US Market×Jiyon

停戦が「ニュース」から「前提」に変わった日|6月24日 米国株分析

派手な日ではなかった。S&P500は-0.10%、ダウは+0.35%、ナスダックは-0.43%。これだけ見たら「何もない一日」で済ませる人が多いと思う。

でも、僕は今日を「相場のフェーズが切り替わった日」として記録しておきたい。

理由は3つで、

  • 原油WTIが**$69.85**まで落ちて$70割れが板についた
  • 米10年債利回りが**-9.1bpの大幅低下で4.402%**
  • 引け後にMicronがEPS $25.11(予想$20.28)で大幅ビート、時間外+13.88%

この3つは、それぞれ別の話に見えるけれど、全部「中東停戦が"ニュース"から"前提"に変わった」という同じ根っこから出てる。今日はその答え合わせをやる日として残しておく。


前回(6/23)の仮説チェック

前日の僕は「SOX -8%、ダウ-0.09%、Micron-13%、NVIDIA-4%」という荒れた日の翌日として、3つの仮説を出していた。

① 仮説「SOX -8%の翌日、半導体は自律反発を試す」(+3%以上で反発、MU決算後プラス、NVDA $200台回復)→ ⏳ 引け後MU+13.88%でほぼ達成、現物SOXは未確認

MU決算後の時間外+13.88%は、仮説の「MU決算後にプラス転換」を引け後の最後の最後でクリアした。NVDAは$199.00(-0.50%)で$200台ギリギリ未達。現物のSOX指数を取れなかったので、半導体の自律反発については「翌日寄りで答えが出る」に持ち越し。

② 仮説「MSFT +1.80%は売られ過ぎからの自律反発でソフトウェアが相対的に強い」→ ❌ 不発

MSFTは今日**-2.27%で、前日の反発分をほぼ吐き出した。「無効条件:MSFTが$365割れ」にも$365.46で限りなく接近。GOOGL-0.23%、AMZN+0.07%、AAPL-0.41%とソフトウェアの相対強さも観測できず。「半導体ショックの翌日にソフトウェアが崩れなければ、市場は『ハードウェア問題でありAI問題ではない』と判断している」という僕のルールでいくと、今日のMSFTの落ち方は市場が「ハードウェア限定の問題」と即断する自信を失った**サインに見える。

③ 仮説「6/25 PCE、コアPCE前年比+3.3%超で2年債4.25%超」→ ⏳ 明日判明

PCEは明日(6/25)8:30 ET発表。今日の段階では「結果が出る前にどう動いたか」だけを記録しておく。10年債が-9.1bpで4.402%まで買われた。中東停戦で安全資産需要が落ちるはずなのに、逆に債券は買われた。これは僕の解釈だけど、「PCEで上振れリスクを織り込みに行く前の最後の安全確保」だと読んでる(仮説)。

仮説①は引け後の駆け込みで部分達成、②は完全に外れ、③は明日。打率より、なぜ外れたか/なぜ部分達成だったかを次に活かす方が大事。


今日の相場を「ひと言で言うと」

停戦が「ニュース」から「前提」に変わった日。

6/15に米イラン暫定MOUが出てから9営業日。今日はじめて「WTIが$70を割って板についた」「10年債が4.4%台前半まで素直に買われた」という2つが揃った。市場は中東リスクをもう価格に織り込み終えた、と判断したように見える。

ここから先は、地政学ではなく**指標(PCE)と決算(MU)**が相場を動かす。それが今日のフェーズ転換。


数字の中身を分解する

主要指数:内側でローテーションが続いている

| 指数 | 終値 | 前日比 | 前日比% | |---|---:|---:|---:| | S&P 500 | 7,358.22 | -7.24 | -0.10% | | Nasdaq Composite | 25,476.64 | -110.40 | -0.43% | | Dow Jones | 51,848.90 | +182.06 | +0.35% | | Russell 2000 | 2,986.63 | +11.15 | +0.37% |

