ここ数ヶ月、日本のAI活用の最先端事例として、GMOインターネットグループとDeNAの全社展開が公開IRや自社オウンドメディアで出揃ってきた。両社とも数字を隠さない。両社とも仕組みを社外公開している。事例集としては最上級の一次資料やと思う。
ただ、地方中小企業の経営者と話してると「いや、それは大企業だからできる話でしょ」で終わりがち。今回は両社の公開情報を整理した上で、そのまま真似していい部分/絶対に真似したらアカン部分を実務目線で切り分ける。
GMOが公開してる数字と仕組み
GMOインターネットグループの全社方針は「AIで未来を創るNo.1企業グループへ」。約8,000人の全パートナーに対して、公開ベースで以下の仕組みが組み上がっている。
- AIツール利用料の月額会社補助:各自が業務で使うAIツールの利用料を会社が負担(金額は公開IR記載)
- 3ヶ月リスキリングプログラム「虎の穴」:全社的なAIスキルの底上げ
- スキルバッジによる可視化:誰がどのAIスキルを持ってるかを社内で見える化
- 生成AI業務活用率97.8%(2026年3月時点・公開数字)
- 1人あたり月53.9時間の業務時間削減(公開数字)
数字だけ見ると「8,000人の規模だから回る話」に見える。でも仕組みの中身を分解すると、規模に依存しない要素のほうが多いことが分かる。
DeNAが公開してる数字と仕組み
DeNAは2025年2月の南場智子会長による「AIにオールイン」宣言が起点。自律型AIエンジニアのDevinを約2,000人の全社員に展開して、部門ごとに公開してる数字はかなり強い。
- 法務部門:90%削減
- QA部門:50%削減
- コーディング生産性:最大20倍
GMOが「人材インフラ型」で全社的にじわっと底上げするモデルなのに対して、DeNAは「自律型AIエージェントを特定部門に投入して、ドラスティックに削る」モデル。アプローチは対照的やけど、両社とも経営トップの号令と全社員の巻き込みが土台になってる。
DeNA自身も社外発信で認めてる課題が一つあって、それが「効率化したのに余白が消える」効率化パラドックス。生産性が上がった分、より重い仕事が降ってきて、結果的に楽になった感が現場に残らん現象。これは中小企業にも100%再現する課題なので、後でもう一度触れる。
中小企業が"そのまま真似していい"3点セット
両社の事例を分解して残るのは、規模に依存しない3点セット。これは地方中小企業の現場でもそのまま再現できる。
① 全員参加を経営トップが宣言する
GMOもDeNAも、起点は経営トップの明示的な宣言。これがないと、現場は「やってもいいけど評価されない」と判断して動かん。
中小企業の場合、社長が朝礼で「全社員、毎週1回はAIを業務で触る」と宣言するだけでいい。月額のツール補助も必須やない。最初は社長個人がChatGPT Plusを契約して、社内の業務でどう使ってるかを毎週共有するだけで温度は変わる。
② 月次で定点測定する
GMOが97.8%という数字を出せるのは、月次で活用率を測ってるから。測定なしに改善はない。
中小企業版なら、月末に「今月AIを業務で使った場面を1つ書いて出す」をGoogleフォームでやるだけで十分。30人の会社なら、3ヶ月で90個の事例が溜まる。誰が何で詰まってるか、どの業務がAIと相性ええかが見える化される。
③ 社内で事例を週次共有する
GMOが「虎の穴」で組織的にスキルを伝播させてるのも、DeNAが部門別の数字を社内外に公開してるのも、根っこは同じ。ナレッジを個人持ちで終わらせず、社内資産にするための仕組み。
中小企業版なら、週1回・15分のミーティングで「今週AIで助かった話」を3人ずつ持ち回りで発表するだけでいい。発表の準備が、本人の言語化トレーニングになる。これは僕が伴走してる現場で何度も再現してるパターン。
この3点セットには、特別な投資もツール選定も要らん。経営の意思決定と運用設計だけで完結する。
中小企業が"絶対に真似したらアカン"3つの罠
逆に、大企業の事例から短絡的にコピーすると詰むポイントがある。これは現場の伴走で何度も見てる。
罠①:「全社員にDevin」をやろうとする
DeNAは自律型AIエージェントを2,000人に展開できた。これは社内にプロンプトエンジニアリングを評価できる人材層と、Devinが書いたコードをレビューできる開発者層が分厚く存在することが前提。
中小企業で、レビューできる人がおらん状態でDevin級のエージェントを入れると、生成された成果物が誰にも検証されずに業務に流れる。これは内製化と真逆の状態で、AIが書いた誰にも責任が取れない資料が増殖する最悪パターンになる。
罠②:「効率化で削減」を最初に掲げる
DeNAですら「効率化パラドックス」と公言してる現象が、中小企業ではもっと過激に出る。「AIで人を減らす」を最初に経営が宣言した瞬間、現場は協力しなくなる。
GMOの「人材インフラ型」が真似しやすいのはここで、削減ではなく底上げを起点にしてること。中小企業の経営者には「AIで楽になる時間を、今までできてなかった商談準備や顧客フォローに寄せる」という設計から入ることを毎回勧めてる。
罠③:ツール導入を内製化と混同する
両社ともツールは入れてる。でも両社のIRや発信を読むと、本質はツールではなく運用設計と人材育成にある。
中小企業の場合、「AIツールを契約しました」で内製化を完了したつもりになる現場が圧倒的に多い。ツール契約はスタート地点であって、ゴールやない。週次共有・月次測定・社内事例の言語化が回り始めて、初めて内製化と呼べる。
まとめ:両社の本質は"運用OS"
GMOとDeNAの事例を読み込むと、結局のところ両社が公開してるのは全社AI活用の運用OSやと分かる。ツールの選定でも、特定の業務改善事例でもない。
地方中小企業がこの運用OSをそのまま借りるなら、必要なのはこの3つだけ:
- 経営トップが「全社員、AIに毎週触る」を宣言する
- 月次でAI活用場面を定点測定する
- 週次15分で社内事例を共有する
逆に「Devinを入れたい」「全社員にツール補助を一律配布」から入ると、ほぼ100%空中分解する。
両社の事例を読むときは、数字に目を奪われるんじゃなくて、その数字を生んでる運用設計を読み取るのが正解。それが地方中小企業のAI内製化に翻訳できる、唯一の橋やと思う。

