週末のあいだに、使っているAIの条件が3か所で変わっていました。
ひとつはClaude Codeの週次利用上限。9月14日から、増量前の基準より25%多い水準で固定されました。ただ、5月から続いていた「+50%」の期間が9月13日で終わったので、直前と比べると約17%減です。
同じ事実が、どちらの数字で聞くかで逆向きに見えます。今日はこの「条件は自分以外が決めていて、しかも言い方で印象が変わる」という話を、採用の現場に引き寄せて書きます。
前回の予告の答え合わせ
🔮 省力化補助金 一般型、9月18日10時に受付が開くか → あと3日 公式サイトの記載は「9月18日受付開始・10月16日締切」のままです。当日に確認します。
✅ Claude Codeの週次上限、施行後に公式の記載が出るか → 出ました Anthropicのヘルプセンター記事に「9月14日以降、対象プランの週次上限は増量前より25%高い」と書かれています。9月15日に開いた時点で「Updated today」の表記でした。ただ、Claude Codeの変更履歴には載っていません。告知は8月29日の公式X投稿が先で、ヘルプ記事があとから追いついた順番です。
🔮 カリフォルニアの雇用・自動意思決定の法案 → 知事判断は9月30日まで 本命はSB 947という法案でした。9月9日に知事へ送られ、今日の時点で未署名です。そして前回の僕の書き方には誤りがありました。詳しくは②で書きます。
Gemini 3.8 Flashを触った結果 → 項目を外します 前回「次にやらなければ外す」と書きました。やれていないので、約束どおり外します。
注目ニュース TOP3
① Claude Codeの週次上限、「+25%」と「17%減」は同じ話
何が起きたか
5月13日から9月13日まで、Claude Codeの週次上限は通常より50%多く設定されていました。9月14日からは、増量前の基準比+25%で恒久化。対象はPro、Max、Team、それに席ごとに課金する形の旧Enterpriseです。無料プランと従量課金型のEnterpriseは対象外。5時間ごとの上限は、増量期間中も変わっていません。
基準を100とすると、直前は150、今は125。125÷150でおよそ83%なので、17%減です。BleepingComputerの報道によれば、Anthropicは最初の告知を削除し、「今と比べると17%の削減になる」と明記して出し直しています。
なぜ重要か
「恒久的に25%増」だけ聞けば得した気分になり、「17%減」だけ聞けば締め付けに見えます。どちらも正しい。比べる相手が違うだけです。
もうひとつ引っかかったのは告知の順番でした。製品の変更履歴には載らず、X投稿が先、ヘルプ記事が施行後。前回「公式に書かれないまま条件が変わるか」を予告に入れたのはこれを確かめたかったからで、結果は「書かれた。ただし変更履歴ではなく、ヘルプ記事に」でした。
今日やったのは、ヘルプ記事と変更履歴を並べて開いただけです。自分の画面で週次の残量がどう動くかは、今週使いながら見て、次回報告します。
→ 採用・中小企業への影響
10〜50人の会社でClaude Codeや似たツールをチームで使い始めたなら、確認しておきたいのは「上限に当たったら止まる作業」です。月末に求人票をまとめて作る、面接前日に候補者ごとの質問表を作る。こういう締切つきの作業をAIに寄せているほど、上限の変更は納期に直結します。
導入時に決めておくことは1つで足ります。利用条件の変更がどこに告知されるか(公式X、ヘルプ、管理画面、メール)を、担当者が1か所見に行く。今回のように変更履歴に載らないケースがあるので、「リリースノートを見ていれば大丈夫」は通用しません。
→ 個人の実務・副業への影響
副業でClaude Codeを回している人は、今週から体感で2割弱減ります。claude.aiの「設定 > 使用量」で、5時間枠と週次枠を分けて確認できます。
同じ日に何度も止まるなら、たいてい5時間枠のほうです。この場合、プランを上げても解決しないことがあります。止まった理由を見分けてから、プランを考えてください。
② SB 947が縛るのは「解雇・懲戒」。採用ではなかった
何が起きたか
