的に無効にした場合だけ除外されます。
→ 採用・中小企業への影響
Copilotのビジネス向けプランを契約している会社は、今日1つだけ確認してください。管理画面で「新モデルの自動有効化」がどうなっているかです。
無効にすべきという話ではありません。従量課金の枠を持っている会社に、消費が2.25倍のモデルがデフォルトで入る構造になっている、という事実を知っておく話です。10〜50人規模で、ひとり人事やひとり総務が兼任で管理者をやっている会社だと、この種のベンダー通知は流れていきます。そして請求額は翌月に出ます。
求人票の下書きや応募者への返信文をCopilotで回している場合、やっている作業は何も変わらないのに請求が動く可能性があります。月次のAI利用額を、ツール単位で1行だけ記録しておくといいです。差分が出たときに原因を探せます。
→ 個人の実務・副業への影響
「Grokは安いから」で選んでいる人は、比べ方を変えるタイミングです。81,000対27,000という差は、単価が3倍違っても逆転する大きさです。Cursorを使うなら価格の段差も効きます。最初の段差は256Kではなく200Kで、標準版はそこを超えると$2/$6から$4/$12になります。
正直に書くと、僕はまだGrok 4.7を実務のタスクで走らせていません。なので体感は報告できません。次回、同じリファクタ作業を2つのモデルで通して、完了までの合計コストを出して報告します。この記事で引いているのは他の人が測った数字です。
② 加州の職場AI法案は2本とも判断待ち。期限は9月30日
何が起きたか
職場でのAI利用を縛る法案が、カリフォルニアで2本同時に知事の署名待ちになっています。SB 947(懲戒・解雇のAI判断が対象)と、AB 1883。どちらも期限は9月30日、残り8日です。
AB 1883の条文を読みました。禁止されるのは2つです。
- 個人の感情状態を認識すること、および推論・予測すること
- 神経データの収集(従業員の中枢または末梢神経系の活動を測定して生成される情報。非神経情報から推論したものは含まない、と定義されています)
罰則は違反1件につき最大500ドル。執行は労働委員または検察官です。
なぜ重要か
条文を読んで分かった限定が2つあり、これは解説記事では見つけられませんでした。
1つ目。条文が対象として挙げているのは "employees"(従業員)で、"applicant"(応募者)という語は登場しません。 つまり「採用応募者の感情分析が対象に入るか」に、条文は答えていません。面接時の表情分析や声のトーン分析にそのままかかるとは、条文からは言えません。
2つ目。施行日の記載が条文にありません。 二次情報には「2027年1月1日施行」と書いているものがありますが、条文本文では確認できませんでした。ここは断定を避けます。
前回この連載は「AB 1883は成立済み」と書きました。実際は2本とも判断待ちで、期限は同じでした。誤った側に倒れた原因は、法案番号を確認する前に解説記事とリリースのタイトルを信じたことです。今回、条文を自分で開いて初めて「応募者が書かれていない」ことに気づきました。開かないと分からないことが、条文には残っています。
→ 採用・中小企業への影響
日本の会社に加州の法律が直接かかるわけではありません。ただし使っている採用ツールのベンダーが米国製なら、機能の提供条件は向こうの法律で動きます。
今日できることは2つです。
1つ目。面接支援ツールや録画分析ツールを入れているなら、「表情」「声のトーン」「ストレス」「エンゲージメント推定」といった機能がオンになっていないか設定画面を見る。使っていない機能が既定でオンになっていることがあります。
2つ目。応募者への説明文に「AIで何を見て、何を見ないか」を1行入れておく。加州が線を引こうとしているのは「感情を推し量ること」で、これは日本でも応募者から聞かれたら答えが必要な部分です。
10〜50人の会社なら、面接評価は人が書いた文字情報だけで足ります。感情推定は、そもそも入れないという選択が取れる規模でもあります。
→ 個人の実務・副業への影響
自分が応募者側に立つ場面でも使えます。AI面接を使う会社に応募するとき、何を記録され何を推定されるのかは聞いていいことです。加州が2本の法案で線を引こうとしているのは、まさにそこです。
③ GitHub Enterpriseが認証情報の一覧をCSVで出せるようになった
