主要3指数はいずれも-0.7%以内に収まり、SOX(半導体指数)は+0.60%と反発。表面だけ見ると「静かな月曜」に見えた一日でした。でも水面下では、9月FOMCの利上げ確率が6月中旬の26%から7/20時点で63%まで反転していました。
補足:CMEのFedWatchツール系サイト(Investing.com Fed Rate Monitor)で確認すると、9月15-16日FOMCで政策金利を+25bp以上引き上げる確率は現在63.3%。1ヶ月前は26%、7月に入ってからの動きが特に急です。震源はイラン戦争の長期化。ホルムズ海峡(中東の原油が通る海の通り道)の通行船舶が戦前平均の日約138隻から直近24時間で11隻まで激減し、原油急騰→インフレ再燃観測→Fed利上げ織り込み、という連鎖が起きています。
一歩引いた視点:VIX(恐怖指数)は18.65(-0.64%)と20を下回る水準を維持。表面のリスク回避ムードは弱まっています。一方でFear & Greed Indexは38(Fear)と恐怖圏に留まる。「短期の恐怖」と「中期の警戒」が同じ日に併存している、内部の温度差が大きい相場でした。
前回の仮説チェック
前回(7/17)の記事で立てた3つの仮説を、月曜の動きで検証します。
仮説①: ホルムズ海峡の緊張が来週も続けば、原油高とリスク回避ムードが継続する トリガー: 追加の空爆・海峡通行のさらなる減少 結果: ⏳ 部分的。米国はイランへの空爆を9〜10夜連続で実施、ホルムズ海峡の通行は激減(戦前平均約138隻→直近24時間11隻)と戦争は継続。ただし原油は日中$84台まで急伸したあと、終値はWTI $82.48でほぼ前日並みまで戻し、Brentも$88.28(+0.20%程度)と方向感が定まらなかった。イラン側が仲介国経由の対話継続に言及したことが理由と報じられた 学び: 地政学リスクは「戦争が続いているか」より「対話余地の有無」に相場は反応する。戦争の継続だけを見て相場も一方向に動くと決めつけると外す
仮説②: 半導体セクターは弱気相場入り後も自律反発せず、続落トレンドが継続する トリガー: NVDA・AMD等の主力半導体株が来週も続落 結果: ❌ 明確に否定。SOX(フィラデルフィア半導体指数)は+0.60%で反発。AVGO +1.98%、MU +1.94%、AMD +1.58%、INTC +2.13%とチップメーカー主要銘柄が軒並み上昇。ただしAMAT -0.75%、LRCX -2.09%と半導体装置株は続落し、セクター内で明確に選別が進んだ 学び:「一括で下げた」ものが「一括で戻る」とは限らない。反発局面ではセクター内でも銘柄選別が進む
仮説③: FOMC観測は据え置き優勢で来週を迎える トリガー: 追加物価指標・当局者発言で据え置き確率がさらに固まる 結果: ❌ 明確に否定。次回7/28-29 FOMCは据え置き81.2%で維持されたが、9月15-16日FOMCの利上げ確率が63.3%まで急上昇。震源はイラン戦争発のインフレ再燃観測で、これは市場テーマの大きな転換 学び:「次回」と「その次」で違う織り込みが同時進行することがある。短期の据え置き観測だけを見て「利上げ観測は後退」と決めつけると、中期の変化を見落とす
主要指数
・S&P500 7,443.28(-14.41 / -0.19%) ・Nasdaq 25,508.07(-12.17 / -0.05%) ・NYダウ 51,839.26(-307.16 / -0.59%) ・ラッセル2000 2,942.43(-19.79 / -0.67%) ・フィラデルフィア半導体指数(SOX) 11,743.85(+69.96 / +0.60%) ・VIX(恐怖指数) 18.65(-0.12 / -0.64%)
VIXは「投資家が今後30日でどのくらい株価が動くと予想しているか」を示す指標で、20を下回ると比較的落ち着いた相場と言われます。Fear & Greed Index(CNNが発表する市場心理指標。0-100で示され、25以下が「極度の恐怖」、75以上が「極度の貪欲」)は38で「Fear(恐怖)」ゾーンでした。VIXは落ち着き、心理指標はまだ警戒。ここに温度差があります。
相場を動かした3つのポイント
① FOMC観測が「据え置き→利下げ」から「利上げ」に完全反転