僕がここで注目したのは「ダウとRussellがプラス、ナスダックとS&Pがマイナス」の階段。先週6/16にも同じ形が出ていて、あの日も「半導体利確売り×FOMC前夜×住宅着工大幅ミス」が重なっていた。今日は「半導体決算待ち×PCE前夜×原油急落」。役者は違うけど、形は同じ

これがなぜ起きるかをルールで言うと、

イベント前夜、市場は「指数の中で何が下がっても、全体としては下げない」ように自律的にローテーションする

って言える。今日でいうと、ナスダック(-0.43%)の下げ分は、ダウ(+0.35%)とディフェンシブセクターが食い止めている。指数だけ見て「今日は静かだった」と判断すると、内側で起きている資金の移動を見落とす。

セクター:典型的な「ディフェンシブ買い × コモディティ売り」

Finvizのセクター騰落から、

  • プラス上位:Healthcare +0.96% / Utilities +0.86% / Consumer Cyclical +0.73%
  • マイナス下位:Energy -2.18% / Basic Materials -1.44% / Communication -0.59%

Energy -2.18%が「今日の最大の値動き」。WTI $69.85(-0.70%)と聞くと「たった-0.70%か」と思うかもしれないけど、エネルギー株は$70割れの「心理ライン突破」に強く反応する。原油の絶対水準よりも、$70という"ライン"を割ったかどうかが大事。これは原油在庫データやガソリン需要見通しとは別の、純粋に心理的な節目。

Healthcare/Utilities/Consumer Cyclicalが買われる構図は、典型的な「不確実性の前のディフェンシブ逃避」。教科書通り。

Mag7:MSFT -2.27%だけが目立つ

| 銘柄 | 終値 | 前日比% | |---|---:|---:| | AAPL | $293.08 | -0.41% | | MSFT | $365.46 | -2.27% | | GOOGL | $345.29 | -0.23% | | AMZN | $234.27 | +0.07% | | NVDA | $199.00 | -0.50% | | META | $557.67 | -0.81% | | TSLA | $375.53 | -1.59% |

ここでMSFT -2.27%だけが浮いている。理由は今日の段階では分からないし、断定するのは危ない。ただ「前日+1.80%の反発がほぼ全戻し」というのは事実として残しておく。前回の仮説②で僕は「MSFTが$365割れたら無効」と書いていて、今日$365.46で限りなく接近した。0.5ドル足りなかっただけで、仮説は数字上は維持されているけど、実態は崩れに近い。こういう「数字上はギリギリ生きてる仮説」を、自分のルールでどう扱うかは要訓練。

引け後Micron:時間外+13.88%、これが翌日の最大の論点

| 項目 | 実績 | 予想 | 差 | |---|---:|---:|---:| | 非GAAP EPS | $25.11 | $20.28 | +23.8% | | 売上 | $41.46B | $35.25B | 大幅ビート | | 粗利率 | 84.9% | — | 前期74.9% / 前年同期39%から急拡大 | | 来期売上ガイダンス | $50.0B ± $1.0B | — | 強気 | | 来期EPSガイダンス | $31.00 ± $1.00 | — | 強気 |

粗利率39%→84.9%は1年で2倍以上。HBM(高帯域メモリ)とAIメモリ需要が爆発的に伸びている、というのが決算電話会議の主張。時間外は**+13.88%($1,194.00、Yahoo Finance Extended Hours)**で反応。

ここで僕が記録しておきたいのは、「6/23にSOX-8%でMicron-13%だった同じ銘柄が、たった1日でガイダンス爆発で+13.88%」という値動きの極端さ。これは個別ファンダの強さだけでなく、ポジションが先に売られきっていたことの裏返しでもある。