何が起きたか
GitHub Enterpriseに「認証情報インベントリのエクスポート」が追加されました。GitHub Enterprise Cloudで提供開始、Server版は今後のリリースで対応予定です。
出せるのは、SSHキー、パーソナルアクセストークン(個人用の認証キー)、OAuth Appのトークン、GitHub Appの各種トークン。一緒に出るメタデータが実務的で、所有者・権限の範囲・作成日・失効日・最後に使用した日付・対象の組織とリポジトリが付きます。形式はCSVとAPI。実行できるのはenterprise ownerか、専用の権限を持つメンバーだけです。
なぜ重要か
3日前の話と直接つながります。
9月19日に明らかになったGeminiの実在3社への侵入は、3件のうち2件が公開リポジトリに置き忘れられた認証情報を使ったものでした。その10日前のAnthropicの4件も、原因は環境側に開いていた穴でした。2回続けて、モデルが突破したのではなく放置された鍵が問題でした。
今回の機能は、その放置された鍵を一覧で吐き出せるようにするものです。特に「最後に使用した日付」が入っているのが効きます。使われていないのに生きているトークンが、一覧で見えます。棚卸しをしろという話に対して、棚卸しの道具が出てきた順番になっています。
ただし正直に書くと、対象はGitHub Enterprise Cloudで、実行には特別な権限が必要です。多くの中小企業はこの機能の対象外です。
→ 採用・中小企業への影響
機能そのものは使えなくても、考え方はプラン関係なく移せます。
採用業務で発行した鍵を思い出してください。応募者管理システムのAPIキー、採用サイトの管理者アカウント、面接記録を置いているクラウドの共有リンク、退職した担当者が作った自動化ツールの連携設定。
これらに「いつ作ったか」「最後に使ったのはいつか」「誰の名義か」を書いた表があれば十分です。GitHubがCSVで出そうとしているのは、まさにこの3列です。10行あれば足りる会社が多いはずです。
最後に使ったのが半年前なら、それは止めていい鍵です。 ひとり人事の引き継ぎで一番危ないのは、前任者が作った連携が生きたまま残ることです。
→ 個人の実務・副業への影響
個人アカウントではこの機能は使えませんが、GitHubの Settings → Developer settings で、自分のパーソナルアクセストークンの一覧と最終使用日は今でも見られます。副業でいくつもプロジェクトを回している人ほど、用が済んだトークンが生きています。3日前の侵入の2件がそこから入られている以上、消すのは今週やっていい作業です。30分で終わります。
AIツール・アップデート情報
- Cloudflare:Python Workersが正式提供に → PythonのWebフレームワークやAI連携のライブラリを、JavaScriptに書き換えずにそのまま動かせるようになりました。小さな自動化を自分で置きたい人向け
- GitHub:リポジトリのプルリクエスト一覧ページが刷新され全ユーザーへ → 見た目の変更です
- Hugging Face:oMLXの作者Jun Kim氏が参加 → Mac上でモデルを動かす環境(MLX)のコミュニティ支援が強化されます
- NVIDIA:AIデータセンター向けの電源・冷却製品の認証制度「DSX Ready」を開始 → 中小企業には直接関係しませんが、AIの電力がインフラ側の課題になっている流れです
- ⚠️ Gemini 3.8 Flashの料金は2027年1月1日に倍額 → 導入価格の入力$0.75/出力$3.75は2026年12月31日まで。以降は$1.50/$7.50。今の価格で年間予算を試算すると、年明けに合わなくなります
- ⚠️ Xiaomi:MiMo-V2.6-Proを公開 → テキスト・画像・動画を扱えるモデルとして発表されましたが、性能の数字と個別の記事URLを確認できていないので未確認として扱います
ツール選びのワンポイント:今日のGrok 4.7の件は、単価表の比較が効かない場面が出てきたことを示しています。比べるなら「自分の仕事を1件終わらせるのにいくらかかったか」で、これは実際に走らせないと出ません。モデルを増やすより、いま使っている1つで完了単価を測れる状態にするほうが先だと思っています。
AIが中小企業の採用・現場をどう変えるか