**7/20の一番大きな変化は、指数ではなく金利先物市場で起きていました。**9月15-16日FOMCで政策金利を+25bp以上引き上げる確率が、6月中旬の26%から7/20時点で63.3%まで反転(Investing.com Fed Rate Monitor準拠)。震源は3週続くイラン戦争。ホルムズ海峡(世界の原油輸送の要衝)の通行が実質マヒし、原油急騰→インフレ再燃観測→Fed利上げ織り込み、という連鎖が過去1ヶ月で急速に進みました。前週の記事では「FOMC観測は据え置き優勢で来週を迎える」と書きましたが、7月に入って利上げ観測が急速に主役化した形です。
→ 僕のルール:「次回」と「その次」で違う織り込みが同時進行している時は、両方の確率を書き残す。片方だけ見ると相場観がズレる。
② 大型ハイテク決算週前の様子見でMag7が真っ二つに割れた
7/22(水)にAlphabet・Tesla・IBM、7/23(木)にIntelの決算が控えていて、Mag7の反応が決算期待の有無できれいに分かれたのが特徴です。買われたのはGOOGL(+1.51%)とMSFT(+2.15%)。逆に売られたのがAAPL(-2.14%)とTSLA(-2.96%)。TSLAは決算前のポジション整理と$3.25Bの負のフリーキャッシュフロー(会社が事業活動と設備投資の差し引きで生み出したキャッシュ。マイナスだと現金が減っている状態)への警戒が重石でした。時価総額が最大級のAAPLの下落がS&P500の最大下げ寄与となり、Nasdaqがほぼ横ばい(-0.05%)に収まったのはMSFT・GOOGLが引っ張り上げたおかげ、という構図です。
→ 僕のルール:指数がほぼ動かない日ほど、内訳を見ないと相場は読めない。今日は決算期待銘柄への集中と警戒銘柄からの資金退避が同時進行していた。
③ Dow -0.59%を作ったのは合併差し止めと金利敏感セクターの重なり
**指数で一番下げたのはNYダウ(-0.59%)で、これは①のFOMC観測反転と整合する動きでした。**ダウ構成銘柄ではMerck(-2.43%)、Sherwin-Williams(-2.33%)、Boeing(-2.12%)が下押し。医薬品・素材・産業機械という「金利上昇に弱いセクター」が集中的に売られました。S&P500のセクター別でもHealth Care(-1.42%)とIndustrials(-1.15%)が最悪。加えて指数外ですが、Warner Bros. Discovery(WBD、-3.76%)がParamount-Skydanceとの$1,100億の合併を裁判所が一時差し止められたことで急落し、メディア株全体の重石にもなりました。ハイテク偏重のNasdaqが微減で済んだ一方、旧経済セクター中心のDowで下げが拡大したのは、この利上げ観測の再燃が背景にあります。
→ 僕のルール:指数間の下げ幅が違う日は、「どのセクターが下げたか」で相場のテーマが分かる。Dow > S&P > Nasdaqの下げ順は、金利敏感な旧経済セクターが売られた日のサイン。
セクターの強弱——「何が買われて、何が売られたか」
**S&P500の11セクターのうち、はっきりプラスだったのはCommunication Services(+0.92%、GOOGL牽引)だけ。**Energy(+0.16%)とTechnology(+0.05%)が辛うじてプラス。残り8セクターはすべてマイナスで、Health Care(-1.42%)、Industrials(-1.15%)、Financials(-0.74%)、Materials(-0.73%)が下位に沈みました。
構図の一言:「金利上昇で不利なセクターが売られ、決算期待の一部ハイテクだけ買われた」1日。
Mag7(超大型テック7社)の動き
・MSFT +2.15%(Mag7で一番強い。AI関連の安定成長期待) ・GOOGL +1.51%(7/22決算控え買い戻し) ・AMZN +1.12%(好調) ・NVDA +0.23%(SOXリバウンドに追随、控えめ) ・META -0.02%(ほぼ横ばい) ・AAPL -2.14%(S&P500の最大下げ寄与) ・TSLA -2.96%(7/22決算前調整、負のFCF懸念)
Mag7内でも「決算期待→買い、警戒→売り」でくっきり分かれた1日。全員が同じ方向に動く相場ではなくなってきている、というのが今日の実感です。
個別株で目立った動き
急騰組(+5%以上・時価総額$10B以上)
- IREN Limited +19.57%($40.20):AI開発企業と$28億の新規契約発表、2026年売上目標も引き上げ
- Hut 8 +10.37%($100.93):$98億規模のAIデータセンターリース契約発表。MARA・Riotなどの仮想通貨マイニング系も連れ高
当日決算で反応
- AMC Entertainment +26.8%($2.46):EPS $0.14 Beat、売上$16億で106年の社史で四半期最高。IMAX需要の急回復が背景
- Domino's Pizza +2.11%:EPS Missだが売上Beat、寄り前は+7〜8%上げていたが引けで縮小