明日(6/25)寄りで、

  • MUのギャップアップが+10%以上で開けばハイテク全体に波及する可能性
  • ただしPCE次第で全部吸収される可能性

の両面がある。MU単体で見ずに、寄り後30分の10年債利回りの動きと一緒に見るのが僕のチェックポイント。


米10年債が-9.1bpで買われた、3つの解釈

ここが今日の一番のテーマだと思っている。

10年債利回り:4.402%(-9.1bp)/2年債:4.21%(ほぼ横ばい)/10-2年スプレッド:+19bpYahoo Finance ^TNXTradingEconomics US 2Y

10年が大きく動いて2年が動かない。これは「長期の景気期待が下がった」というよりは「中東リスクで避難していた資金が、停戦定着でリスクを取りに行くのではなく、PCE待ちで現金的な債券に戻った」と読んでる。

僕の中での仮説は3つで、

仮説A:単純なリスクオフ巻き戻し 中東リスクが終わったので、株を買うのが正解。でも実際にはダウしか上がっていない。これは説明として弱い。

仮説B:PCE警戒の安全資産需要 明日(6/25)のコアPCEが上振れ(+3.1%以上)したら、2年債は跳ねる可能性が高い。それまでの「もう一回安全に持っておきたい」という需要が10年に集中している。これが一番しっくり来る。

仮説C:景気減速の早期警戒 PMIや雇用統計のソフト化を市場がじわじわ織り込んでいる説。ただこれだと2年も同じくらい買われるはずで、今日の動きとは整合しない。

僕は仮説Bを軸にしている。理由は10-2年スプレッドが+19bpへスティープ化したから。スティープ化は「短期は据え置き予想、長期だけ動く」という時に起きる。それはFOMC据え置きを前提に、PCE次第で長期金利だけが動くという市場の構図と一致する。


VIXとFear & Greedの温度差

ここはマイナーな論点だけど、自分用に書いておく。

  • VIX:18.63(-4.41%)→ ボラの実数は下がっている
  • CNN Fear & Greed Index:28(Fear)→ ポジション側はまだ慎重

VIXは「オプション市場が織り込んでいるボラの予想」、F&Gは「Put-Call比率、安全資産需要、株価モメンタムなどの合成」。今日のVIX低下とF&Gの低さは矛盾していない。**「明日PCEが出るまでは大きく動かない予想、でもポジションは慎重に減らしておく」**という、典型的なイベント前夜の温度感。

ここから学ぶルールとしては、

VIXが低くてもF&Gが低い時は、「市場は静かに見えるけど、ポジションは身構えている」と読む

この組み合わせは半年に1〜2回しか出ない。記録しておく価値あり。


今日の迷い・判断メモ

迷い①:MSFT -2.27%をどう扱うか

仮説②の「MSFT $365割れで無効」に対して、$365.46で0.5ドル足りなかった。数字上は仮説生存だけど、実態は崩れに近い。

この時の僕の判断:「数字上のセーフ」より「中身の崩れ」を優先する。仮説②は実質的に❌として記録する。0.5ドルの差を「セーフ」と判断したら、次に同じ場面で「もう少し待てば反転する」というポジションバイアスがかかる。ルールは厳格に運用しないと、形骸化する

迷い②:HTZ -40.71%を記事で触れるか

stockanalysis.comのlosers画面で確認したが、理由を取りきれなかった。中型銘柄でこれだけ動くのは普通じゃない。

この時の僕の判断:触れない。理由が分からない数字を出すと、読み手は「なぜ?」と気にする。取れない情報は記事に出さない。これは「網羅性」より「信頼性」を優先するルール。後日追加で取れたら、別記事で追記する。

迷い③:明日のPCE予想を記事に書くか

コンセンサスはコアPCE 前年比+2.9%(5月実績2.9%とほぼ同水準を市場は織り込み)。書けば数字としての具体性は出るけど、明日にはこの数字が正解か外れかわかる。

この時の僕の判断:書く。理由は「明日の答え合わせのために、今日の自分が何を見ていたかを残す」のが、このnoteの目的だから。当たり外れではなく、思考の軌跡を残す。