今日のニュースから、2点です。
1点目。料金の見方が変わりました。 単価が据え置きでも、消費量が変われば請求は動きます。しかも従量課金のツールでは、モデルの切り替えが管理者の操作なしに起きます。これまで「単価が安いほうを選ぶ」で済んでいた判断が、「完了1件あたりいくらか」に変わりました。測るには実際に走らせるしかありません。
2点目。規制の側は、まだ線が引かれていません。 加州の2法案は判断待ちで、期限は9月30日。AB 1883が成立しても、条文には応募者が書かれていません。つまり採用面接のAIについては、誰も明確な線を引いていない状態が続きます。
ひとり人事の方が今日から試せること
① Copilotの管理画面で「新モデルの自動有効化」の状態を見る(10分)
あわせて、月次のAI利用額をツール単位で1行だけ記録し始めてください。請求が動いたとき、作業量の変化かモデルの変化かを切り分けられます。
② 採用ツールの「感情・表情・声のトーン」機能がオンになっていないか確認する(15分)
日本の法的義務ではありません。ただし使っていない機能が既定でオンになっていることがあり、応募者に説明を求められたときに答えが必要になります。
個人の副業・実務への影響
モデルの比較軸を「単価」から「1タスク完了までの合計」に変える。 Grok 4.7は$2/$6でGrok 4.6と同額ですが、タスクあたりの出力トークンは81,000対36,000です。次に何かをリファクタするとき、同じ作業を2つのモデルで通して合計コストを出してみてください。1回測れば、以後の判断が速くなります。
古いトークンを消す。 GitHubの Settings → Developer settings で、パーソナルアクセストークンの一覧と最終使用日が見られます。3日前に明らかになった侵入の2件は、置き忘れられた認証情報から入られています。
今日のまとめ:数字は、見せられた場所の外にある
今日の3本は、たまたま同じ形をしていました。
Grok 4.7は、公式が出した46.3%と、第三者が測った26%の両方が事実です。単価$2/$6も事実で、消費2.25倍も事実です。どちらも嘘ではなく、見せられる場所が違うだけでした。
加州のAB 1883は、解説記事では「職場のAI監視を禁止する法律」で、条文を開くと「対象は従業員で、応募者は書かれていない」でした。条文まで開かないと出てこない情報が、そこに残っていました。
僕が一番気になったのは、前回自分が書いた誤りの原因です。知事府のリリースのタイトルを見て、法案番号を確認せずに結びつけました。タイトルは「労働者を保護する」で、実際に署名されたのは広告の開示義務でした。タイトルは嘘ではなく、自分が中を開かなかっただけです。
今日の3本に共通して必要だったのは、特別な技術ではありませんでした。公式のページを開いて、数字とベンチマーク名と法案番号を照らし合わせる作業です。30秒から30分で終わります。面倒なので、つい二次情報で済ませます。今回はそこで転びました。
来週の注目ポイント
① 9月30日、SB 947とAB 1883は署名されるか拒否されるか(残り8日)
職場AIの法案が2本同時に期限を迎えます。SB 947の前身であるSB 7は、2025年に拒否権で廃案になっています。AB 1883が成立した場合、条文の対象が「従業員」だけで「応募者」が書かれていない点が、採用ツールの機能提供にどう反映されるかを見ます。次回は州公式の法案ステータスページを先に開いてから書きます。今回の誤りの原因がそこだったので。
② Grok 4.7の完了単価を自分で測る
単価$2/$6、出力81,000トークンという条件で、同じ作業をGrok 4.7と他のモデルで通して、1件終わらせるまでの合計コストを出します。今日の記事は他の人の計測を引いただけなので、次回は自分の数字を載せます。
③ 採用AI・HR Techの発表が本当にゼロだったのか確認する
今日、HR系の専門メディア6媒体すべてで9月20日以降の新着記事を確認できませんでした(1媒体はアクセス拒否)。取得方法の問題か、実際に発表が無かったのかを切り分けます。見落としていた場合、この連載の主軸が抜けることになるので。
AIは使ってみないと分かりません。ただ今日の話に限って言えば、使う前に開くものがあります。料金ページと、管理画面の設定です。どちらも今日のうちに見られます。