急落$10B以上
- 時価総額$10B以上で-5%を超える急落銘柄は今日確認できず。Warner Bros. Discovery(-3.76%、合併差し止め)が最大級
面白い視点:**「AI設備投資テーマは決算前でも生きている」**という信号がIRENとHUTから出ていました。7/22 Alphabet決算でCapEx(設備投資)ガイダンスが増額されれば、この動きは正当化されるはず。逆に減額されれば巻き戻し。翌週の答え合わせが楽しみです。
マクロ環境(大きな経済の流れ)
・米10年債利回り 4.594%(+約5bp) ・米2年債利回り 4.211%(+約3bp) ・米30年債利回り 5.115%(+約5bp) ・10年-2年スプレッド +0.38pp(正常な右肩上がり) ・USD/JPY 162.49(ほぼ横ばい) ・DXY(ドル指数) 100.96〜100.99(+0.1〜0.2%) ・WTI原油 $82.48(ほぼ前日並み、日中$84台まで急伸後に反落) ・Brent原油 $88.28(+0.20%程度) ・金先物 $4,014付近(+0.4%前後、$4,000台維持) ・銀先物 $56.65〜56.92(+0.9%前後)
金利は短期~長期でそろって上昇(利上げ観測が織り込まれた結果、債券が売られて利回りが上昇)。特に10年債の+約5bpは「中期の金融政策予想が変わった」ことを直接反映しています。ドル円は162円台と円安水準ですが、当日はほぼ横ばい。原油は日中$84台まで買われたものの、イラン側の対話継続言及で終値は前日並みまで戻しました。金は$4,000台を維持し、安全資産としての需要は残っています。
経済指標の結果
米6月景気先行指数(LEI、Conference Board発表。これから景気がどう動くかを予測する指標): -0.2%(予想-0.1%、前回+0.1%)で予想を下振れ。ただしConference BoardはAI設備投資の下支えを評価し、2026年GDP見通しを1.8%→1.9%に上方修正しています。
FedWatchの現在地(CME FedWatch準拠):
- 7/28-29 FOMC: 据え置き81.2% / 利上げ18.8%
- 9/15-16 FOMC: 据え置き36.7% / +25bp利上げ53.0% / +50bp利上げ10.3% → 利上げ計63.3%
FedWatchは「金利先物市場が今どんな政策金利の動きを織り込んでいるか」を示すツール。7月は据え置きが濃厚だけど、9月に利上げに転じる可能性を市場が織り込み始めています。
テクニカルで見る今の位置
今日はTradingViewのデータ取得ができなかったため、Web情報で簡易的にチェックしました(次回以降で復帰予定)。
・S&P500(7,443.28):7/17終値7,457.69から-14.41ptの小幅下落。前週安値レベルは維持し、7月上旬水準に踏みとどまる形 ・Nasdaq(25,508.07):7/17終値25,520.24からほぼ横ばい。前週の-2.9%急落からの反発力は限定的 ・SOX(11,743.85):+0.60%と自律反発。7/17に「弱気相場入り」(直近高値-20%超)が宣告されたが、一段の下落は回避 ・VIX(18.65):-0.64%と微減で20を下回る水準を維持。表面のリスク回避は弱まっている
チャートを見た気づき:**「主要指数は前週の急落から下げ止まっているが、反発の勢いは弱い」**という状態。SOXが反発したのは1つの前向きサインですが、装置株が続落するなど内部は選別中。本格的な戻りには、決算週の内容と①の利上げ観測の落ち着きが必要そうです。
※テクニカル分析はWeb情報に基づく参考値。投資判断は自己責任で。
全体像:「静かな月曜」の裏でFedが利下げから利上げに反転した日
**7/20の米国株は表面上「静かな月曜」で終わりました。S&P500は-0.19%、Nasdaqはほぼ横ばい、SOXは+0.60%と反発。VIXも18.65に低下。**しかし水面下では、FOMCの織り込みが「利下げ観測」から「利上げ観測」へと180度反転している。震源はイラン戦争長期化とホルムズ海峡の実質閉塞。当日の原油は日中$84台まで急伸したあと前日並みまで戻したものの、6月中旬から見ればFedの利上げ確率は26%→63%まで急伸しています。この地殻変動が、金利敏感セクター(Health Care、Industrials、Financials)の重さと、決算期待銘柄(GOOGL、MSFT)への資金集中という「二極化」に現れた形です。指数の小動きだけを見ると全体像を見誤る、そういう1日でした。
こういう相場で僕が意識しているのは、**「指数がほぼ動いていない日ほど、金利先物市場と決算スケジュールの2つを確認する」**こと。今日みたいに指数が-0.19%だと「何もなかった日」と流してしまいがちですが、実は金利先物市場では過去1ヶ月で最大級のリプライシングが進んでいました。表面の静けさに騙されず、内部の温度変化を見に行くことを続けたいです。