自分なら何を確認してから動くか

明日(6/25)寄り前にチェックする項目を、自分のために整理しておく。

  1. MU時間外の最終水準:+13.88%が維持されているか、寄り前に+8%以下に縮んでいないか
  2. 10年債利回りの方向:4.40%維持か、4.45%に戻っているか
  3. コアPCE 前年比:+2.9%以下なら現状維持、+3.1%以上なら2年債警戒
  4. エネルギーセクターの動き:原油が$70を回復したかどうか(停戦の答え合わせ第2幕)

この4つを順番に見れば、「PCE通過後の世界」がリスクオンになるかリスクオフになるかが見えるはず

逆に、これを見ずに「MUが+13.88%だからハイテク買い」みたいな単純な動き方をすると、PCE上振れの吸収で痛い目に遭う可能性がある。MU単体で動かない、これが今日の最大のルール


明日の観測ポイント

※2026年6月25日(木)の米国市場を想定。

仮説①:MU+13.88%でハイテク主導の反発、ただしコアPCE+2.9%以下が条件

  • トリガー:寄りでMUが+10%以上ギャップアップ、コアPCE前年比+2.9%以下 → ハイテク主導でナスダック+1%以上
  • 無効条件:コアPCE +3.1%以上で2年債が+10bp以上跳ねる → MUのギャップ埋め、ナスダック-0.5%以下
  • 自分のルール:寄り直後のMU高値と、寄り後30分の10年債利回り方向、この2つで一日の流れが決まる。MU単体では動かない

仮説②:原油$70割れが板につくと、エネルギー株-2%/日が常態化する

  • トリガー:WTIが$70未満で2日連続クローズ → XLE(エネルギーETF)が-1%以上を継続
  • 無効条件:中東で新たな衝突報道 → 原油$72台へリバウンド
  • 自分のルール:停戦が定着した相場で、地政学反発を「逆張りの好機」と勘違いしない。リスクプレミアムは戻ってこない前提

仮説③:10年債が「PCE警戒で買われた」のなら、PCE通過後に4.5%まで戻る

  • トリガー:PCEが予想通り(コア+2.9%)以下 → 10年債4.45%に戻る(材料出尽くしの売り戻し)
  • 無効条件:PCEが予想以下で利下げ前倒し論再燃 → 10年債4.30%割れ
  • 自分のルール:イベント前の利回り低下は「リスク回避」と「織り込み」の2つの説明があり、イベント通過後の方向で答えが決まる

明日、MUのギャップアップ、コアPCE、10年債、原油の4つでこの仮説がどうなったか振り返る。


今日の3語メモ

  • 「停戦は答え合わせ済み」:6/15のMOU発表から9日かけて、WTI $70割れ・10年債-9.1bpで「中東はもう価格に織り込み終えた」フェーズ。次に地政学ニュースが来ても、反応はもう薄い前提で動く
  • 「指数の階段、形は半月前と同じ」:ダウ+0.35% / Russell+0.37% / Nasdaq-0.43% / S&P-0.10%。6/16と同じ形。役者は違うけど、イベント前夜の自律ローテーションのパターンは再現性がある。次のFOMCやCPI前夜にも使える
  • 「VIX低くてF&G低い=静かに身構える日」:VIX 18.63(-4.41%)でF&G 28(Fear)。半年に1〜2回しか出ない組み合わせ。「市場は静かに見えるけど、ポジションは慎重」という温度感を読み解くチェックポイントとして覚えておく

このブログはSUNAO Labsが運営する投資学習メディア「Jiyon(@jiyon_kizuku)」の記事です。記事の内容はJiyonが学習・記録目的で書いたものであり、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

SUNAO Labs: sunao-labs.com

RELATED

AIで判断軸を仕組み化する。

この記事を読んで「自分の状況でも整理したい」と感じた方は、SUNAOの各入口から現在地を一緒に整理できます。

投資で磨いた情報整理・判断プロセスを、採用や経営のAI内製化へ応用する。その実装がTSUMUGU。

SUNAO FAMILY

SUNAOブランドの3つのサイト