カリフォルニア州のSB 947(通称 No Robo Bosses Act)は、自動意思決定システム(AIなどで人事上の判断を自動化する仕組み)だけに頼って懲戒や解雇を決めることを禁止する法案です。人間のレビュアーが自分で調べて裏付けを集めることを求め、AIの出力が裏付けられなければ、それを判断に使えません。AIを主に使って懲戒・解雇を決めた場合は、事後に書面で通知する義務もあります。違反は1件500ドル。署名されれば2027年7月1日に施行です。
前身のSB 7は2025年10月に知事の拒否権で廃案になっていて、今回はその改訂版にあたります。知事の判断期限は9月30日です。
なぜ重要か
前回、僕はこれを「雇用・自動意思決定に効く法案」とまとめ、採用AIを使う会社にも関係する、という書き方をしました。今日、法案本文を開いて読んだら、禁止規定は「懲戒または解雇の判断」に限られていて、採用判断についての規定はありませんでした。
収集段階の報道まとめでも「採用AI規制」と書かれていたものがあり、本文を開かなければそのまま書いていたと思います。入口(採用)の話と出口(懲戒・解雇)の話を混ぜると、クライアントに間違った説明をすることになります。
→ 採用・中小企業への影響
日本の10〜50人の会社には、カリフォルニアに従業員がいない限り直接の法的義務は生じません。
ただ、この法案の考え方はそのまま借りられます。AIの判定は、人が裏付けを取れたときだけ使う。人事評価や勤怠の異常検知にAIのアラートを使い始めている会社は、「AIの指摘だけで注意や処分をしない。人が事実を確認してから」と運用ルールに1行入れておく。どこの国の規制が来ても、作り直す量が減ります。
採用選考でも同じ線が引けます。AIのスコアで落とす前に、人が理由を確認する工程を置く。今回の法案の射程外でも、設計としては同じ形です。
→ 個人の実務・副業への影響
HR Tech系の受託や助言をしている人は、「採用のAI」「評価のAI」「懲戒・解雇のAI」を分けて説明できるようにしておいてください。規制がどの工程を縛っているかは、法案ごとに違います。
③ 議事録AIのFathomが買収された。記録ツールの持ち主は変わる
何が起きたか
9月14日、メールや文書、カレンダーなどの業務ツールを束ねるSuperhumanが、議事録AIのFathomを買収しました。金額は非公表です。TechCrunchによると、Fathomの月間アクティブユーザーは40万人超、会議を記録した人は100万人超。2020年創業で、2024年時点の評価額は9,400万ドルでした。
Superhumanは社内で議事録機能を試作したうえで、買収を選んだそうです。無料プランや今の製品がどうなるかは、記事では触れられていません。
なぜ重要か
議事録AIが、単体の道具から業務ツール群の一機能に吸収されていく流れです。持ち主が変われば、料金、データの保存先、AIの学習にデータを使うかどうかといった規約は、後から変わる可能性があります。
→ 採用・中小企業への影響
採用面接の録画や文字起こしに議事録AIを使っている会社は少なくありません。そこに入っているのは、応募者の声と発言という個人情報です。
使っているツールが買収されたら、規約で3つを見直してください。データの保存先、AI学習への利用、退会時の削除。Fathomに限らず、今後も起きることです。
応募者に録画の説明をするときは、ツール名で書かないほうが差し替えに強いです。「どこに保存して、いつ消すか」で書いておけば、ツールが変わっても文面を直さずに済みます。
→ 個人の実務・副業への影響
議事録AIを単体で導入支援・再販する副業は、業務ツールへの統合が進むほど価格で勝ちにくくなります。寄せるなら「記録を取る」ではなく「記録から次の行動を作る」側です。面談記録からフォローのメール下書きを作る、といった後工程のほうが、ツールが入れ替わっても仕事が残ります。
AIツール・アップデート情報
- GitHub Copilot、自動モデル選択に3段階の設定(9月14日):Efficiency(コスト優先)、Balance、Intelligence(品質優先)から選べます。課金は自動で選ばれたモデルの分で、有料プランは自動選択経由の利用に10%割引が続きます。→ 定型の修正はEfficiency、設計の相談はIntelligence、と作業ごとに切り替えるとコストの見通しが立てやすくなります。