今日の迷い・判断メモ
迷ったポイント: SOX(半導体指数)が+0.60%と反発した時、これを「弱気相場入りの巻き戻し」と読むか「決算前の一時的な自律反発」と読むか、判断がつかなかった。前週の記事で「自律反発狙いの逆張りへ飛びつかない」と自分でルール化したばかりだったので、余計に迷った。
結局どう考えたか: 内部を見て「一括で戻ってはいない」(AMAT・LRCXは続落、AVGO・MU・INTCは上昇)ことに気付き、「一律巻き戻し」ではなく「テーマ内選別が進んだだけ」と判断した。したがって「弱気相場入りの巻き戻し」とは呼ばず、様子見継続。
後から振り返って: 現時点では判断は維持。ただし7/22 Alphabet決算のCapExガイダンス次第で、この判断はもう一度アップデートする必要がある。「セクター内選別が進んでいる」というのは事実だが、その選別の方向性が正しいかは決算週の答え合わせを待つ。
自分なら何を確認してから動くか
今日の相場を受けて、自分が次にアクションを取る前に確認することを2つ書き出しておきます。
- 7/22 Alphabet決算のCapEx(設備投資)ガイダンス:これが増額されればIREN・HUT等のAI周辺株の急騰は正当化される。減額なら巻き戻しリスク。決算まで新規のAI周辺株ポジションは動かさない
- WTI原油が$80を割るか、$85を突破するか:現在63%の9月利上げ確率は原油高(インフレ再燃)が前提。原油が$80を割れば利上げ観測が急速に後退する可能性がある。逆に$85を超えれば地政学プレミアムが確定する
明日の観測ポイント
「予測」ではなく「仮説+トリガー+無効条件」で観測型に書きます。読者と一緒に翌日の答え合わせをするための備忘です。
① 仮説: 7/21(火)寄り前のGM決算がPositiveなら、Dowの重さが「決算前様子見」だったことが確認される トリガー: GMのEPSと通期ガイダンスが予想($3.11-3.13)を上回る 無効条件: MissまたはガイダンスDowngrade → Dow続落 → 僕のルール:指数間まちまちの翌日は、下げた指数の主要決算をまず見る。Dowの構造的な弱さと、決算前の一時的な様子見を切り分ける材料になる
② 仮説: 7/22 Alphabet決算のCapEx増額で、IREN・HUTなどのAI周辺株の急騰は正当化される トリガー: Alphabet CapExガイダンス増額+AI関連の強気コメント 無効条件: CapEx減額 or 成長減速コメント → AI周辺株の巻き戻し → 僕のルール:個別のテーマ急騰は、翌週の一次情報(大手決算)で答え合わせされる。それまでは追わない
③ 仮説: WTI原油が$80を割ると、9月利上げ確率(現在63.3%)が急速に後退する トリガー: WTIの$80割れ or $85突破のいずれか 無効条件: 原油が$82-84のレンジ推移を続ける → 利上げ観測は据え置きに → 僕のルール:利上げ観測の変化は、金利先物より原油の動きが先行することが多い。原油のレンジブレイクは要チェック
明日この仮説がどうなったか、また振り返ります。気になることがあればコメントで教えてください。
今日の3語メモ
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「利上げ63%」:9月FOMCの利上げ確率が6月中旬26%→7/20時点63.3%に反転。震源はイラン戦争発のインフレ再燃観測
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「Dow -0.59%」:指数で一番下げたのはハイテクではなくダウ。金利上昇に弱い医薬品・素材・産業機械が集中的に売られた
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「AMC +26.8%」:EPS $0.14 Beat、売上$16億で106年の社史上最高。IMAX需要の急回復で個別急騰銘柄が久しぶりに出た
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この記事はjiyon(@jiyon_kizuku)の相場振り返りシリーズです。 投資判断は自己責任でお願いします。データは2026年7月20日時点のものです。
