「このままでいいのか分からない」
30代でこの違和感に気づく人は多い。20代の勢いで突っ走った先で、ふと立ち止まる瞬間が来る。けれど、転職サイトを開いても、自己啓発書を読んでも、答えは出ない。
やるべきは外を探すことではない。自分の中にすでにある材料を、3つの視点で棚卸しすることだ。順番がある。
視点 1:「やれること」ではなく「やってきたこと」を並べる
職務経歴書に書く「スキル」と、実際にやってきた行動は別物だ。
たとえば「営業」と書ける人でも、実際にやってきたのは新規開拓なのか、既存深耕なのか、提案資料の作り込みなのか、顧客との関係修復なのか。粒度を下げて並べると、自分が何に時間を使ってきたかが見える。
ここで効くのは、評価された行動と、評価されなかったが続けた行動の両方を書き出すこと。後者の中に、本人が気づいていない強みが眠っていることが多い。「自然と続いていたこと」は、再現性の高い強みの種だ。
視点 2:「嫌だったこと」を3つの軸で分解する
キャリア迷子の入口は、たいてい「今の仕事が嫌になった」という違和感だ。けれど、何が嫌なのかを言語化できている人は少ない。
私はクライアントとの対話で、嫌だったことを3つの軸で分解してもらう。人間関係なのか、作業内容なのか、評価のされ方なのか。同じ「営業が嫌」でも、根っこが上司なのか、ノルマの設計なのか、扱う商材なのかで、次の選択肢は全く変わる。
ここを混ぜたまま転職すると、業界や職種を変えても同じ違和感が再発する。嫌の正体を3軸で切り分けるだけで、次に避けるべき環境がクリアになる。
視点 3:「10年後の自分」ではなく「3年後の生活」を描く
キャリア相談で「10年後どうなりたいですか」と聞かれて答えられる人は少ない。30代で立ち止まる人にとって、10年先は遠すぎる。
私は代わりに、3年後の平日の朝を描いてもらう。何時に起きて、どこに住んで、誰と一緒に暮らし、何を仕事にしているか。具体的な生活の解像度が上がると、そこから逆算して今やるべきことが見える。
10年後の肩書きから設計するキャリアは、続かない。3年後の生活から設計するキャリアは、続く。これがBackcastの逆算思考の核だ。
棚卸しは、転職の準備ではない
3つの視点で棚卸ししても、転職という結論に至らない人もいる。むしろ、それでいい。
棚卸しの目的は、外を探すことではなく、自分の現在地を一度言葉にすることだ。現在地が分かれば、ここに留まるという選択も、動くという選択も、納得して取れる。
30代の迷いは、能力の問題ではない。情報の量でも、努力の不足でもない。自分の材料を、自分の言葉で並べ直していないだけのことが、ほとんどだ。