- Perplexity Portable ComputerがWindowsのRTX PCで動作(9月14日):手元のPCでAIエージェントを動かせます。VRAM(画像処理用メモリ)24GB以上が要件で、Outlook、Word、Gmail、Slackなどと連携。→ 応募者データをクラウドに出したくない会社の選択肢になりますが、24GBのPCは普通の事務用PCではないので、機材費込みで比べてください。
- Microsoft AIが自社モデル向けの行動規範を公開(9月14日):「規範 → 事業者の設定 → ユーザーの好み」の順で優先すると明示し、人間の監督を回避する仕組みを禁止しています。→ 社内でAIエージェントのルールを書くときの、権限の書き分け方として参考になります。なお対象は自社開発のMAIモデルで、「Microsoftが使っている・ホストしているというだけで他のモデルには及ばない」と明記されています。
ツール選びのワンポイント。今日の3つはどれも「何を優先するかを、使う側が設定できる」方向の更新でした。設定できるということは、設定しなければ誰かが決めた既定値で動くということです。
AIが中小企業の採用・現場をどう変えるか(TSUMUGU視点)
1. 使っているAIを1枚に並べて、3つの列を埋める
面接の録画、求人票の作成、日程調整。この3つの用途で使っているツールを縦に並べ、横に「利用上限」「条件変更の告知が出る場所」「データの保存先と削除条件」を置きます。
今日のニュースは、この3列にそれぞれ1件ずつ当てはまりました。上限はClaude Code、保存先はFathom。告知の場所は、変更履歴に載らなかったClaude Codeがまさにその例です。空欄になった欄が、次に条件が変わったときに気づけない場所です。
2. AIの指摘だけで人事の判断をしない、を1行書く
評価や勤怠でAIのアラートを使うなら、「人が事実を確認してから判断する」をルールに入れておく。SB 947の骨格をそのまま借りる形です。
個人の副業・実務への影響
1. 止まった理由を見分けてからプランを考える
5時間枠か週次枠か。claude.aiの使用量画面で分けて見られます。
2. 受託の見積もりに「ツールの条件変更」を入れる
月額固定でAI運用を受けているなら、利用上限の変更で作業が止まったときの扱いを契約に書いておく。今回のように直前比17%減が数週間前の告知で決まることがあります。
今日のまとめ:数字は、何と比べたかを先に聞く
今日いちばん考えたのは、「+25%」と「17%減」が同じ変更を指していたことでした。
どちらかだけを聞いてクライアントに伝えたら、得した話にも損した話にもなります。SB 947も同じで、「雇用のAI規制」とまとめて聞けば採用にも効きそうに思えますが、本文は懲戒・解雇に限っていました。前回の僕はそこを混ぜていました。
AIツールの条件は、使う側が決めていません。上限も、規約も、持ち主も変わります。こちらでできるのは、変わったときに気づける場所を決めておくことと、数字や法案の射程を「何と比べて」「どの工程の話か」まで確認してから伝えることくらいです。地味ですが、それで防げる誤りが今日は2つありました。
来週の注目ポイント
① 9月18日10時、省力化補助金 一般型の受付が開くか → 当日のポータルの状況によって、クライアントに「初日に出す」か「翌営業日に回す」かを伝え分けます。
② SB 947、9月30日までに署名か拒否か → 前身は去年拒否権で廃案になりました。署名されれば、「AIの出力は人が裏付けてから使う」が州法になります。
③ Fathomの無料プランと規約が、買収後に変わるか → 面接の録画に使っている会社に直接関わります。規約ページの更新を追います。
AIの条件は、こちらの知らないところで変わります。変わったときに気づける場所を、1つだけ決めておいてください。
この記事はHIRO(@hiro_tsumugu)のAIニュースまとめシリーズです。 情報は2026年9月15日時点のものです。
